リンゴ爆弾でさようなら

91年生まれ。新作を中心に映画の感想を書きます。旧作の感想はよほど面白かったか、気分が向いたら書きます。

『アンチクライスト』を見た。

カオスな世界でこんにちは


なんとも感想を書きにくい・・・とにかく問題作というか見た後かなりげんなりする映画でしたよ。

映画はプロローグ、1〜4章、エピローグというように全6章からなっているのですが、章を追うごとにどんどん悲惨な物語になっていきます。


夫婦が性交中に子供を失ったことから始まるこの映画。肉欲はキリスト教では良くないことだったと思うのですが、とにかく最初はセックス三昧。そしてそのうちに妻は「性」に対する嫌悪を覚える。そしてそれがとんでもなく暴力的な行為で・・・


いや、ホントに暴力と性描写はエグイですよ。


なんとも説明しがたいですね、ホント。キリスト教的な解釈はぼくにはよくわからないのですが、ずーっと不穏な空気が流れている本作はエデンと呼ばれる森の中でおもにストーリーが進んでいきます。
精神がまいってしまった妻を治すため、夫がセラピーのために選んだ場所がそのエデンなのですが、なんとこの夫のやることなすこと裏目にでてしまう。自分のセラピストとしての力を過信してか。
しかし、その夫にはキーとなる<悲嘆><苦痛><絶望>全てが見えていた。でも目をそらしていたのでは?最後にエデンにある果実を食べるのも夫。よくよく考えると夫は自分を押しつけるだけだったように思う。


そこで夫は結局人間の手の及ばない、すべてをさらけ出している自然の中で人間の本能をむき出しにしてしまうしかなかった。この映画の中で「自然は悪魔の教会」という言葉が出てきますが、それはこの世界の本質は悪魔的なものなのだよということなのだろうか。そもそも悪魔的とは何か。世界や人間の本質はもともとそうなのであった、それ以降に悪魔だとか神を人間は作り出したのではないだろうか。それがこの『アンチクライスト』というタイトルなのだろうか。もともと神というものは幻想でしかないのだと、そういうことなのだろうか。ではなぜタイトルの最後の「T」は「♀」になっているのだろう。
やはり女性とか男性、肉欲という部分もこの映画ではなにか大きな役割を担っているように思う。それこそ人間の本能を解放させるものだということか。


ラストのあの女性たちいったい何なのか、あのなかで一人はっきりと映る夫こそアンチクライストの現実の世界を認識したということなのか。


というように、とにかく分かりづらい映画でした。森の中で起こる様々な出来事がいやーな感じで本当に落ち込みます。


それと印象的なのは、最初から最後まで「落ちていく」というイメージが多用されているということ。雪、水滴、ドングリ、鳥、子供・・・これらが意味しているのはやはり死というものな気がする。そこには暴力もまざっていますが、生まれては死んでいく自然というものを見せつけてきている様に思いました。


まあいろいろ書いてもよくわからない、難度が見てみると違う発見もあるかもしれませんが、何回も見てられないような映画で、キツネ君が言う「カオスが支配する」という言葉の通り、カオスな映画でした。

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