リンゴ爆弾でさようなら

91年生まれ。新作を中心に映画の感想を書きます。旧作の感想はよほど面白かったか、気分が向いたら書きます。

『コクリコ坂から』を見た。

おちこんだりもしただろうけど、吾朗はげんきでした。

宮崎吾朗、試される第2作目・・・というわで今後のジブリというものを含めて重要な作品である本作。『ゲド戦記』では評判がよろしくなかった吾朗監督だが・・・。




さて、結論から言うと、思ってたより良かった。まずは演出の良さ、これが際立っていたと思う。登場人物の心情を台詞で言ってしまうのではなく、仕草などちょっとしたことで見せるのだ。例えば海と風間君の心がある理由から離れて行ってしまうあたりの、一連のシークエンスがそうだ。大掃除という共同作業の中で、海のことを風間君がそれとなく避け、二人がすれ違って行くところをふとした動作で見せていて、そこがとてもよかったのですよ。
それと料理に関するシーンも僕は良かったと思います。冒頭のパッパッと朝食を用意するシーンも丁寧で良かったし、先にも書いた「すれ違い」の後にある食事シーン(ちょっと違うけど)はそれまで見せてきたものの合わせ技で、これも良い演出でしたよ。



しかし、全体でいうとどうも好きになれなかった。というのも後半に行くにつれ話がどうも散漫になって言ってる気がするのだ。
この物語はカルチュラタン(この描写は魅力的に見えて良かった)という文化部部室の取り壊し反対を軸にして最初は進んでいき、そこに淡い恋愛物語が絡んでいるのだが中盤以降そこからさらに「父親」の話、戦争の影などが大きく顔を出してくる。そこからどうもごちゃっとした印象になっているように思うのだ。とくにラスト付近の「同じような話を2回やってる」という事態には「あれまとめた方がよくないか?」とどうしても思ってしまう。あの辺のグダグダな感じは良くなかったと思う。
兄妹がどうとかいう話も、結局それじゃあ今までの話どうでもよかったよな、という感じです。別にその障壁はあったままでいいじゃない。なぜそんな安易な解決をさせてハッピーエンドに?と思ったね。
あとカルチェラタンの存続についても最後それでいいの?と思ってしまう。それじゃ前と別物じゃんとか。結局そういう事かいって。



ちなみにカルチェラタンだが、一つ気になったのはあれがどうしても「スタジオジブリ」というものの象徴に見えた事だ。生まれ変わるカルチェラタン、さらに「古い物を壊すという事は過去の記憶を消すという事じゃないのか」というセリフなど併せて考えると、『アリエッティ』→本作ときてジブリが過去のものも大切にしながらも新しい方向へこれからはジブリが進んでいく事の象徴なのかな、もしくは消えないように(もともといた人が)尽力しているのかなと思うのであった。
まあそういう方向に進んでいくのかなと思うとそれも時代の流れか・・・ということでそれで傑作を撮ってくれるなら個人的にはありだけどね。



と、今後のジブリという余計な読み取りもしちゃう本作ではあるが、なかなか良い作品ではある。先程書いたように後半は問題があるようにも思いますがそれでもノスタルジーとか初々しい感情を描くと言う事ではできてると思うので見て損はないと思います。



<追記・ネタバレ>
ただね、見てて結局思ったのは「クソリア充が!」という事なんすよ。面白い部分もあるとはいえ何故か気に食わないというのは、そこが一番の原因なのかもしれない。所謂「リア充死ね爆発しろ」ですな。イケメンがふんたらであーよかったねー。
だから関係がうまくいかなくなっている中盤までは好きなのかも。そのへんまでは「せつねぇなー」と思ってて良かったのに、最後は「なんだよおまえら結局何もかもOKで幸せ者かよ!」と思ったり「あんな学生生活送りたかった・・・」と落ち込んだりするのですよ。おちこんだりもしたし、私はげんきでありません・・・。
つまり、そもそも高校時代に楽しい青春を送れず一人で映画をみて心のスキマを埋めていた僕には最初から受け入れられない映画だったのかもしれない。その気持ちが分かる人にはあまりお勧めできないかも。あーあんな女の子と付き合いてー