『ブラックスワン』を見た。
ダーレン・アロノフスキー監督最新作。ナタリー・ポートマンがアカデミー賞主演女優賞を獲得したことでも話題になりました。
元バレリーナのシングルマザーに育てられたニナは才能のある、真面目で清純なダンサーだったが、なかなか大きな役をもらえなかった。しかし、これまでのプリマが引退したりといくつかの幸運が重なり『白鳥の湖』の主役に選ばれる。可憐で純情、繊細な白鳥はニナにぴったりだが、妖艶で魅惑的な黒鳥を上手く演じることができずにだんだん追い込まれていく・・・というストーリー。
昨年亡くなった今敏監督の『PERFECT BLUE』との類似性は様々なところで指摘されているように確かに感じるし、実際影響を受けたのだと思う。リメイク権も買っているというし。
ただそれがパクリだ、とかオリジナリティがないからダメとかそういうことではない。ちゃんと自身の作品へと昇華させていると思うし、強烈なビジュアルインパクトもちゃんとある。様々の要素から自分に迫ってくるものに耐え切れず生み出されてしまった妄想が現実を侵食していく様は素晴らしい。
思わず顔をしかめてしまうような痛み描写や、手持ちカメラなど不安を煽る様々な演出がホントに恐い。痛いというのも爪が剥がれるというように「地味にすごく痛い」というものだったりで相当ですよ。いやホントに恐ろしい映画ですよいろんな意味でね。ニナの見ている悪夢を見せられているような映画ですから。
僕が面白かったと感じた事の一つは母親との関係です。ニナも母親も互いをとても愛してはいるのだけど過保護すぎるのだ。
母親も昔はバレリーナだが娘を生むと同時にその夢を娘に託した。しかし娘が自分の演じた以上の役をやるとなると一瞬戸惑ったように見える。もちろん喜んではいるのだけれど。そういう微妙な女としてのやり取りがまた恐い。
そしてニナの部屋、これが全体ピンクっぽくて、くまちゃんの人形が沢山あったりするのも象徴的に感じる。まあ少女趣味なんですけど、ある時から成長が止まっているようなんです。これは母親がそういう娘を望んでいた、可愛い少女のままで自分の手の中に収めておきたいと思っていたのでは。
しかし、少女趣味のままでは黒鳥を演じることはできない。自分の中にある欲望を解放させ、女としての自分を確立させなければいけない。そもそも白鳥→少女、黒鳥→女というイメージなのですが、何故ニナは「女」を演じることができないかと言えば母親がそれを阻止しているからではないかと思いました。くまちゃんは捨てないと。
というわけで様々な意味で狂気のホラーであり、かつ少女から女へと遂げる(あの血は象徴的)美しい物語でもある素晴らしい映画だと思います。
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