リンゴ爆弾でさようなら

91年生まれ。新作を中心に映画の感想を書きます。旧作の感想はよほど面白かったか、気分が向いたら書きます。

今年の映画、今年のうちに。2016年新作映画ランキング。

年の瀬でございます。というわけで今年もやります。2016年に見た新作映画ランキングです。今年は68本の新作を鑑賞しましたので、その全てに順位をつけていきたいと思います。尚、年内のうちに前後篇と分けて公開された作品については別々に順位をつけたいと思います。また公開日が昨年になってる作品でも、地方では今年初公開となった作品はランキングに入れております。つまり、今年劇場で公開された作品のうち、リバイバル上映を除いたものが選定基準です。それではまず、次点とベストテンから発表していきます。一応、ベストテン内の作品で、且つ個別に記事を書いた作品についてはリンクを載せておきます。



次点 傷物語 鉄血編

とんでもない表現の数々。階段と建築、それに風や水面など非常に面白い描写、表現の連続で、しかも一つ一つのカットが早いうえに、カットが変われば世界がどう変わってもおかしくないというかのごとく自由。テレビアニメ版においても特徴的だった手法が、より尖った形で出ていると思いました。そしてテレビアニメ版では主に言葉が画面を先行しているのに対し、劇場版は画面が言葉を先行し世界を作り出しているように感じられました。あとは『ウイークエンド』を連想させる事故のシーン、僕はあれが一番好きですね。しかし3部作がまだ完結していないので、今回は次点とさせていただきます。



10位 ディストラクション・ベイビーズ

暴力そのもののような男が暴力のみで行動することによって、暴力が様々な形で伝播し、さらにはその暴力の根源が見えてくるというまさしく暴力の映画なのですが、その過程を心理によってではなく、行為によって描いたことが素晴らしいと思います。途中不快になる、というか本作で菅田将暉が演じた役の有り方というのは心底最低だと思うのですが、そういう点も含めて暴力的でしたね。勿体ない部分、特に車が出てくるというのにその表現がイマイチというか、雨に濡れた車の色気がもっとほしいとは思いましたが、楽しませていただきました。



9位 サウルの息子

言葉では到底言い表せないほどの暴力が目の前を通り過ぎ耳に入る、アウシュビッツという圧倒的な地獄の中を引きずり回される作品でした。説明はなくとも、サウルの背中を追ってゆくだけでその地獄の一端を見事な画面設計や音の効果によって感じ取ることが出来るのですが、しかしそれはアウシュビッツを理解させるというより、狂気と混沌の中では理性を殺さざるを得なくなるのだと実感させてくれるような作りで、そしてサウルはそんな中、一人正気と狂気の境界線上に残された微かな理性を保とうとしており、そのドラマも素晴らしかったですね。ただやはりこれは、整理されたものではない、かつてそこにあった地獄の真っただ中へ投げ込まれるという点が好きです。



8位 アイ・アム・ア・ヒーロー

日常〜ゾンビパニックという最初の流れが素晴らしい。特に土足で家に入る、というところが素晴らしかったですね。大泉洋が走りだしてからは、あと一手、奥行きや背景を生かした惨劇が見られたらもっと良かったとか、森に入ってからのシークエンスがちょっともったいないとか、目に光を持たず微笑み続ける有村架純が、可愛いという事以外に役に立っていないじゃないかとか、完璧とは言い難い部分もありますが、終盤のロッカーシーンで泣いたことに嘘はつけないので、8位とします。「名前」についての物語も良かったと思います。
<感想>



7位 クリーピー 偽りの隣人

廃墟のみならず、廃墟的人物による恐怖譚でありながら奇妙なテンションで展開する暴力喜劇でもあるというこの作品はとにかく楽しいの一語に尽きます。あちこちに散りばめられた黒沢清的モチーフが呼応しあい、異界を創造する手腕は流石としか言いようがありません。しかし、勿体ない、もっとこうだったら、などとないものねだりをしてしまいたくなる作品でもありました。ちなみに、今年最も反響のあった記事がこの『クリーピー 偽りの隣人』についてのものでしたね。
<感想>



6位 BFG:ビッグ・フレンドリー・ジャイアン

ブリッジ・オブ・スパイ』の方が、確かに上質な映画なのかもしれません。しかしながら、スピルバーグが久々に本格ファンジーへ復帰したこの作品には「隠れる」こと「模倣」することといういかにもスピルバーグ的要素に満ちておりとにかく楽しい見せ場の連続で、しかもまたそれらの要素が、これまたいかにもな、孤独な者の救済へと繋がっていることに感動しました。そんなスピルバーグ印満載のこの楽しくて優しい作品を見過ごすことは、どうしてもできないのです。
<感想>



5位 ちはやふる 上の句

今年最も驚きがあったのがこの作品です。これはやられた。これほどまでに動きの興奮が、音の張りが、横長の画面が、編集が、役者が、そして物語が良いとは思いもしなかった。特に感動したのはやはり机君であり、そして太一ですね。この作品では千早という人間をとにかく動かせており、そのことが広瀬すずの魅力を引きだしていることは言うまでもありませんが、彼女の動きのおかげで、机君と太一のドラマがより素晴らしいものになっていると思います。文句なしに、とまではいえないけれども、素晴らしい作品でした。
<感想>



4位 ダゲレオタイプの女

今年は黒沢清の新作が2本も公開されたこともあり非常に興奮した1年だったのですが、『クリーピー』もこの作品もすごく面白かったとはいえ、間違いなく黒沢清のベストではないでしょう。しかし『ダゲレオタイプの女』は、『クリーピー』に比べ「もっとこうだったら」と思う部分が少なかった。そして個別記事でも書いたように、「直立」と「寝そべり」の縦横や、リュミエール兄弟を出発点とし『回転』に『顔のない眼』、小津、そして溝口を通過し、監督の過去作、特に『叫』に共通する要素から、さらにボニーとクライド的な犯罪と恋愛に到達するその感動は、確かなものなのでした。来年も新作の公開が控えているということで、そちらも非常に楽しみです。
<感想>



3位 溺れるナイフ

この映画は既に選んできた作品と比べて明らかに良くないなと思うところが多い映画です。ではなぜ、この順位なのかと言えばそれはもう山戸結希作品という個性を浴びてしまった、ということがまずあります。もちろん、そういった作品は他にもありますが、加えてこの『溺れるナイフ』は、ダンス的空間を生み出す人物の動きに山戸監督的少女像、そしてカット割りによる役割の差異の表出、ロングショットの画としての魅力、役者陣、そして僕の好きな「青春の終わり」もしくは「決別」を描いた作品だからという理由があります。最後のストップモーションのその瞬間、一瞬のきらめきを放つ、ナイフのように鋭い自意識と青春の終わりが集約されたその最期の瞬間に感動し、その気持ちに嘘はつけないので、3位に選ぶことにしました。
<感想>



2位 ハッピー・アワー

5時間という恐るべき長さが、まるでそうとは感じさせないほどの速さで過ぎてゆく驚くべき作品で、しかしそれは決して速いテンポの作品だからということではなく、いくつもの豊かな場面/ショットによって、そう感じさせられているのだという充実感に満たされる作品でした。乗り物、重心、階段、旅行。4人の女性を中心に据えた物語の、不自由な人生は常に幸福とは言い難いかもしれないけれど、そのすべてを包む街の中で、幸福な時間が紡がれてゆくのだと僕は感じました。個人的に最も好きなのは4人で旅行に行く下りで、じゃれ合い、楽しげに過ごす時間の中、微かに感じ取れる別れの気配と、無意識にそれに抵抗するかのような姿に、不意に涙が流れた。そこには確かに、映画的な時間と空間によって生み出される感動が存在していたように思います。
<感想>



1位 キャロル

なんと芳醇な香りの漂う贅沢で優雅な作品でしょうか。全編見事な画面、見事な演出、見事な物語、見事な演技に彩られたこの作品は、今年最も「映画を見ているんだ」という満足感を与えてくれました。特に見つめること、見つけること、盗み見ること、見つめ合うことという視線のドラマ。そして触れること、触れられることという感触のドラマがとにかく素晴らしい。年代感も良かったですね。また犯罪映画的ロマンスまで見せてくれるとは驚きでした。思い出すだけでも幸福を感じさせてくれる、ほとんど惚れたと言ってもいいような作品です。というわけで僕は2016年のベストに、紛れもない傑作であるこの『キャロル』を選ぶことにします。本当に素晴らしかった。
<感想>



<まとめ>
というわけで以上が僕の2016年新作映画ベストテン&次点でした。見られなかった作品で気になっているのは『光りの墓』『淵に立つ』『無垢の祈り』『ドロメ男子編女子編』『SHARING』『ソング・オブ・ザ・シー』『父を捜して』と、結局今年は公開されず来年公開の予定もなさそうな『ホース・マネー』ですね。元々首都圏ではない上に、かなりの田舎住まいなのでやはり取りこぼしは多くなってしまいます。
年々心に刺さる映画が少なってきてはいますが、今年はこれまでベストに選んできたような作品と系統の異なるリストになりました。それは勿論狙っている訳ではなく、ただ今年見た作品を思い返すとそうなったということなので、自分でも不思議です。しかしこのようにランキング付して気付いたのですが、上位4本には共通する要素があると思います。それは「現状からの逃走」です。4本ともそれぞれ当然事情は違い、1,4は銃と車と犯罪映画的な形として、2は関係性の変化として、3は青春の期待として、主人公たちは現状を変えるため逃走を図り、そしてそれは、ほぼ果たされていません。もちろんそうなるように順位付けしたのではなく、こうやって書いていて気付いたことなのですが、しかし無意識にそういう作品が好きなんだと選んでしまったということが恐ろしくて、というのもそれは今の僕の状況、つまりは、未だに自分自身に納得できず、どこかに真に目指すべき道があるなんて恥ずかしい勘違いを起こすも、しかし同時に目指すべき道を見つけることも歩き出すこともできぬまま可能性が閉じている。そんな自分の姿がこれらの作品を通して、うっかり見えてしまったようで恐ろしかったのです。
さて、今年も見る作品は厳選したため、これは酷いと思うような作品はありませんでした。なので特別ワースト、というものはありません。ただ、期待していたけれど思っていたほどではなかったという作品はありましたね。というわけで以下、今年見た新作の全ランキングと簡単なコメントを載せておきます。ワースト3となる64位までは好意的な気持の方が上です。



<2016年新作映画ランキング>
1 キャロル
2 ハッピー・アワー
3 溺れるナイフ
4 ダゲレオタイプの女
5 ちはやふる 上の句
6 BFG:ビッグ・フレンドリー・ジャイアント
7 クリーピー 偽りの隣人
8 アイ・アム・ア・ヒーロー
9 サウルの息子
10 ディストラクション・ベイビーズ
11 傷物語 鉄血篇
12 ブリッジ・オブ・スパイ
13 聲の形
14 この世界の片隅に
15 死霊館 エンフィールド事件
16 ハドソン川の奇跡
17 海よりもまだ深く
18 イット・フォローズ
19 クリムゾン・ピーク
20 スティーブ・ジョブズ

ブリッジ・オブ・スパイ』は、スピルバーグとしては『ミュンヘン』以来の面白さで、『BFG』よりも出来はいいと思いますが、好きの度合いでは劣るかなと。『宇宙戦争』にも垣間見れたアンゲロプロス作品との接近も気になるところでした。『聲の形』は前作に引き続き山田尚子監督らしい落ちる・投げるというモチーフが多用された作品で、他にも傘など些細な描写が本当に優れていて、内容としても見終わった後に色々と反芻したくなることが多い作品でしたが、走るべきところを走らせられなかったのが残念。『この世界の片隅に』は飛びぬけたクオリティによって「場」をつくりだし、そしてその「場」が奪われてゆくところ描いておりつまり「営み」と「歴史」が豊かなまじりあいを見せており、ある一定の時期のお話に留まらない素晴らしい作品になっていると思います。10位以内ではない理由は、もう好きの度合いの問題です。『死霊館 エンフィールド事件』の、おもちゃの車のシーンは素晴らしかったし、家と家の間の道路を突っ走るシーンも最高だったけれど、前作の方がさらに好き。『ハドソン川の奇跡』でイーストウッドが見せた技は凄すぎて怖いし、しかも相変わらず変わってるなぁとも思わせてくれました。『海よりもまだ深く』は是枝監督にしては説明的じゃないかとも思うんですけれども、阿部寛という巨体の使い方が非常にうまいですし、監督の過去作にも出てきたモチーフ・アイテムをふんだんに利用した作品でしたね。『イット・フォローズ』のカメラを360度パンしつつ、“それ”が迫ってくるところは大好きです。『クリムゾン・ピーク』はなにより屋敷の描写が素晴らしい。屋敷が主役ですからそれが良ければとにかくいいんですけど、最後がもったいないんですよね。あとミア・ワシコウスカ最高。『スティーブ・ジョブズ』を見たときは正直無駄な演出が多くてあまり好きではなかったんですけど脚本にはやられてしまい、アーロン・ソーキンはまた同じことやってるよ、と思いながら泣いてました。


21 ヤクザと憲法
22 ロブスター
23 ヘイトフル・エイト
24 スポットライト 世紀のスクープ
25 何者
26 ヒメアノ〜ル
27 ローリング
28 シン・ゴジラ
29 葛城事件
30 ボーダー・ライン
 
『ヤクザと憲法』はやくざの面々が怖かったり可愛かったり笑えたりするシーンもさることながら、事務所を捉えたなんてことないショットもまたよかった。そしてひきこもりだった彼の顛末も含めて、ちょっと味わい深いドキュメンタリーでしたね。『ロブスター』は監督の前作に引き続き肉体のもどかしさが際立つ変な映画で、どうやって映画に肉体性を刻むかということを試しているのかな、とも思いましたが、基本凄くシュールなコントみたいな話ですよね。『ヘイトフル・エイト』は流石に長すぎ。サミュエル・L・ジャクソン芸もジェニファー・ジェイソン・リーもいいし、歴史を叩き込むとか美術とか音楽とか面白い要素はたくさんありますが、タランティーノ作品としては下です。『スポットライト』はストイックなプロとしての行動によって出来ており、きっちりした撮影と、そして編集がテンポの良さを作り出しているので退屈しなかったのだと思いますが、例えば『大統領の陰謀』みたいな撮影と編集の切れ味の方が好みなんですよね。『何者』は決して出来がいい作品ではありません。しかし終盤の感動は確かなもので、その後色々と考えたくなる要素が詰まっていたので、このくらいの順位です。『ヒメアノ〜ル』も後半の感動が大きく、また前半は前半で面白いのですけれど、説明しなくていいことを色々付け足してしまったのが惜しまれます。『ローリング』は落とし方も含めた物語とその余韻、撮影、そして柳英里紗は素晴らしくて、エロさはもちろん、その存在すべてが忘れがたい魅力を放っていると思います。延長コードとか納豆の件も良いですよね。『シン・ゴジラ』のゴジラ登場シーンは全部好きですが、人物描写、動きなどの映画的気持ち良さに乏しく、カットでテンポを速めているだけという風にも思えます。『葛城事件』でいいのは、父親が職場からいつも見ている風景の、あの狭さですね。そこにあの父親に対してのいくつかの気づきがあると思いますが、後半の田中麗奈の使い方で損をしている。『ボーダー・ライン』では多用される空撮によって、湿り気といえば死体から流れる血ぐらいなものという土地を見せられ、また家や人に車に麻薬と死体などの「密集」が次に印象付けられますが、そんな土地へ暗黒のおとぎ話風に落ちてゆく、という部分が好きじゃなかったですね。もっと犯罪アクションでいてほしかった。



31 永い言い訳
32 君の名は。
33 エクス・マキナ
34 オーバーフェンス
35 オデッセイ
36 コップ・カー
37 最後の追跡
38 レッド・タートル
39 貞子vs伽椰子
40 ドント・ブリーズ

このあたりは世評は高いけれども個人的にはそれほど刺さらなかったという作品が並んでいます。どれも面白い作品ではありました。『永い言い訳』の本木雅弘や乗り物に乗るショットの気持ち良さ、美しさは素晴らしい。『君の名は。』はどうしても納得がいかないことがあるので、アニメーションとしていくら素晴らしくてもこの順位です。でもトータルでは好きですよ。掌の文字とか。『エクス・マキナ』はガラス窓の使い方がすごくうまくて、ウィトゲンシュタインやらといった話より、そういう画面やショットの切り返しによって最初から仕掛けがちゃんと施されているのがうまいと思います。『オーバーフェンス』は心情ではなく描写によって人物を生かしているのが素晴らしいし、移動の扱いも良いんですけど、何より蒼井優主演のスクリューボールコメディを見たいと思いましたね。『オデッセイ』の陽気に行動を貫く姿勢は見ていて気持ちがいい。『コップ・カー』は少年たちの成長譚としてすごく良く出来ていると思うんですよね。銃の取り扱いの危なっかしさにひやひやします。『最後の追跡』も突発的に始まる銃撃戦や、乾いた感じ、そしてウッドデッキによって西部劇の空間が良く出てくるのも良いんですが、中盤で少しゆっくりしすぎにも思います。『レッド・タートル』は難しい話はやめてとかく蟹です。蟹萌え。『貞子vs伽椰子』はよくこんな企画を成立させたなということで、白石晃士の腕は素晴らしいと思いますし面白かったんですけど、好き度でいうとそこまでかなと。『ドント・ブリーズ』突如現れる老人の、その突如の感じ、距離感が面白かったですね。あともう少し、部屋の立体感を生かした攻防があるともっと良かったと思います。


41 アンジェリカの微笑み
42 FAKE
43 ズートピア
44 日本で一番悪い奴ら
45 山河ノスタルジア
46 インサイダーズ 内部者たち
47 傷物語 熱血篇
48 ジャックリーチャー NEVER GO BACK
49 キャプテン・アメリカ/シビル・ウォー
50 レヴェナント 蘇りし者

『アンジェリカの微笑み』は素晴らしい作品な上に、史上最高の「メガネ・・・メガネ・・・」まで見れて爆笑しますが、好きかというと好きではないんですよね。『FAKE』は佐村河内守の魅力ですね。魅力と言っても、天然っぽさとか、グレーゾーンに居る人の面白さ、ということですけれども。『ズートピア』はバディ警官ものとして、特に交通網を利用した画面が面白いんですけれどもテーマが足を引っていて、やるんだったらもっと暗部まで踏み込まないと結局綺麗ごとの説教で終わってしまっていないかな、と思いました。『日本で一番悪い奴ら』は題材的にすごく好みではあるんですけど、照明のダメさ、とくに麻薬を失った後ヤクザに問い詰められるシーンは冗談かと思いました。あと色気不足。『山河ノスタルジア』の、男2人女1人の最初のパートではジャ・ジャンクーの好きなところが出ていました。『インサイダーズ』のちんこゴルフは笑えますけれども、クールに決めている割にダサいドヤ顔を決めたり友情のドラマが語りすぎだったりで勿体ない。『傷物語 熱血篇』も画面上のモチーフから色々考えるのは楽しいですし、羽川翼というキャラクターが最高なんですけど、ちょっと見ているのがキツイ場面もありました。『ジャック・リーチャー』で、トム・クルーズは女優のアクションを映えさせるのがうまいなぁとは思いましたし、走るというアクションで貫いた面白い作品ではありますが、前作のタイトで色気のある完成度には勝りません。『シビル・ウォー』は落ちる、下降するというアクションが前作同様多々あり、またアクションの構築力もうまいとは思いますけれども、この位置です。『レヴェナント』はタルコフスキーじゃん、とか、イメージに頼りすぎじゃん、と思いながらも、主にエマニュエル・ルベツキのカメラによって楽しむことはできました。



51 ロスト・バケーション
52 13時間 ベンガジの秘密の兵士
53 マネーショート 華麗なる大逆転
54 ボクソール・ライドショー
55 フランコフォニア ルーブルの記憶
56 ファインディング・ドリー
57 アーロと少年
58 10クローバーフィールド・レーン
59 バットマンvsスーパーマン ジャスティスの誕生
60 デッドプール

『ロスト・バケーション』は水面上・水面下に境界線が引かれ、その境界線がどんどん変化してゆくのは面白いと思いました。『13時間』はいつものマイケル・ベイと同じレンズの光で、肝となる不明瞭な戦場描写は微妙だし布の使い方も勿体なく、話が動き出すまでがかったるいうえに銃撃戦もうまくないんですけど、迫撃やミサイルとなると面白く撮れているように思いました。『マネーショート』は全編正しい怒りと道徳心に満ちていて、政治倫理的正しさが強く押し出されすぎなので、意義はあるんだろうけど堅苦しい。『ボクソール・ライドショー』は4DX専用の映画として楽しい出来でした。『フランコフォニア』の幽霊的に過去を出しつつ歴史を交錯させる手法は面白いんですけれど、ちょっと眠かった。『ファインディング・ドリー』で扱われたテーマは面白いし、お手の物である視点を逆転させた脱出劇や狂気のアクションが炸裂するラストも爆笑なんですけれど、続く『アーロと少年』と併せて、いまいち最近のピクサー作品はイマイチ乗り切れない。ただし『アートと少年』は最狂のドラッグ描写がありましたね。『10クローバーフィールド・レーン』はメアリー・エリザベス・ウィンステッドのタンクトップ姿が良かったです。『バットマンvsスーパーマン』もワンダーウーマンは最高でした。『デッドプール』、真面目すぎるんですよね。ヒーロー映画としては新しくても映画全体で見れば何も新しくはないので、真面目だなという印象だけ残りました。
 


61 ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー
62 残穢-住んではいけない部屋-
63 白鯨との闘い
64 スーサイド・スクワッド
65 アリス・イン・ワンダーランド 時間の旅

『ローグ・ワン』はダース・ベイダー登場シーンとか、でかい物体の描写はシリーズ随一。『残穢』で、怪談収集家達が怖がってるのか面白がってるのかの中間で探っていく内に、うっかり穢れを広めてしまうという話は面白い。ホラーというより謎解き的で、地図の使い方もいいとは思いますが画面自体は怖くはない。『白鯨との闘い』は回想形式が全くうまくいってなくて、ドラマの高揚も、海洋冒険ものとしても微妙。スペクタクルシーンも恐怖がなかった。語り部の奥さんのシーンとか冗談かと思いました。ハーレイクインがいなかったら絶望的だったのが『スーサイド・スクワッド』で、デヴィット・エアーらしさはありますけれど、ぎりぎりで救われたって感じです。『アリス・イン・ワンダーランド』に「時間」はなかった。



66 ミュージアム
ミュージアム』はいまさら『セブン』かよ、ということを抜きにしても、とにかくサスペンスやホラー描写がド下手なので見ていて苦痛でした。悪趣味殺人が展開されるので最低とはいいませんけれども、しかし全く面白くはなかったです。



67 ターザン REBORN
本当にごめんなさい。見たんですけど何ひとつ覚えていません。サミュエル・L・ジャクソンの役がなんか面白かったとか、そのくらいでしょうか。まさに大味大作という枠でした。



68 ちはやふる 下の句
そして今年度最下位に選ぶのは『ちはやふる 下の句』です。この作品の出来自体は、最下位というほど酷くはないでしょう。しかし上の句からの期待を大きく下回ったのも事実で、仲間だの、絆だの、繋がりだのといった鼻持ちならないテーマが大仰に叫ばれるのは耐えがたいものがありました。後半はそれでも持ち直しますが、しかしやはり、言葉で語る比率や感動的な音使いなど、上の句でも危うかった部分が拡大されていました。あと千早が停滞する下の句の前半は本当に退屈でした。役者の魅力や、画面に見所がないわけではないのですが、やはり嫌いという点でこの作品はでかいものがありましたので、ワーストとさせていただきます。



はい、というわけで以上で2016年新作映画ランキングは終了です。ちなみに旧作に関しては、いつも通り、年明けに「下半期に見た旧作映画ベスト」という形でブログに書こうと思っておりますので、そちらもぜひ見てやってください。それではみなさん、良いお年を。