リンゴ爆弾でさようなら

91年生まれ。新作を中心に映画の感想を書きます。旧作の感想はよほど面白かったか、気分が向いたら書きます。

『サイレントヒル:リベレーション』を見た。

ブルーレイで鑑賞。

サイレントヒル:リベレーション [Blu-ray]

サイレントヒル:リベレーション [Blu-ray]

思い起こせば、クリストフ・ガンズが手掛けた『サイレントヒル』(2006)は、原作(ゲーム)の雰囲気を尊重しつつ映画的な見せ場も盛り込んだ秀作だった。またアレッサ役を演じたジョデル・フェルランドはその後『パラノーマン』でこの作品を意識したような役を演じており、広く語られることはないが地味にイロイロと反響のあった映画なのかもしれない。
そんな前作から6〜7年も経ち、監督やスタッフこそ交代してしまったが本作は前作からの直接的な続編であり、設定や登場人物などは継続している。更に本作の主な原作である『サイレントヒル3』は個人的に特別思い入れのある一本ということもあり、どんな映画になったのかと結構期待していた。
だがしかし、そんな期待は見事に裏切られた。展開はご都合主義。物語は薄っぺら。色々台詞で説明してるくせに大切な部分は説明しない設定。恐怖描写もヌルい。ラストの対決なんてもう、せットのアホらしさも含め失笑もの。良かったのは音楽と一部のクリーチャーのデザインくらいという、かなりガッカリな作品になってしまっていたのだ。



サイレントヒル3』の何が素晴らしかったかといえば、非常に強く嫌悪感を抱かせるビジュアルである。特に後半の、グロテスクで生理嫌悪感にあふれた、しかし同時にアレッサの苦しみをも感じさせる世界。あれは当時中学生だった僕にとってはホントにショッキングだった。断じて、ピエロが怖い顔をしたり、ホラーなガキがむしゃむしゃ生肉を食うような凡庸な表現に恐怖したのではない。グロテスクな怪物が歯をむき出しにして吼える姿に怯えたのではない。逆さづりにされた男の腹をコックが削ぐ姿に震えたわけではないのだ。
ゲームは細かい恐怖盛り上げ描写もかなり怖かった。色々言いたいが特に重要なのは「不条理」感。どこか不気味にずれていて、派手にせずとも「なんだよ・・・いや、なんだよ・・・」と思わせるような描写・美術によって恐怖や気味悪さを醸し出していたのだ。しかし、本作にはそれもない。というかもう、ハッキリって怖くないよこの映画。雰囲気づくりというものをせず、ただ裏世界とかクリーチャーを出すだけじゃ怖がれない。
細かく配置された「象徴」も『サイレントヒル』にハマった要因の一つだった。サイレントヒルは悪夢が具現化した世界だったりするので、そこかしこにその世界と人物の謎を紐解くヒントが並べられているというわけだ。しかし、この映画ではそれがだいぶ薄くなっていたと思う。例えば、メリーゴーランドは輪廻転生を意味し、故に『3』では全体に円のイメージが使われているのだが、本作ではそういった意味付けがかなり薄い・・・というか、意識していたのか微妙である。



前作ではしっかり表現されていた「哀しさ」も感じられないし、テーマ的に重要な親子愛の描写も弱い。キャラクターが単純化され、掘り下げ不足になってしまったことが一番の理由だろう。ただ、本作の狙いは3Dを使ったアトラクション的なホラーにすることだ。登場人物の数は大して変わらないのに、前作より30分ほど短いことからもそれは分かる。だが、それならそれで人物を絞るとかやり方はいくらでもあるじゃないか。僕はこんな単純なクローディアや無意味に登場するレナード(マルコム・マクダウェル・・・)、何故か恋人ポジションと化したヴィンセントに、序盤で消え去ってしまうダグラスなどは認められない。彼らはもっと哀しみや狂気を含んだ存在なのだ。



一応念を押しておくが、僕は「ゲームと違うからダメ」と言うのではない。全ての映像化作品に言えることだが、たとえオリジナルとは違くともその作品自体が面白ければ何の問題もないと思う。しかし、この映画はゲーム云々を置いといても面白くはないし、中途半端にゲームに寄せているから余計ガッカリするのだ。もういっそのこと、最後ヘザーには魔法少女に変身してビームを放ってほしかったよ。女優さん(アデレイド・クレメンス)もかわいかったしね。

↑大変面白い攻略本。シリーズの詳細な解説や、製作者が影響を受けた本・映画などについても書いてあるので、この映画を見るくらいならこちらを読むことをお勧めする。