リンゴ爆弾でさようなら

91年生まれ。新作を中心に映画の感想を書きます。旧作の感想はよほど面白かったか、気分が向いたら書きます。

今年の映画、今年のうちに。2013年映画ランキング。

年の瀬ですね。というわけで、総決算しておきましょう。2013年に見た新作映画ベストテンです。やはり今年も良い映画は多く、10本の選定はかなり悩みましが、とりあえずこんな感じにしてみました。それでは早速行きましょう。



次点 真夏の方程式

そりゃあ、本作よりいい映画はベストテン外にも沢山ある。でもこの作品はテレビドラマの陳腐な映画化が相次ぐ日本映画界における希望なんじゃないかと僕には思えた。『容疑者Xの献身』に比べ物語は確かに弱いけれど、こちらの方が画面も語り口も演技も、諸々の要素が映画的な気持ちよさという点において圧倒的で、ついに西谷弘監督は「映画」を手に入れたのだと思いました。次回こそ傑作を撮るのでは。そんな期待を込めて、この作品を次点とさせていただきます。



10位 パシフィック・リム

10位に何を置くかというのはなぜかいろいろ考えてしまうもので、あれこれ入れ替えたのですが結局、今年一番単純に楽しいと思えたこの映画を選んだ。やっぱり、とにかく楽しかったんですよ。別に僕は特撮に詳しいとかそういうことでは全然ないけれど、そんなこと関係ないんですよ。現に、それまで映画や特撮好きというわけではなかった友人がパシフィック・リムをDVDで見て、本編終わった後そのまま音声解説まで聞いて超興奮&劇場に行かなかったことを激しく後悔してましたからね。



9位 イノセント・ガーデン

美しく、繊細で、エロティックで、そして血のにおいのする映画でした。比喩とテクニック満ちた映像が何とも言えない余韻を残す。ハリウッドでもこれだけ独特な色を持つ映画を撮るとは、パク・チャヌクとチョン・ジョンフン凄い。そしてミア・ワシコウスカがとても魅力的で、特に脚フェチにはたまらんもんがあります。



8位 リアル 完全なる首長竜の日

とっても黒沢清「らしい」映画で大満足。本気でホラーな前半もパニック風の後半の展開もどっちも大好き。あと実はこの作品、初めて劇場で見ることができた黒沢清作品であって、好きな監督の新作が劇場で見られるというは、それだけでも嬉しいことだなぁとしみじみ思いましたね。



7位 コズモポリス

こちらもまた実に監督の「らしさ」が出ている作品で、機会と肉体の融合だとか体内の変容だとか死による解放だとか、一言でいえば、とっても変態で素晴らしかったということですね。ちなみにクローネンバーグ作品も劇場で見れたのは初めてで、これもまた大変喜ばしい体験でした。



6位 風立ちぬ

公開直後は「アヴァンギャルド」「全裸で迫る宮崎駿」などと揶揄し、斜に構えつつこの映画を楽しんでいた。けれども、今になってもこの映画は頭から離れてくれず、結局思い返せば、今年はこの映画のことばかり考えていた気もする。それがなぜなのかはわからないし、この映画をもう1度見ようとも思わない。ただ、『風立ちぬ』という映画が僕の中に何かを残したことだけは確実なんだと思う。



5位 世界にひとつのプレイブック

人生が常に100点である必要はない。自分が今取ることのできる最高の点数であれば、それが傍から見て50点の出来だろうとかまわない。この映画は負け犬たちの敗者復活戦を通して、そのように勇気づけてくれるのでした。



4位 悪の法則

今あなたにふりかかる現実が、もしそれがいかに地獄であろうとそれはあなたが積み重ねた選択の結果なんだから、受け入れるしかないんだよ。取り返しはつかないよ。つまり「真実に温度はない」し「悲しみに価値はない」し、〝ボリート”なのだ。そんなわけで、『プロメテウス』に続きリドスコ凄いなと改めて思うのでした。あとブラピが最高。2回ある彼が笑う場面に注目。



3位 悪いやつら

韓国版『グッドフェローズ』ですが『仁義なき戦い』のような泥臭さもあり、そしてそこにさらに韓国独特の色付けをしている。ただの模倣ではなく、このジャンルにおける新たなる傑作として本作は存在しているということなんですね。またチェ・ミンシクの怪演は特筆すべきもので、後に残るキャラクターを作り上げていたと思います。



2位 魔法少女まどか☆マギカ[新編]叛逆の物語

愛とはただ美しいものではなく、醜く欲深いものでもあるのだという本作は間違いなく恋愛映画なのですが、僕が一番好きなのはエンドクレジット。あそこで描かれていたのは最も純粋な願いであり、あれ見たときにどうしても涙を抑えられなかった。それは『ソーシャル・ネットワーク』でマークが何度も「更新」する姿と同じ喪失感というか孤独というか、とにかくあの何とも言えない感情を思い出した。そして僕は、そういう話がどうしようもなく好きなんですね。



1位 ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日

僕が映画に望むのはこういう事なんですよ。大迫力で奇想天外。手に汗握るスリリングさに、ハッと息をのむ美しさ。驚くべき映像に心が沸き立つときの、あの高揚感。そして大事なのは、そんな映像の中に隠された、心を打つメッセージ性。この『ライフ・オブ・パイ』はまさにそういう映画で、パイの漂流はそれだけでもファンタジックで美しく娯楽として十分に楽しいものですが、その裏に隠された〝ある物語″と、そこから見える〝物語論″にこそ、忘れることのできない感動があった。間違いなく、傑作だと思います。



<総評>
以上が僕の選ぶ2013年新作映画ベストでした。毎年のことだけどベストテンを決めるというのは何とも悩むもので、でもそれが楽しい。クセになる遊びですね。見れなかった作品で悔やまれるのは『エンド・オブ・ウォッチ』『君と歩く世界』『コン・ティキ』『共喰い』『ホーリーモーターズ』『ローン・レンジャー』あたりですかね。
今年は留年&2回目の就活ということで色々大変でした。自業自得であることは間違いなく、そんな自分のふがいなさや情けなさにどうしようもなくなることも多々ありました。「映画ばかり見て遊んでいるからだ」とはよく言われた言葉で、確かにその通りかもしれないし、現状を考えても、今までの自分の人生が正しかったか正しくなかったかはわからない。ただやっぱり、それでも映画を見ているときは楽しく、幸せだったし、生きる糧でもあったように思う。思い返せば、今まで映画というものは、人生において困難な問題を抱えたときの慰めや救いであり、突破口でもあった。だからたぶん、色々あったとしても、これからも映画は見続けるんだろうなと思いますし、特に今年見た映画は、僕にとってそんな映画たちでもありました。
さて、以下には今年鑑賞した新作全ての順位とコメントを載せておきます。長いけど、10位以下にもベスト級の傑作が並んでいるし、20位台の「ベストに入れるほどじゃないけど好き」といった作品も捨てがたいので一応書きました。ちなみに、50位がだいたい好き嫌いの中間地点という感じです。



<2013年映画ランキング>
1位 ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日
2位 魔法少女まどか☆マギカ[新編]叛逆の物語
3位 悪いやつら
4位 悪の法則
5位 世界にひとつのプレイブック
6位 風立ちぬ
7位 コズモポリス
8位 リアル 完全なる首長竜の日
9位 イノセント・ガーデン
10位 パシフィック・リム
11位 真夏の方程式
12位 ゼロ・グラビティ
13位 セデック・バレ
14位 ラストスタンド
15位 ザ・マスター
16位 Killer Joe
17位 ジャンゴ 繋がれざる者
18位 かぐや姫の物語
19位 愛、アムール
20位 そして父になる
ゼロ・グラビティ』には確かに驚愕させられし、映画という表現の最進化形だと思う。ただ、『トゥモロー・ワールド』ほどには好きになれなかったのでここに置く。『セデック・バレ』は最後までベストテンに入れるか迷った結果「素晴らしい映画だけど、虹の橋を渡るシーンは本当にいらなかったと思う」と自分を納得させ、外すことに。『ラストスタンド』は説明不要。非アメリカ人軍団でこれをやっていると思うと、ハリウッドというところは凄いなと思う。『ザ・マスター』は非常に困惑させられるけど、1つ1つのシーンの力強さは凄い。狂気と変態の黒い笑いに満ちた『Killer Joe』のような作品がDVDスルーとは納得がいかない。『ジャンゴ』はキャラクターの一人一人が最高。『かぐや姫の物語』は歴史に残すべき傑作で、順位は『風立ちぬ』と気分で交換可能って感じです。『愛、アムール』を見て、ハネケ作品で感動するなんてと思いつつ、ハネケはやっぱりハネケだなとも思いました。『そして、父になる』は丁寧でいい映画。



21位 カルト
22位 リトル・ウィッチ・アカデミア
23位 凶悪
24位 クラウド・アトラス
25位 リンカーン
26位 野蛮なやつら/SAVAGES
27位 キャビン
28位 クロニクル
29位 モンスターズ・ユニバーシティ
30位 フライト
『カルト』のバランスを成立させた白石晃士という監督の作品はこれからも見続けていきたい『リトル ウィッチ アカデミア』はアニメミライという企画の中の一本で、吉成曜が監督した数十分の短編アニメ。YOUTUBEで無料公開されていた時期があったので見たのですが、これがとても素晴らしいアニメーションだった。『凶悪』は『悪の法則』がなければベストテンに入れてたかもしれない。『クラウド・アトラス』は革命をテーマに6つの時代を行き来する編集とヒューゴ・ウィービングに恐れ入った。『リンカーン』は静かなる大人の戦いと映像の芳醇さが味わえる作品で「スピルバーグに求めてるのはこういうことじゃない」と思いつつ「でもいい映画だった・・・」と納得してしまいました。『野蛮なやつら』はベニチオ・デル・トロが肉を食ってるシーンが最高だった。あとサルマ・ハエック。『キャビン』はとにかく、エレベーターが降りてきた後が最高すぎる。『クロニクル』は傑作だと思うけど、あの頃の自分に対する居心地の悪さを感じていた気もするし、とはいえそれを包み込めるほどまだ大人にもなれていない感じ。『モンスターズ・ユニバーシティ』は最近のピクサーではとにかくいい作品。『フライト』は予告と違いとてもジャンキーな作品で楽しかったですよ。



31位 パラノーマン ブライスホローの謎
32位 奪命金
33位 ゼロ・ダーク・サーティ
34位 偽りなき者
35位 桜姫
36位 ジャッジ・ドレッド
37位 アウトロー
39位 ジャッキー・コーカン
40位 LOOPER
『パラノーマン』を見て、映画は大人だなと思いました。表現力はとてつもなく凄い。『奪命金』は面白いしちょっと変わった味わいもあるけど、期待していたほどでは。『ゼロ・ダーク・サーティ』の緊張と虚無感は『ハート・ロッカー』と併せて見たい。正義の怖さを突きつける『偽りなき者』の完成度は確かに高いとは思う。『桜姫』のような映画は途絶えないでほしいなぁ。『ジャッジ・ドレッド』はバイオレント且つ視覚的面白味のある映画で楽しい。『アウトロー』は超かっこいいのにスットコドッコイな魅力もあってふしぎ。『ジャッキー・コーガン』でレイ・リオッタが酷い目に遭うシーンは記憶に残る。『LOOPER』は何と言っても拷問シーンの新しさでしょう。



41位 探偵はBARにいる2 ススキノ大交差点
42位 バレット
43位 ワールド・ウォーZ
44位 テッド
45位 アイアンマン3
46位 ザ・レイド
47位 死霊のはらわた
48位 カレ・ブラン
49位 スター・トレック イントゥ・ダークネス
50位 マン・オブ・スティー
探偵はBARにいる2』より1の方が好き。『バレット』がスタローンが超スタローン。『ワールド・ウォーZ』は正直ゾンビ映画としては全然だめだけどある人物が〝滑る″ところが最高すぎる。ここだけはホントに大好き。『テッド』みたいな元ネタありき作品は、ある程度笑えるけどある程度以上は難しいよねって感じ。『ザ・レイド』のアクションはマジ凄いけど話は尻すぼみ。『死霊のはらわた』の気合の入った残酷描写は結構好き。『カレ・ブラン』で良かったのは食事シーンだよね。そりゃそうなんだけど。『スター・トレック』でのベネディクト・カンバーバッチは存在感があってハマってた。『マン・オブ・スティール』もヘンリー・カヴィルは良いんだよ。あとケビン・コスナー



51位 ライジング・ドラゴン
52位 47RONIN
53位 ウルヴァリン:SAMURAI
54位 脳男
55位 奇跡のリンゴ
56位 名探偵コナン 絶海の探偵
57位 オズ はじまりの戦い
58位 永遠の0
ジャッキー・チェンのアクション引退作と言われる『ライジング・ドラゴン』をこの順位に置くのは心苦しいけど、これ以上に評価できもしないかな。『47RONIN』と『ウルヴァリン:SAMURAI』は日本描写がどうこう以前に脚本が残念。『脳男』の生田斗真は凄く良かったけど、他がどうしても馬鹿馬鹿しく見えてしまう。『奇跡のリンゴ』もすべてが悪いわけではないんだけど、これを感動作として見せるのは無理がある。『名探偵コナン 絶海の探偵』は17作中11番目くらいには面白い。『オズ はじまりの戦い』は凄くつまんなかったです。『永遠の0』は、とにかく泣かせようと過剰になる演出、何でもかんでも口に出させる脚本、無駄に回想を挟みまくる構成が悪い。ただ特撮は結構いいので、山崎貴作品の中では悪い方ではないかな。



ワースト3

59位 プラチナデータ
二宮クンが「プラチナデータ」と囁くところ以外は全く面白くなかったです。まぁそれって最初の5分なんだけどね。アクションがどうしようもなくダサイのが最大の欠点かと。


60位 ダイ・ハード/ラスト・デイ
実質ワースト1。本当にひどい。『ダイ・ハード』という題材をよくここまでつまらなくできるよなと逆に感心するほどに酷い。


61位 サイレントヒル: リベレーション2D
原作に当たる「サイレントヒル3」が本当に大好きなゲームだとか、前作が意外な秀作だったとか、そういう思い入れを抜きにしてもこれは相当つまらないのでは。ラストの見せ場なんてホントひどかった。とにかくそういうもろもろの理由で、ガッカリ度で言うとこれが今年1番だった。というわけでワースト1です。



さて、以上でホントに2013年ベストも終わり。ちなみに、旧作に関しては年明けに「下半期見た旧作ベスト」という形で拾っていきたいと思います。そっちには人生ベスト級の傑作についても書きたいと思っているので、来年もよろしくお願いします。それでは良いお年を。