リンゴ爆弾でさようなら

91年生まれ。新作を中心に映画の感想を書きます。旧作の感想はよほど面白かったか、気分が向いたら書きます。

見たけど感想書いてなかった映画の感想。

おとなのけんか

子供同士の喧嘩で片方が怪我をさせてしまった。そこで双方の両親が集まり友好的な解決方法を探ろうとするが、だんだん大人同士の泥沼のけんかに発展していく、という話。登場人物は4人、舞台はアパートの一部屋、上映時間は80分というこじんまりした作品で、サクッと見れる楽しい映画でしたよ。

人の喧嘩というのは見ていて面白いもので、当事者以外にはあまりにくだらなかったりして笑えるんですよね。自分が過去したけんかも、思い返してみるとくだらなすぎてあきれ返る。でも当事者は本気なんだよねえ。この映画でも初めは子供に関することで言い争っていたのに、いつの間にか個人のエゴとか大げさな主義主張に発展していき、彼らの善良という仮面がはぎ取られていく。本性剥き出しのブラックな笑いは、面白いけどちょっと怖いですね。ホントくだらないのに一番身近にある破壊じゃないですか、喧嘩は。

むき出しになったおとな4人がみっともない姿をさらしつくした後、子供たちは実に子供らしい納得な解決を迎える。この辺良いなあと思いましたね。ワンシチュエーションながらテンポよくスリリングに映画を盛り上げていき、細かく張った伏線をしっかり回収していく心地よさがある。クリストフ・ヴァルツのあからさまなムカツク感じとかも最高でした。あとゲロ噴射も。




ファミリー・ツリー

ハワイ・オアフ島に住む弁護士マット(ジョージ・クルーニー)が先祖代々受け継いできた土地の売却と、ボート事故によりこん睡状態になった妻の問題に頭を抱える映画。しかも妻は浮気をしており、離婚まで考えていたのだと長女や友人から聞かされるという何ともつらい話である。しかしハワイが舞台ということでどこか陽気だったりしてほんわか心地よい、楽しい喜劇となっていたように思います。


タイトルの『ファミリーツリー』は家族という面と、ハワイの土地・風景・たくさんの親戚たち、それらが受け継いできたものの二つ意味していて、いいタイトルだなと思う。それまで家庭を顧みなかった男が、右往左往しながら家族の絆を取り戻そうとしていく中で、先祖代々受け継がれてきた土地についても思いをはせることになる。この2つの問題がだんだん重なって一つのテーマにまとまっていく様が上手いなあなんて思いました。ラスト、家族がまだちょっとぎこちないけどまとまって、伝統工芸だというハワイアンキルトを足にかけるシーンもとてもよかった。


妻の最期においてありがちなお涙ちょうだいにならないところもいい。仰々しい演出じゃなく、そっと言う言葉が泣かせてくれる。それとジョージ・クルーニーのダメおやじっぷりがまた良いんですよね。怒ってくまちゃんを投げたりドタドタ走ったりで最高。イメージにあるスマートさとは全然違う姿を見せてくれる。また中盤から登場する娘の彼氏・シド、こいつが画面に登場した瞬間に「あっ、こいつはダメだ」と思わせる感じで良い存在感。最初は失礼なバカにしか見えないんですが、それで終わるわけじゃないところも含め、いい役だなと。


というわけでちょっとほろ苦いけど楽しい、よくできた映画だと思います。ただ個人的に好きかと言われれば別に、なんですよね。いい映画だとは思いますよ。でもこうグッとくる何かは僕にはありませんでした。まだ人生においてこういう段階にいないからかなあ。