リンゴ爆弾でさようなら

91年生まれ。新作を中心に映画の感想を書きます。旧作の感想はよほど面白かったか、気分が向いたら書きます。

青森旅行記②

6月30日(日)・・・②

財布の一件も落ち着き、青森駅へと移動して友人と合流。二人とも昼食をとっていなかったので、偶然駅近くでやっていた肉フェス会場へと行くとこじんまりとした敷地にとんでもない人だかり。人を避ける人生を送ってきた二人は肉の匂い漂う会場を躊躇なく素通りし、ライブ会場である青森クォーターの下見。といってもまだ物販を開始しているわけでもなかったため、ただ場所を確認しただけでやはりここも素通りし、結局駅前にある食事処おさないへ。ホタテ料理の有名な店で、昼食時間ということもあってやはり多少混雑していたが、わりとすぐ席に着くことができた。懐かしの店でホタテの刺身定食とヒラメの刺身を平らげ、続いて友人からの提案で喫茶クレオパトラへと移動。ジャコウ猫の糞からとれる豆を利用しているというコピ・ルアクをいただく。しかしそれよりも椅子やカップなど内装の豪華さに驚かされる味の違いの判らぬ大人ことわたくし。ところでお気づきであろうが、財布を無くして金を借りている割には金遣いが荒い。こういうところにこそ人間の変えられぬ性は現れるものであって、元々、ゆこう、となれば考えは改めない質なので、今回もそういうことになった。

腹も満たされ、休みであろうと関係なく鳴り響く仕事の連絡も終えたところでライブの準備、つまりお着替えのため一旦ホテルへとチェックインし、シャワーを浴びツアーグッズではなく『デス・プルーフ』Tシャツで気合を入れる。ところであえて今まで書きはしなかったが、今回はRHYMESTER結成30周年ツアー『KING OF STAGE VOL.14 47都道府県TOUR2019』へ参加するための遠征であった。RHYMESTERは大学1年生のとき、つまりもう10年も前にラジオがきっかけで好きになったのだが、今回初めてのライブ参加。ヒップホップのライブもライブハウスも初めてだからノリに多少不安はあるものの、ほとんどの曲を諳んじることができるくらいにはなっているんだから大丈夫であろうと意気込む。ちなみにここで弘前のホテルに髭剃りや洗顔料等を忘れていたことに気付いたが時すでに遅し。

友人と再度合流しいざ会場へ行くと早すぎたのか集まりはまばらで、すんなりと物販にてロングTシャツを購入。すぐに金を引き出せる状況であればもう少し何か買っていたろうが、残念ながら今財布は東京駅から自宅へと発送されることを待ち望んでいる状態なので断念。こんなところで何故だか妙に慎重な金遣いとなる。そうこうしているうちに番号順に並んでくださいとの指示。整理番号はAの50番台で、実際会場に入ってみるとかなり前のほう、というか前から3列目の超至近距離ではないか。

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唐突に写真。しかしご覧いただきたい、この距離である。こんな目の前に現れるのかと思うとすでにかなりの興奮で気分も高まっていたのだが、その時に向け静かに抑えていると暗転。キング・オブ・ステージの開幕。

実際に曲が始まれば開始前の不安など一瞬で吹き飛ばすステージ。宇多丸Mummy-DDJ JIN  の聖なる三角形。実物の魅力は半端ない。キングオブステージは伊達じゃない。今ここでライブに参加しているということ以外すべて頭から消え去る圧倒的パフォーマンスで、緩急はあっても常に夢中でいられる幸福な時間であった。それこそ、あまりにも楽しいがゆえに涙を流してしまうほどである。

しかしこの異常な楽しさはいったい何なのであろう。もちろん、リズムに乗って体を動かし、煽りにしたがって声を出し、歌詞の力強さに心を震わせ、そして御三方のあまりのカッコよさにエキサイティングするというのはある。だがどうもそれだけではない。それらが合わることによって、まるで今自分がこの場にいることまでも肯定されているように感じたのだ。今この瞬間、心の底から楽しいと思える場所にいられて、自分が楽しいと思えるやり方で楽しめて、しかもそれが受け入れられている。場違いじゃない。間違ってない。そう思えたからこそ、涙を流すほどに楽しくて、嬉しかったのではないかと思うのである。実際普段の生活では、近くに友人は一人もいないし、恋人などはもちろん、さらに職場へ行けばやや苦手なノリこそ正義であって、誰と心を通わすわけでもなく一人家に帰り映画を見て寝て起きはまた仕事へという日々を過ごており、自分が今この場に存在していることを肯定的に捉えるなんて到底不可能な毎日だ。だがここは、今この場は自分が存在していることを肯定できる。自分はゴリゴリのヒップホップ好き、B-BOYではないけれど、間違いなくそうであったRHYMESTERの三人がそのスタイルを貫いたままこの場に立っているということに対する全身全霊でのリスペクトが、そのまま自分にもお返しされているかのような錯覚、いや錯覚じゃない、あの場で感じた、自分が自分であることを誇るという感覚は本物だ。RHYMESTERがそうさせてくれる。会場の人たちがそうさせてくれる。そうやって今を肯定できる。そんな三角形を感じられた。だから泣くのだ。それが幸せだから泣いたのだ。そんな幸福に包まれたまま終始最高潮のライブ終了。今宵個人史に輝く金字塔。そして宇多丸さんとだけ軽くハイタッチできた。フゥー!

さて自分らしくあれるというのは一緒に行った友人との会話でもそうであって、話していて苦になることなどあるはずもない。というわけで終演後は津軽じょっぱり漁屋酒場で久々の楽しいだけの飲み会開始。コの字型になったカウンター式の座席のみという珍しいスタイルの店だが、ここで青森の幸をいただく。美味い。

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この本まぐろ、これだけで2,000円以上するわけだが、食べた瞬間美味しいと口に出すよりもまずあまりのことに驚いてしまう。そして驚いた後さらに笑ってしまってから、ようやく美味すぎるという言葉が出てくる。それくらい衝撃の美味さ。ほとんどカルチャーショック。豪勢な食事と酒と会話を楽しんだ後、財布のない今、お会計は無理だと悟り友人にまたお借りしてシメのラーメンへ。こっちはきちんと自分でお支払い。ホテルに帰り楽しさを反芻しながら寝る。

 

 

7月1日(月)

起床。腰が痛いが、思ったよりダメージは少なくて助かる。シャワーしてチェックアウト。友人と再合流し、朝飯とも昼飯ともいえない時間にまるかいラーメンであっさりした煮干しラーメンをいただく。あっさりでよかった。美味い。

その後青森駅へ向かい歩き出すと後ろからいざこざの雰囲気。ちらちらと気にしつつ、全身真っ黒い服に身を包んだ二人はまず一度コーヒーを飲んでから青森コロナシネマワールドへ向かう。こちらの要望で、山戸結希 監督最新作『ホットギミック ガールミーツボーイ』を見ることになったためである。男二人で見るような題材ではない。さらに劇場内へ入るともう一名男性が。男性3人しかいない空間で少女漫画原作映画を見るという特異体験。

本編の感想についてはいずれブログでと思っているため詳しくは書かないが、異常なカット数の中動線と音楽とセリフが混じり合い、山戸結希的映画世界としかいいようのない快感を生み出すときの弾け具合が特に素晴らしい。確かに一つ前の長編『溺れるナイフ』と比べると失敗している部分もあるように思うものの、それでも豪速球で失敗しているんだから問題ない。残念ながら友人はそう思えない部分が大半だったようだが、とはいえ一緒に『劇場霊』を見た時よりは建設的な体験になったみたいなのでオッケー。そんなこんな、映画やらについてまたコーヒーとケーキを楽しみつつ語っていると帰りの時間に。日常へ戻らなければならないという現実からなるべく目をそらし、またまたコーヒーを飲んでいたりもしたのだがついにタイムアップ。駅で別れ、新幹線で北海道へ。また何の面白みもない日々の中へ埋もれていくが、埋もれやしないいいくつもの思い出もできた旅行であった。

 

予定は未定で。

予定は未定で。