リンゴ爆弾でさようなら

91年生まれ。新作を中心に映画の感想を書きます。旧作の感想はよほど面白かったか、気分が向いたら書きます。

『ブルーバレンタイン』を見た。

鮮やかな終結


もう一カ月ほど前に見ていたのだけれど感想を書く機会を逃してこんなにのばしてしまった。なんで書かなかったかというと個人的に恋愛経験みたいなものが乏しくて・・・まあそんなこんなでこの映画に対して何と言っていいのかという事を勝手に悩んでいたのですね。はい。
しかし、この映画そんな男には意味がない映画かというとそうではなくて、そういう人に対してはこれからくるかもしれない人生に対して予習しておこうというものなのである。つまりは恋愛が奇麗なままで永遠のものになるというような、現実からは離れている夢物語ではなく、実際それがどうなっていくのかという一つの現実をみせてくるのだ。映画に込められたものというのは、たとえ自分の経験してないものでも良くできたものなら心に迫るのだと思う。

というわけでざっと感想を書くことにする。



この映画が見る側の心をえぐるのはその構成である。映像もそうだが行動なども対比的に表される。もちろんストーリーもだ。恋愛の行きつく果て、結婚のその先にある現実を、恋愛の最も美しく盛り上がるときと交差して描くことでかなりの破壊力を持ってくるのだ。それだけでも映画になりえるほど美しい物語で描かれる二人の結婚までの過程、しかし見てる側はそれが数年後には破綻してしまうとわかっているのだ。それを見ていると様々な美しい記憶がより切なくなる。とくにラストの結婚式と離婚の決定打をカットバックで見せるはいじわるすぎですよ。花火も。



さて、この映画でよく議論されるのは男と女どちらが悪いかという点だがそれについてはどちらも悪いとしか言いようがない気がする。それにここをこうすればいいんだよ、という『レボリューショナリー・ロード』みたいな知恵を授けてくれるわけでもないので、そういった事について、こうすればいい、だのこっちが悪いという事あれこれを個人的な視点で議論したくなるのはわかる。それもいいけど、この映画を見て僕が一番強く思ったのはそういうところではなかった。
この二人の結婚生活は失敗だったか。確かにそうかもしれないがそれ自体なかった方が良かったのかといえば、それはどうだろう。
僕がこの映画から受け取ったこと、それはこの映画の中では確かに結局二人は別れてしまったが、二人の間には確かに愛は存在していたしそれ自体は否定できないほど素晴らしいものだったのだ、ということである。まあ実際に失敗するとそういうように思うのは難しいのかもしれないが、恋愛とはそういうものなのだと言っているように思ったのだ。この映画では確かに終わってしまったが、それを見てただ恐れたり避けたりするのは違うのだよ、と最後に言っているような気がした。だってあんなに花火が美しいじゃないか。

Blue Valentine

Blue Valentine