リンゴ爆弾でさようなら

91年生まれ。新作を中心に映画の感想を書きます。旧作の感想はよほど面白かったか、気分が向いたら書きます。

最近見た旧作の感想その11

子連れ狼 死に風に向う乳母車』(1972)
三隅研次監督、若山富三郎主演のシリーズ三作目。相変わらず破天荒で、無類に面白い。特にラスト、若山富三郎が超大勢を一人で相手するシーンは凄い。もはやガトリングガンと化した乳母車で戦闘開始のファンファーレを挙げれば、あんな得物こんな得物で敵を血祭りに上げていく。冥府魔道に生きるだけあって意外とセコい手も使うのだな。
そして何と言っても、切断された生首の視点でゴロゴロと転げまわるカメラ。これを忘れるわけにはいかない。毎回印象的な残酷描写が魅力的なシリーズだが、ここは単にショッキングというだけではなく、その直前にある加藤剛との問答があっての名シーンである。
あとこの映画で記憶に残るのは謎の拷問、「ぶりぶり」だ。逆さ吊りにした若山富三郎棍棒でシバキ倒すというだけで、内容だけなら特別な感じはしない。だがその際の掛け声が「ぶ〜りぶりっ、ぶ〜りぶりっ、ぶ〜りっぶりっのぶ〜りぶりっ!」といったもので、これがもう耳にこびりついて離れない。ぶ〜りぶりっ、ぶ〜りぶりっ・・・



『リバティ・バランスを射った男』(1962)
ジョン・フォード監督、ジョン・ウェイン主演の西部劇。時代の変化により西部の価値観が変容していく過程を、三人の男を通して描いている。一人は凶暴な悪役リー・マーヴィン。一人は法律家ジェームズ・スチュアート。そして最後にジョン・ウェイン。このキャスティングがすべてを物語っているともいえる。法と政治と教育により西部に文明をもたらすジェームズ・スチュアート。しかしそんな理想はリー・マーヴィンの銃と鞭による暴力によって妨害されてしまう。そこで優男と馬鹿にしながらも助けてくれるのジョン・ウェインだ。
ジョン・ウェインはリバティ・バランスと同じく暴力の支配する社会の一員である。しかし、同時に民主的社会に対し協力的な男でもあった。一人の理想家だけでは本当に社会を変えることはできない。アメリカが現在の姿になったのは、単に法と政治、教育の力だけではない。その背後には、実はジョン・ウェインのような男の姿があったのだという事をジョン・フォードは描いたのだろう。そう思うと、後に真相がわかるという手法は、なるほどこの題材にはピッタリなやり方だった。
この映画には『捜索者』に通じる部分がある。それは共にジョン・ウェインが〝家族になれなかった男″を演じているという部分である。取り残された男、と言い換えても良いが、二つとも、変わりゆく時代の中で結果的に取り残されていく男の哀しみが描かれている。自らの手で「西部」を終わらせてしまった男は、一体その日から何を考え、どう生きたのだろう。本作ではサボテンの花に、そんな男への安らぎを託していた。

リバティ・バランスを射った男 [DVD]

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やたらとでかいステーキも見物である。