『メランコリア』を見た。
世界の終わりは そこで待ってると
ラース・フォン・トリアー監督最新作です。監督自身の鬱体験から作られた映画だそうですね。僕は『アンチクライスト』はまあまあ好きでしたが、『ダンサー・イン・ザ・ダーク』は好きじゃなかったので、期待と不安半々くらいで見に行きましたよ。
ジャスティンは姉のクレアとその夫ジョンが所有する豪邸で盛大な結婚披露宴をあげるも、不安や虚しさ、また周囲にろくな人間もいないことから奇怪な行動を連発してしまい台無しにしてしまう。それから7週後、仕事も夫も失った彼女は憔悴しきり、クレアの家で世話になっていた。そのころ、ジョンと息子のレオは地球に接近している惑星メランコリアについて観測していた。この惑星は計算によるとぶつかることなく地球を通り過ぎるらしいが・・・と言うストーリー。
冒頭、ワーグナーの音楽がかかる中、本編のダイジェストといえるイメージ映像の数々が映し出されるのですが、これがホントに幻想的で美しく、最高なんですね。絵画と言うか、これはもう一つのアートと言っていいでしょう。至福の映像だと思いました。世界の終わりをスーパースローで捉えたこの映像は本当に素晴らしいけど本編ではこれ以上の事は何も起こりません。
というかこれ以降、つまり本編はもう全然だめでした。まずカメラがブレブレで酔ってしょうがなかった。気分悪くなりましたよ。とにかくこのせいでもう全然映画に集中できない。これは個人的な感じ方なので仕方ないんですけどね。オエッ。
まあそれを抜きにしても面白くはなかった。まずジャスティンの披露宴を描いた[第1部]ですが、ちょっと退屈でしたね。ここで描かれるジャスティンの姿は監督自身の体験が元なのか知りませんが、確かにリアリティはあるのかもしれません。周りが何をしようが自分の中にある憂鬱が消えないんみたいなんで、何かがまとわりついて動けない感じと言うのも「ほぉ、そういうかんじですか」とは思いました。でも、ちょっと長すぎですね。もう少しコンパクトにできんものかと思いました。
それで[第2部]なんですが、これが僕はすごい嫌でした。地球が滅亡しそうなのでクレアは取り乱すのですが、ジャスティンは「なんかぎゃあぎゃあさわいでバカみたいだなあ、私みたいに受け入れてしまえばいいじゃない」みたいな感じなんですよ。しかもこのジャスティンは監督自身のようなものだと言うから何か「君たちは愚かだなあ」なんて言われたような気がしてねぇ。うーん。
世界の滅亡が救いというのなら、確かにそれはそうかもしれません。僕も世界の滅亡を願うことはよくありますからね。
で、おそらくこの2部目はジャスティンの妄想でしょう。もしくは監督の願望ですね。馬が出れない隔離された世界であると言う事や、豆の数を当てたことなど色々理由はあります。現実のうっとうしさがつまった[第1部]と、その救いである[第2部]、それは良いんですが、一言でいえば「お前の病気にゃ付き合いきれんよ」と言う感じなのかなぁ。
なんでしょう。世界観としてゆっくり静かに世界の破滅を受け入れる、みたいなのはすごく好きなんですけどね、例えば黒沢清の映画とか。今回は全然ノレませんでした一人で世の中分かった気になって達観している感じがいやなのかもしれません。もしくはそれもこれもクソ揺れやがるカメラが原因かもしれません。
ただ一つ言えるのは冒頭の映像だけはホントに最高でしたよ。あれだけ見ればストーリーもだいたい理解できるしあそこだけで十分です。僕にとって本編は8分間ですむ内容なのに伸ばしに伸ばしただけの映画にしか思えませんでした。あとキルスティン・ダンストのおっぱい。そんな感じです。
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