リンゴ爆弾でさようなら

91年生まれ。新作を中心に映画の感想を書きます。旧作の感想はよほど面白かったか、気分が向いたら書きます。

『ザ・タウン』を見た。

オラこんな街イヤだ。


ベン・アフレック監督の二作目。見る前から『ヒート』に似ていると聞いてはいたが、なるほど確かに似ている。どことなく『ダークナイト』にも似ているが、あれは『ヒート』に似ているのであり、そう言ったことからも『ヒート』が後の犯罪映画に与えた影響の強さがうかがえるが、この『ザ・タウン』はただ似ているだけの作品ではない。


完璧な強盗集団のリーダー、ダグは自分達の襲った銀行の女性支店長に恋をしてしまう。そこで彼女と新しい人生を歩むためタウンから抜け出そうとするのだが・・・。というストーリー。


冒頭の銀行襲撃シーンで一気に観客を引き込み、その後もふんだんにアクションを盛り込むというサービス。劇中何回か行われる銃撃戦は『ヒート』のようでありながらただの焼き直しではなく、また一味違う迫力、カッコよさを持っているのだ。狭い路地でのカーチェイスも見事だった。


犯罪映画、その中でも銀行強盗というと、如何にプロとしての手口を見せつけるかという部分が映画の面白みになっていくと思う。冒頭の銀行強盗では素早い行動、計算された時間運び、徹底した証拠隠滅。どんな些細なものからも自分たちの正体を突き止められないように漂白剤を撒くというのは初めて見た。その後に出てくる強盗シーンでは、自分たちが逃走に使用した車の中に理髪店で収集した髪の毛をばらまく。そのようにして捜査の手から逃れようとするなど、面白いシーンがいくつかあり、それがまたこの映画を新しい銀行強盗映画の代表作に押し上げていたように思う。


また、タイトルでもある「街(ボストンのチャールズタウン)」が、まるで一人の登場人物であるかのように印象的である。狭く圧迫するような路地、街並み。かと思うと広がりのある美しい風景も持ち合わせている。この街のとらえ方はベン・アフレックがボストン出身であるということに深く関係していると思われる。それにより街自体が息をしているような、そんな表現が可能になったのではないか。


アクションだけでなくストーリーもそこそこ優れていて、まあこれも『ヒート』に似ていると言えば似ている部分もあるのだけど、犯罪の街で生活する人々にある<業>とでもいうようなものにとらわれて逃げ出せなくなった男の物語をうまく描き出していた。どっぷり犯罪に使ってしまった人間が、自分だけ抜け出そうというのはそう簡単にはできなくて、彼らの周囲の人間たちが泥沼から放してくれないのですよね。ベン・アフレックジェレミー・レナーレベッカ・ホールの三人が出会うシーンや、街から抜け出そうとするものの、街の元締めの男に静かに脅されるシーンなどはとてもよかった。

ちなみにこの映画で元締めを演じていたピート・ポスルスウェイトは今年の1月に急逝してしまいました。遺作ではないらしいのですが、今作では素晴らしくいやらしい、恐ろしい役を演じていましたね。役者もとても良かったと思います。



しかし、納得できないこともあってですね。まあそれはまさにラストなので書けませんけど、一言で言うなら自分にあまいぞ!ということである。



とはいえ、しっかり泣かせる展開もあったし(あのデブね)ほんと面白かったと思います。もう公開終了間際だと思いますけどぜひ劇場で見てほしいですね。


ヒート プレミアム・エディション [DVD]

ヒート プレミアム・エディション [DVD]