リンゴ爆弾でさようなら

91年生まれ。新作を中心に映画の感想を書きます。旧作の感想はよほど面白かったか、気分が向いたら書きます。

『ファンタステック Mr.FOX』を見た。

野生の証明

チョコレート工場の秘密』で知られるロアルド・ダールの原作、『父さんギツネバンザイ』の映画化。


野生のキツネ、フォックス氏は農場から鶏などを盗むことを生業としていたが、ある日妻とともに罠に引っ掛かってしまう。その際、妊娠していると告げられたフォックス氏は「明日まで命があれば泥棒はやめる」と誓うのだった。数年後、フォックス氏は新聞記者として家族と幸せに暮らしていたが野生から遠ざかった生活に退屈していた。そこである日、3人の農場主それぞれから獲物を盗むが、それがもとで人間たちとの戦争が始まるのだった・・・というストーリー。




ストップモーションアニメといえば少しづつ人形を動かし、莫大な時間をかけて撮影するという大変なのもだが、その手作り感あふれる映像(動物のモフモフした毛の表現など)は、この手法でしか出せない独特の味わいに溢れていて、見ていてニヤニヤしちゃう感じだ。というものまず何より個々のキャラクターの所作が可愛いのだ。食事の時ふと野生に戻り「ムシャルァァァ!!」と食い散らかす様子も超キュートだし笑える。
ただ本作の予告編を見た人ならわかるかと思うのですが、このアニメ動かし方がかなり大胆。一見雑かと思われるが、そのダイナミックな動きが見てる側をわくわくさせてくれる。動きの精密が重視されがちになっているような気もしますが、この大胆さというのもアニメの面白さの一つだと思います。
そしてまた良いのが動きは大胆なのに表情とか細かいところはどこか人間っぽいところ。アニメ的で面白かわいらしい表情も沢山ありますが、どこか役者のような動きをしているようにも思った。


物語は家族についての話だったように思う。野生の本能=男らしさを取り戻そうとして平和を乱してしまう夫。平和を望む妻。なんでもうまくできる甥ばっかりを可愛がる父に認められたいと奮闘する息子。この家族が人間との戦争の中でお互いに愛や絆を取り戻していく。個人的には甥に引け目を感じる息子のエピソードが心にきました。父親に認められたいダメ息子って・・・個人的にはそういうのには弱いので。
一度バラバラになりかけた家族の再生の物語。それをつなぎとめたのは「父」であり、同時に危険を冒す「男」であるフォックス氏。つまり家族再生の物語であると同時にそういった葛藤の物語でもあるのだ。

ちなみにこの夫が野生と堅気の間で揺れる話ですが、ここがもう凄くヤクザ映画風。ネズミとの対決シーンなんて完全にそれなんで、「なんだアニメか」なんて思って見に行かないのは損だと思いますよ。


というわけで子供よりは大人が見て楽しむ作品でしょうが、見た後はだれもが幸せな気分になれる映画なので是非見てほしいと思います。音楽のセンスもすごいよかったと思いますよ。

すばらしき父さん狐 (ロアルド・ダールコレクション 4)

すばらしき父さん狐 (ロアルド・ダールコレクション 4)