リンゴ爆弾でさようなら

91年生まれ。新作を中心に映画の感想を書きます。旧作の感想はよほど面白かったか、気分が向いたら書きます。

『ライジング・ドラゴン』を見た。

ジャッキープレゼンツ打ち上げ花火


ジャッキー・チェン主演最新作。久々のアクション大作ですね。今回ジャッキーが演じるのは『サンダーアーム/龍兄虎弟』『プロジェクト・イーグル』と同じ「アジアの鷹」と呼ばれるトレジャーハンター。ジャッキーは主演の他に監督制作脚本なども務めています。


中国清王朝時代。英仏軍の侵攻によって略奪され、その後世界中に散らばった秘宝、十二生肖。トレジャーハンターのJC(ジャッキー・チェン)率いるチームは、アンティークディラーの依頼を受け、12ある像のうち、いまだ行方不明の5つの像を捜索する。しかし、捜索中に盗品文化財を祖国に戻す活動をしている女学生・ココ(ヤオ・シントン)と出会い・・・

僕はジャッキー・チェンの大ファンというわけではなく、作品も10本程度しか見ていません。ただ、見た作品はどれも面白いなぁと思えるものばかりで、もちろん好きは好きなんですよ。で、そのジャッキーが本作を最後にアクション超大作は引退!なんてニュースを聞けば、そりゃあ劇場へ駆けつけないわけにはいかないなぁと思いますよね。というわけで地元ではだいぶ遅れての公開となりましたが、見てきましたよ。



それでこの『ライジング・ドラゴン』ですが、やっぱり面白かったですね。ジャッキーらしい工夫の凝らされたアクション、命がけスタント、明るくユーモラスな作風などなど、「これが見たかったんだよ!」というものがしっかり入っていたと思います。
冒頭、どこかにある何かしらの施設に潜入していたJCが、全身ローラーブレードを装着し爆走するアクションから本作は始まります。ここのアクションはユニークで良かったのですが、これが一体何の施設なのか、なぜ潜入しているのかなどは全然分からない。
またジャッキーチーム紅一点の、美しいおみ足の女性がその美しく長い脚を駆使して守衛室のカギを奪うシーンもあるのですが、それに何の意味があったのかも全然描かれない。大雑把ですねー。まぁカッコいいアクションや「この女性は足技を使う女性なんだ」という事さえ印象付けられれば問題ないという判断で、実際それで問題はないのですが、ちょっと笑っちゃいました。



その後は、豪邸への侵入、迷路のような庭でドーベルマン相手に繰り広げるドタバタ、間抜けな海賊のいる島でのコント的やりとり等、色々な場面でいろいろなアクションが繰り広げられます。ただこのあたりは「面白いと言えば面白いのだけど・・・」と、僕は何とも歯切れの悪い感想を抱きながら見ていました。格闘や小道具を使ったアクションが僕は好きなので、アドベンチャー的展開にはそこまで盛り上がらない。「アジアの鷹」シリーズっぽいと言えばそうなのかもしれませんけど。
が、しかし。最高の見せ場は終盤に待っていました。敵の工場で繰り広げるアクションは「これぞ!」という感じ。小道具や設備など、空間と物体を効果的にを使ったアクションの連続が素晴らしい。特にライバルのハゲタカというトレジャーハンターとの、「ソファーから離れた方が負け」という限定された中での細かい動作で魅せる戦いは発想が天才的としか言いようがない。もうこの部分が見られただけで劇場まで見に行った価値があるというもんですよ。今流行りのゴチャゴチャとカットを割るというようなことをしないのも良いですよね。
また、冒頭の部分でも書いた美しい脚を持つ女性がここでは足技を駆使した格闘術を見せます。これがまた大変素晴らしい。美しい女性同士の足技格闘に完全ノックアウト。調べてみたらこの女優さんはジャン・ランシンという方で、テコンドーの達人だそうな。納得。今後も注目です。
最後の見せ場となるスカイダイビング→ゴロゴロの流れには、なんかもう感服しました。この年になってもここまでやるなんて・・・。確かにここまでやられたら、これで終わりと言われても納得するしかない。ジャッキー映画の中でも傑作と呼べる作品ではないと思いますが、この映画は、観客を楽しませるためのサービスを惜しまなかった男の、最後の打ち上げ花火みたいな映画だったんだなと思いました。最後の最後に本当の奥さんを登場さあたりにも打ち上げ感があります。



アクションは存分に楽しんだのですが、物語にはちょっと納得できない部分もあります。まず文化財のオークションや祖国返還等といった現実にある問題を盛り込むのは、このライトな作風の映画には合ってないのでは?と思いました。JCが贋作を作って売りさばくような悪党の一味の手先、という設定もちょっといただけない。終盤で改心してるように見えるとはいえ、もうちょっと最初からすんなり応援できる役の方がいいかと。
それと一番の問題はヒロインですよ。国宝を守る活動に熱心な学生ココ。こいつが非常にムカツク。だってアクション映画でアクションもできないのに偉そうで、主人公に説教かましときながらピンチになったら助けてもらう女って、どう考えてもむかつくでしょ。
しかもこの女、昔国宝を持って行ったという事でその子孫のイギリス人女性に罵声を浴びせ、物を勝手に持ち帰ろうとするんですよ。これはちょっと納得できない。確かに、他国に持ち去られた国宝は返還されるべきだとは思います。しかしそれは、然るべき手順を踏んで、です。それが難しい状況という事もあるのでしょうが、ココの行動は自分の信じる正義のためなら何をしても良いのだ、というような怖さを感じさせる。だいたい、何百年も前の祖先の略奪行為を非難されたり、恥じろ!とか謝れ!と言われるって、そんな理不尽なことはないですよ。そんなわけで、この女には1ミリも共感できませんでした。



というわけで、物語の展開やキャラクターに難がある部分はありましたが、基本アクションの連続が楽しい映画でした。アクションは楽しいし、ジャッキーのチームは良いキャラばっかりで、基本的には大満足の作品です。僕はこの映画がジャッキーを映画館で見るのは初体験だったのですが、ちゃんとジャッキーのアクションを劇場で見れてよかったと心底思思います。これで終わりとは寂しいですが、見られなくなるわけではないので、新作を楽しみに待っていたいと思います。