『ヒアアフター』を見た。
クリント・イーストウッドの新作を観てきました。今回は超自然的な現象についての物語・・・ではなくやっぱり人と人との物語なんですね。
大津波に巻き込まれたフランス人女性マリー、双子の兄をなくしたロンドンの少年マーカス、霊と交信できるアメリカの男ジョージ、この三人の物語。
映画は津波のシーンから始まる。この映画で一番迫力のあるシーンであり、ここは本当に地獄のような恐ろしいシーンである。津波の怖さを観客に存分に知らしめるのだ。波に呑まれてるのもそうだけど、後ろから車がどんぶらこ〜と流れてきて、それにガンっ。地獄とはこのことか。これはホントすごいシーンだった。
因みにこのシーン、マリーが波に呑まれる様子をとらえるためイーストウッド自身も水の中に飛び込んだという。大丈夫ですか・・・
それ以降の物語は特に派手な部分もなく、こじんまりとした話という感じがしたが、いいシーンがいくつかあった。
例えばジョージは霊と交信できることにより普通の生活を送れないと思っている。とある料理教室で出会った女性と、これから恋に発展しそうな関係になるのだが自身の能力のせいでもう会えなくなってしまうのだ。
おそらく彼はこのようにして周囲の人間を失っていったのだろう。実際彼の周りには兄しかおらず、友人などは映画に一切出てこない。
ジョージは特殊な能力故に普通の生活を送れなくなったが、マリーとマーカスもそうなってしまう。
マリーは津波に呑まれた際にあの世みたいなものを垣間見る。それに執着し始めた彼女に対し周囲はだんだん離れていく。キャリアウーマンであり、順調に見えた彼女の人生は死を意識したことで変わり始める。
マーカスは双子の兄が死んだこと、母親が薬中であり、療養のため里親に引き取られたこととで望んでいた「普通の生活」ができなくなってしまう。
彼らが最終的にたどり着くのは物語の途中であり、結論は見せない。この映画は結論まで導かないのだ。例えば死後の世界にしたって詳しい事はだれにもわからない。
何か大切なものを失い、そしてそれぞれがとらわれていた何かから抜け出し、新たなる道へ踏み出そうとすること、「人の死後ばかり見ていた」男が目に見える世界で新しいものを発見したこと、ぼんやりした水墨画のような世界から色鮮やかな世界へ。そういうところで映画は終わる。
いくつか無理のある部分もあったが、イーストウッドが自身の新たなる部分を開拓しようとしたような、ある意味意欲作といえるものだったと思う。単なるオカルト的な映画ではなく、しっかりと人間のドラマになってる映画だった。
<その他面白かったこと>
・目隠しプレイ。
・『サウスパーク』のエピソードに出てきたような霊能力者インチキ大会。
・ディケンズが好き、というのはどういう意味だろう。「ディケンズの夢」の絵にあったように、頭の中に無数の人間が住んでいるということからくる共感なのか。
・朗読会の時のマット・デイモンの嬉しそうな顔!
・というかマット・デイモンの演技は抑え目だけどかなり良かったと思う。
- 作者: ディケンズ,小池滋,石塚裕子
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1986/04/16
- メディア: 文庫
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