リンゴ爆弾でさようなら

91年生まれ。新作を中心に映画の感想を書きます。旧作の感想はよほど面白かったか、気分が向いたら書きます。

『スコット・ピルグリムvs.邪悪な元カレ軍団』を見た。

るーみっくワールドinアメリカ。

カナダの漫画が原作である本作。監督はあのエドガー・ライト。そりゃあ期待してましたとも。


で、本題に触れる前にまず〝邦題問題”について。本作は『Scott Pilgrim Vs. The World』が原題だが、日本では↑の様なタイトルに。これはまあ悪くないと思う。『スコット・ピルグリム対世界』だとイマイチわからんしね。『vs.邪悪な元カレ軍団』ってタイトルでどんな映画かわかるもん。『ホット・ファズ』の副題を聞いた時は考えた奴の頭かち割っちゃろうかと思ったけどね。脱線終了。




「セックスボム兵」というバンドのベーシストで、ボンクラ且つリア充のスコットはある日ラモーナという女の子に(彼女はいるけど)一目惚れ。なんだかんだで付き合うことになった二人だが、突然ラモーナの一人目の邪悪な元カレと名乗る男が空から降ってきて戦いを挑んできた・・・というストーリー。


・・・いや、ホントにこんな話だって。


というわけでストーリーを聞いただけだと「は?何それ」と言ってしまうような物語なのだが、映画を見るともっと「なんだこれ?」と思うだろう。良い意味でだ。
映画が始まってすぐのユニバーサルのロゴ、そして音楽が8ビット調、つまりはファミコンっぽいのだが、映画が始まってもゲームや漫画チックな表現に満ちている。集中線、文字で描かれる効果音、ゲージ、1up、コンボ数・・・というようにとにかく漫画&ゲームの世界観なのだ。


オープニングからゲームへのオマージュにあふれている本作だが、元ネタは有名なものからゲームに詳しくないとわからないものまで多岐にわたっている。僕はゲームには詳しくないので出てくるものの中にはわからないものもあるが、だからと言って楽しめないということはない。
というのも基本的に「こういうジャンルのゲームってこんな感じでしょ?」というのがわかっていれば見ている側に伝わる取り入れ方をしているからだ。あとはほぼ常識に近いゲーム知識(パックマン知らない人いる?)さえあれば問題ないだろう。ゲームをネタにしたギャグも、仮にそれらをプレーしたことなくたっていい年こいた野郎がゲームの話なんかしてるだけでバカらしさ満点というものだ。


そして先ほども書いたように漫画的表現に溢れているのもこの映画の特徴だ。漫画の表現をそのまま映画に持ってきたような映像は斬新。そして面白いし魅力的なのだ。もちろんそれゆえにリアリティなんてこれっぽっちも存在してないが、この映画は映像をむちゃくちゃやることでむちゃくちゃな話を引っ張っていくという構図になっているので全然構わない。

そんなこの映画に近いのは「らんま1/2」だと思う。恋した相手にぞろぞろと付いてくる迷惑な奴ら。そいつらと誇張された世界で戦ったり溢れすぎな感情表現をしたりぶっ飛んんだギャグをかましたり・・・とまあ所々で高橋留美子っぽさを感じることができるのだ。登場人物がだいたいアホというのも似てるかもね。



これだけ聞くとビジュアルの面白さを狙っただけの映画かと思われてしまうかもしれないがそうでもない。この映画は恋愛によって成長する人間を描いているのだ。そもそもアホみたい設定の邪悪な7人の元恋人ってのはきっちりお互いが清算できなかった恋のなれの果ての姿ってことですよね。それは関係において火種になってしまうものだし。
スコットは自分が恋愛で傷つくのは嫌なくせに他人は簡単に傷つけてしまう。この映画はそんな男がある恋愛を通して人間的に成長する話なのだ。まあ個人的にはスコットの元カノに対する扱いが最後までさほどフォローされきれてないように思えて(キムとか特に)若干そこは納得いってないのですがね。


あと細かいことを書いていくと、場面省略が大胆だったり、それと同時にテンポが独特だったり、ゲイのルームメイト役のキーラン・カルキンが最高だっり(あのマコーレー・カルキンの弟)、音楽もすごく良かった。サントラほしいと思うことは少ないけれどこの作品はそう思えたなあ。


というわけで変わった映画ではありますが、見てみると単純にハチャメチャで面白い映画であるので劇場で見れるうちに行って方が良いと思います。じゃ今日はこの辺でセーブして終わろっと。


スコット・ピルグリム VS ザ・ワールド

スコット・ピルグリム VS ザ・ワールド