リンゴ爆弾でさようなら

91年生まれ。新作を中心に映画の感想を書きます。旧作の感想はよほど面白かったか、気分が向いたら書きます。

最近見た映画の感想。

裏切りのサーカス

語り口がスマートな映画でした。説明的なセリフは避け、細かな演出で見せる。例えば、車の中に入ってきた蜂を外へ逃がすという動作でその人がどういう人間なのかを表したりとか、画面に映るものから読み取らせるというのが映画的で良いなあと。
そしてそもそも画面が重厚で美しく、それがまた心地いい。‘もぐら探し’らしい登場人物に覆いかぶさる重苦しい天気。スマイリーらがいるサーカスの会議室も壁紙も印象的。後ろでおばさんが淡々と作業しているさまなどが恐ろしい拷問部屋。冷たい空気感と乾いた暴力描写も見事に恐ろしい。そんなように街、服装、小道具・・・全体がビジュアルブックとか読みたくなる感じなんですね。映画ってのは見た目もかなり大事だなと。ここにやられてしまった。


ストーリーは複雑でちょっと混乱してしまう部分もありました。この映画に張り巡らされたものの全ては僕には理解できていないと思います。しかしですね、この映画において細かな頭脳戦というのはあまり重要ではなく、実際はサーカスのいる人間たちの悲劇的運命、これが物語の醍醐味だった。特に最後に判明するロマンスと、そんな2人の‘涙’これには心動かされました。またスパイゆえの誰にも心を許せない、信じてはならない孤独、哀しさもひしひしと伝わってくる。地味ではあるものの、物語、画、諸々が味わい深い作品でした。もう1度じっくり見たいな。




『ドライヴ』

結構評判のいい映画だし、暴力描写も容赦がないということなので期待して見に行ったのですが全然ノレず。カッコいいなど言われているみたいですが、僕としては「はぁ、そうですか」状態ですよ。作品内で垂れ流しになっている監督のこだわりが僕の趣味とは全然違ったんでしょうね。


この映画には独特のテンポというか空気感というものがあって、登場人物の動作、画、音楽などに魅力を感じられるならば確かに面白いのでしょう。けれども僕はそれらをクールと思えませんでして。もうこの感想につきますね。
『シェーン』など西部劇のようなストーリーは古典的で間違いないし、大胆な省略や表情や仕草で語る見せ方、とりわけエンジンを治すシーンで主人公の孤独を現すといったやりかたも、こうやって文章で書くと魅力的なんですが、どうも鼻持ちならない。ホントに合わないとしか言いようがないので難しいのですが。おそらくこの映画で最も印象的なあのエレベーターのシーンも、「いやいや、そんなんしてらんないでしょ」と突っ込みたくなった。


まあ冒頭の‘敢えて止まる’カーチェイスだとか、唐突で容赦ない暴力描写なんかはすごく良かったと思います。特別フレッシュな暴力はないのだけど、ショットガンで頭が吹っ飛んだり痛そうなシーンがあればそれだけである程度満足ってもんですよ。