リンゴ爆弾でさようなら

91年生まれ。新作を中心に映画の感想を書きます。旧作の感想はよほど面白かったか、気分が向いたら書きます。

『貞子3D』を見た。

飛び出せ!貞子さん

『リング』シリーズ久々の復活。とはいえ番外編的な位置づけになると思うのでシリーズは見ていなくても大丈夫だと思います。監督は『ハンサム★スーツ』などの英勉


女子高の教師・鮎川(石原さとみ)のクラスでは最近「呪いの動画」というものが話題になっていた。見ると必ず死ぬというその動画は、ニコニコ動画で生放送されたものであり、ある男の自殺を撮影したものらしい。その動画はすぐ削除されたのだが、ウェブ上でたまにアップされるという。そんな中、その動画を探していた生徒が突然自殺。事件を担当することになった刑事・小磯(田山涼成)は、最近多発する自殺と動画との関係を信じてはいなかったが、一応動画の調査を開始。自殺した男は柏田(山本裕典)という名前であることが判明する。一方、鮎川は恋人の安藤(瀬戸康史)や同僚の榎木(染谷将太)と、呪いの動画の詳細を追っていた・・・というストーリー。


見る前はかなり不安だったんですよ。『リング』の現代風みたいなことをやろうとしても、あの映画を超えることはかなり難しいはずだし、あんまり意味もない。だいたい薄型のディスプレイから出てくる貞子ってなんか怖くないし。それにネットを題材にした映画なら『回路』がある。そのうえでJホラー的な映画を作れば、それらと比べられることは必然。

ならば・・・ということなのか、本作はお化け屋敷的なアトラクション映画になっていました。3Dをふんだんに使い、ビックリドッキリな見世物の楽しさを味あわせようとしているんですね。今までの作品から脱するには確かにこうするしかない。賛否両論があるとは思いますけど、この方向性は全然間違ってないと思います。そういう面はなかなか楽しめましたよ。



特に個人的に好きだったのが中盤から終盤の展開で、スクリーンのある大型トラックから貞子が髪の毛攻撃してくる場面は爆笑!かなりばかばかしい場面ではありますけど、なんだろう『HOUSE』的な?そんな感じ。それにモンスター化した貞子(『バイオハザード』のリッカーみたい)がわらわらと襲い掛かってくるシーンも楽しかったなあと。驚かし方も「来るか?来るか?」という煽りから「そこで来たかー!」というところまで結構楽しい。

それに、一番の狙いであろう3Dも効果的でした。奥行き3Dなんて、と思っている方もある程度満足していただけるでしょう。ビックリ場面じゃなくても3Dの意味があるのもいいところだと思います。作り物のバッキバキ感がする映像も合ってたなあと。



とまあなかなか楽しめる作品ではあると思います。でも言いたいこともある。
まずですね、この方針で行くならもっとはっちゃけてもいいんじゃないかと感じましたね。個人の趣味ではありますが、悪ふざけ感と悪趣味度が足りない、見世物としてはまだ物足りないと僕は思いました。
例えば先ほど書いたモンスター貞子、これは退治したら黒い蝶となり消えてしまうんですね。この蝶の意味が全く分からないというのもありますが、どうせなら血を吹きだしてのたうちまわりながら死んだ方が楽しいよなあと。もうちょっとそこはショックがあってもいいのでは?ラストの大量の髪の毛にくるまれた鮎川がドッコーンって落ちてくるところも面白いんですけど、物足りない。全編きれいすぎるんですよ。

特に、せっかく石原さとみという存在を使っているんだから僕はもっとひどい目にあわせた方がよかったのではと思います。とにかくひどい状況の中でヒロインがけなげに頑張ることで美しく見え、存在として魅力的になるのでは?と思うんです。特にこの映画はやりすぎなくらい場面がいいなと思えたので、もうちょっと監督のこだわりとかフェチが見えると面白のではと思いました。



それとストーリーですね。全編突っ込んだら負けというくらい粗だらけで、いくらなんでもこれはないだろうと。とにかくどうしようもない。ほんとに挙げるとキリがない。これがストーリーは申し訳程度にしといて、全編驚かしに徹しているならそれでいいんですが、そういうわけでもないのがまたちょっと。

特に鮎川と貞子の関係性の部分。これは納得いかない。この2人は互いに超能力を持っていたために周囲から虐められていた。それで貞子は自分が復活するための「器」として鮎川を利用しようとするんですね。「あなたは私と同じ」と言って。しかし鮎川は「私はあなたとは違う。私は呪うのではなく、人を助けるためにこの能力を使うの」と言いいます。でもこの映画の中だと、鮎川はほぼ自分の身を守るためにしか力を使っていないように見えるんですよ。

だいたい、貞子は(この貞子が過去作にどれだけ準拠しているか不明ですが)虐められて井戸に投げ捨てられて、それで人を呪うようになった。それに対し鮎川は虐められて自殺しようとしたところ、ちょっとイケメンの男の子に助けられたって話ですよね。それじゃあちょっともう、同じ土俵で話できねえだろと思うんだけどなあ。お前は何を説教じみたこと言ってやがるんだと。この部分と橋本愛という超絶美女に貞子を演じさせたせいで、存在として貞子が中途半端に思えた。怨念の塊には見えず、また悲劇的な存在として感情移入できるほど掘り下げてもいない。単なる化け物ですらない。虐めをストーリーに絡めるけど、最終的にうまく機能してないなら、最初からいらないよって。



とまあ、ストーリーの面白を求めたらひどいと思うでしょうし、かつての『リング』のような作風を期待していくと期待はずれな映画だとは思います。ただ、お化け屋敷的なものを期待するならなかなか楽しめるのではないかな。僕もそういう視点では結構楽しみました。見るなら劇場じゃないとだめだと思うので、気になっているなら是非映画館へ行って見ましょう。




その他の細かい感想。


・オープニングタイトルが『セブン』オマージュでした。そう考えると柏田くんの動機もジョン・ドゥっぽいと思えなく・・・いや、ないか。


・自殺をニコニコ生放送で流すのはいいけど、観覧者数5って!やる気あんのか!それになぜあの5人は生放送待機してたんだ。僕もニコニコ動画は詳しくないけれど、あの描写は思い込みで作ってるとしか思えない雑さ。


・動画を見た後の死ぬタイミングと死に方が人によってバラバラ。見てすぐ死ぬ人もいれば、数秒たってから死ぬ人もいる。見た人は自殺するのかと思うと、そういうわけでもないらしい。劇中では統一しろよ。


・最初に死ぬサラリーマン。彼は動画を見た後トボトボと道路に出ていくのですが、ある地点で止まって一瞬間ができるんですね。なのでそのあとにショックシーンがあるのがわかっちゃって構えちゃう。これはもったいないかなあと思いました。


・画面から手だけがニョッと飛び出すシーンが本作では2回ありますが、1回目はそこで使うのもったいなくないかなあと感じました。2回目で初めてそれを見せた方がビックリできたのではないかな。


・なんかやたら斜めからのアングルが多かった。でもあまり意図は見いだせず。


・鮎川の家では電気をつけずパソコンいじってるシーンが多かったけど、目が悪くなるのでやめた方がいいと思います。


・劇中に「DEE DEE ESP」という曲を歌うアイドルが出てくるんですが、あの「いったい何年前だよ」というPVは衝撃的。


・隠蔽体質みたいな教師が出てきた意味は?


・で、結局白と黒の蝶は何だったんだ?


貞子3D --復活 (角川ホラー文庫)

貞子3D --復活 (角川ホラー文庫)