リンゴ爆弾でさようなら

91年生まれ。新作を中心に映画の感想を書きます。旧作の感想はよほど面白かったか、気分が向いたら書きます。

チバユウスケが亡くなった

THEE MICHELLE GUN ELEPHANTを初めて聞いたのは大学一年生だった2009年のことで、つまりそれは、アベフトシが亡くなった年のことである。

ミッシェルの解散から6年が過ぎ、ROOSOを経てThe Birthdayのボーカルとして活動していた頃に初めて聞いたのだから、自分の世代ではないとはいえまったく周回遅れの出会いであり、ファンになった頃にはすでに再結成の可能性など完全に潰えている状態であった。伝説と謳われるあれもこれも、すべては後追いだった。

しかし今思えば、後追いの世代だからこそ響いた部分もあるのかもしれない。ミッシェルの歌詞はそのデビューから終末的で、厭世観の漂う、シニカルなものが多いけれど、そういった終わりの雰囲気は、今はもうないという寂寥感によって際立って聞こえたのかもしれない。あるいは暴力的で鋭いリズムとスピード感に溢れた、しかし同時に単純な中に切なさすら感じさせるメロディ、そんなかつて鳴っていた音の熱狂に憧憬の念を抱いたのかもしれない。

そしてチバの声。唯一無二の、あの声が一番重要だった。チバの書く歌詞は抽象的なものが多い。だけどそれが単に非現実的イメージとして浮いたものにならないのは、チバの突破力の高い、ときに暴力的にも悲痛にも響く声があまりにも生身だからではないか。『ダニー・ゴー』『マリオン』や『シャロン』『さよなら最終兵器』……そのほか、数々の名曲たちに心を動かされるのは、チバのかすれた声が断片的なイメージと風景の間を切実さで埋めるかのように響くからではないか。特に後期ミッシェルはその色が強く、だからこそ私はそちらの方がより好きだ。

しかしその声も、もう新たに聞くことはできない。今となってはThe Birthdayのライブに行こうとしなかったことを後悔するだけだ。結局私の中でチバユウスケという、はじめてのロックスター、恥ずかしいくらいに影響を受けた男の身体を目にすることはなかったわけだが、もしかしたら、後追いの世代としてしか受容できなかった身として、それはそれでよかったのかもしれない。

というか、そうやって言い聞かせることしか今はできない。

 


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