リンゴ爆弾でさようなら

91年生まれ。新作を中心に映画の感想を書きます。旧作の感想はよほど面白かったか、気分が向いたら書きます。

『猿の惑星 創世記』を見た。

猿、反旗を翻す。

猿の惑星』シリーズ最新作ということになるのでしょうか。旧作はかの有名な第1作目とティム・バートン版のアレしか見ていませんが、とりあえず本作単体で見ても大丈夫な映画だと思いましたよ。結論から言うとそこそこ楽しめました。誰もが知っているであろう『猿の惑星』に行きつくまでの物語、その起源を描いている映画なのです。ネタばれ多少あり。



本作最大の注目ポイントがCGだというのは異論がないところでしょう。俳優が猿を演じ、そこにパフォーマンス・キャプチャーという技術を使うことで映像的にリアルなお猿さんへと変えていくのですが、これがまぁ違和感がほぼない。CGのレベルがもの凄く高いです。シーザーが家の中をグリングリン動き回るシーンなんかは「これはすごい」と思いましたね。『スパイダーマン3』の地下のシーンにもこんなのあったけど。
そんなリアルな猿軍団のリーダとなるシーザーを演じるのはアンディ・サーキス。ゴラムやキングコングなどCGキャラクターを演じさせたら世界最高の演技をする方ですがなかなかその顔は知られていないのが残念です。もちろん今回も大変素晴らしい演技を見せてくれています。幼く不安なお猿さんから革命軍のリーダへとなっていく過程がちゃんと演技で、表情で語られているのです。



物語上で面白いと感じたのは何と言ってもシーザーが収容所で虐げられ、そこで他に収容されている猿たちの心を掌握し、自由へと向かっていく様子です。ここは見ごたえがあります。
シーザーは、最初こそ元居た家の窓を書いてメソメソしてますが、散々虐待され、そして自分と同じように虐げられくさい飯を食った猿たちの姿を見て決心するのですね。彼らと共に自由を手に入れるのだと。
そのため、シーザーは元リーダーにクッキーを配らせることで新リーダーであると証明り、他の猿も自分と同程度の知能レベルまで引き上げるため色々頑張ります。リーダーかくあるべきという感じです。
そうして機は熟したとき、ついに「NOOOOOOOOOO!!!!」という叫びと共に自由への戦争を開始させる。虐げられてきたものがついに雄叫びを上げるこの瞬間はゾクッときました。我慢して我慢して観客がもうこれ以上はつらいと感じる、「ここでやらなけりゃいつやるんだ!!」となる瞬間についに解放させるこのカタルシスが素晴らしい。



そこからは大規模な人間対猿の戦いへとなだれ込む訳ですが、並木道の上の移動することで葉っぱが舞う場面や、ゴリラが男泣きの仁義を見せるなどやはり見せ場盛り沢山。現代の技術に対し自然のファイトスタイルで戦う猿軍団はどこか美しいとすら言える。
ただ、動物園の猿を解放したところであまり戦力になるとは思えないけどね。



さて、シーザーが革命を起こすにいたったそもそもの始まりはジェームズ・フランコ演じたウィルが新薬を開発し、それをある猿に投薬したところから始まる。この新薬はウィルの父のアルツハイマーを治すため開発したもの。父と子の物語が二人の演技でしっかり語られているので相当倫理に反しているウィルの行動にも説得力があるように思えてくる。あの父親の病に冒された姿、そして薬で治ったときの生き生きとした姿を見たら確かに・・・という具合に。
しかし、結局人間には効かないのですね。故に大変なことになるわけですが。つまりは現代科学の神の力まで得ようとしてしまおうとすることへの批判の意味や人類の傲慢さへのメッセージが込められているのでしょう。猿という存在を結局自分たちの支配下にいるものとしてしか捉えていなかった人間たちが行く末を示したエンドロールも凝っていてよかったと思います。




というわけで今まで『猿の惑星』を見たことないという方でも十分に楽しめる作品だし、娯楽作としても良いし、また皮肉的な第1作の精神も受け継いでいると言える作品だと思います。必見です。あと、パンフが結構いいです。