リンゴ爆弾でさようなら

91年生まれ。新作を中心に映画の感想を書きます。旧作の感想はよほど面白かったか、気分が向いたら書きます。

『サニー 永遠の仲間たち』を見た。

私が忘れた、私に会いに行く。
評判の韓国映画。全く注目してなくて見る予定もなかったんだけど、twitterでやたら絶賛されているので事前知識はほんどないままで鑑賞。twitterを始めてからは全くどんな映画か知らないけど見に行ってみようというものが増えた。


40代専業主婦、幸せながらどこか物足りない生活を送っていたイム・ナミは、ある日母の入院している病院で旧友のチュナと再会する。チュナは高校時代に田舎から転校して馬鹿にされていたナミを‘サニー’というグループへ入れてくれた友人であり、そのグループのリーダーだった。ガンで余命2か月と宣告されていたチュナは、ナミに「もう1度‘サニー’のメンバーに会いたい」と頼む。その願いをかなえるため、残り5人のメンバー側索をしていくうちにナミは自身の青春時代を思い出していく・・・というストーリー。

傑作だ!
の一言で終わらせて、「後は観に行ってくれ、そしたらわかるから」と感想切り上げてもいいくらいの映画。韓国映画が高いポテンシャルを持ってるとは何度も証明されてきましたが、個人的にそれは犯罪・暴力映画だけだと思ってた。しかし思わぬところに宝あり。愛すべきというか、ホントに愛おしい映画ですこれは。



高校生のときを振り返る過去パート、ここは多幸感に溢れ、元気で、輝いていて、高校生らしい感情がたっぷり詰まってる素晴らしい場面の連続になっている。馬鹿騒ぎした毎日、ダンス、他グループとの喧嘩、初恋・・・すべてが全力だった。コミカルな演出と、それぞれに漫画的な個性を持ってキャラ立ちしているサニーのメンバーが、その全力さで映画を引っ張っていく。そんな青春の姿にノックアウトされてしまう。とにかく彼女たちが魅力的なのだ。

それに対し現在、40代になった彼女らもやっぱり魅力的である。昔とは多少変わっていても本質はそのままで、過去を思い出すにつれて活気を取り戻していき、それでやりすぎちゃう場面なんか最高だった。
しかし、やっぱり全て当時のままとはいかず皆リアルで難しい悩みを抱えている。中にはほんとに厳しい人生を歩んでいる者もいるが、その現実感がより過去を輝かせて見せる。特に過去サニーの面々が残した[自身の夢を語るDVD]を見るシーンなんか泣けて泣けて。美しい青春の輝きと残酷さが同居した素晴らしいシーンだったと思う。


また、この映画は過去をただ美化された思い出としてだけでなく、どうしようもないことやつらいことは昔にもあったんだと言う。つらさや悲しみも含めて過去だし、それが繋がっての今なんだと。昔は輝いていた、でもつらいことだってあった。今はつらいかもしれない、でも今だって輝けるんだ。そういうポジティブさがあったなと思うんですね。



他にも良いなあと思うところはたくさんありまして、例えば映像面。現在と過去の入れ替わりが非常にスムーズです。40代のナミがかつて通っていた学校を訪れるシーン、通学路でカメラがぐるっと360度回るうちにだんだん現在から過去へ移っていく。すごく自然に変化してくことで映像の気持ち良さもあるし、過去と現在がつながっているということを示す意味でも効果的だったかと思う。
またバランス感も非情に良い。例えばサニーのメンバーだけでなく敵対する不良少女グループもちゃんとキュートに見せるし、ある事件を起こす少女に対してもちゃんと人物を描いている。登場人物全員に実在感があるのだ(男キャラはちょっと薄いかもしれないけど)。
凡百の物語が感動させようとメソメソ撮るであろう所を見せないというのもまたバランス感覚の良さが現れているのだろう。さらっと流すところは流し、変に湿っぽくなり過ぎない。また全体にコメディ的な演出の中で、軍事政権下であったという社会情勢をサラリと盛り込んでくるのも凄いなあと思います。



とはいえ、ほんの少しだけ文句もありまして。それは最後の遺書です。ネタバレになるから詳しく書きませんが、ちょっとあの展開はやりすぎじゃあないかと。確かにリーダーとしてのチュナの思いを考えれば納得はできるし、全てをまったくの条件無しに手渡したわけではないから・・・とも思いますけど、ちょっと安易すぎるかなとも思います。



しかし、そんな気になる点などを吹き飛ばすくらいの魅力で最後まで引っ張っていく作品ですので、そんなことはもういいんです。とにかく大好きなんだと、またサニーのメンバーに会いたいなとそう思える作品なんです。そう思わせてくれただけでいいんです。いやー面白かった!