リンゴ爆弾でさようなら

91年生まれ。新作を中心に映画の感想を書きます。旧作の感想はよほど面白かったか、気分が向いたら書きます。

『名探偵コナン 絶海の探偵』を見た。

コナンが泣いた日
毎年恒例コナン映画。17作目となる本作はイージス艦が舞台となっており、海上自衛隊の協力を得ているそうな。監督はこれまで多くのコナン映画を監督していた山本泰一郎から、静野孔文へ変更。ゲスト声優として柴崎コウが重要な役どころで出演。


海上自衛隊によるイージス艦「ほたか」の体験航海に参加することとなったコナン一行。艦は順調にスケジュールをこなしていたが、訓練終了直前、未確認物体が艦体に接近する。航海長の機転により訓練の一環とされ接近物も危険なものではなかったため、大きな混乱はなかったが、コナン(高山みなみ)は疑問を抱く。その後、コナンは訓練中に親から離れ1人でいた少年に声をかける。勇気(三田ゆう子)というその少年と父親との関係に疑問を持つコナン。さらにイージス艦には乗船していないはずの女性自衛官(柴崎コウ)と遭遇。彼女の調査を開始しようとするコナン。知らずに付いてくる蘭(山崎和佳奈)であったが、自衛官の左腕のみが発見された場面に遭遇し・・・

結論から言うと、近年のコナン作品の中では面白い方だったかと思います。序盤にあるイージス艦の公開訓練シーンは臨場感がありましたし、前半に伏線をばらまき、後半一つ一つ回収していく脚本も良かったとは思います。まぁ、伏線がわかりやすすぎるのでちょっと笑えはしますが。
海上自衛隊の協力があるのに海上自衛隊皆がいい人というわけではないという描き方も面白いと思います。もちろん批判的なわけではないですよ。でも、協力を得ているのにこういう感じとは、懐が広いのかな。ただの海自万歳ではなくてよかった。
今回のコナンは捜査、捜索の部分をきっちり描きたかったんだろうなあという印象を受けます。変わったトリックがあるわけではありませんが(というか真相自体はたいしたことない)、なぜこんな奇妙なことが起こったのかということを、丁寧に解いていく。そしてその過程で警察、個人、海自などが協力し合い、国の危機に立ち向かうということになるというのもポイント。本作のテーマは、勇気を持つこと、強い心で立ち向かう事、という感じのものです。ミステリがどうとか、犯人がどうとかではなく、個人の小さな力の大切さ、そしてそれが集結することでより大きなものを守れるという事を本作では描いていました。そういう部分はちゃんと描けていたと思うので、まあ、悪くないなとは思います。



さて、ここからは文句です。テーマはいいと思うのですが、この捜索がメインな話のせいで、中盤から映画的な面白さがなくなり、地味な話になっていたように僕は思いました。何かあると説明、そして説明、また説明と、そんな感じです。なので、画的に盛り上がらないんですよ。話が込み合ってるので仕方ないのかもしれませんが、それならせめて緊迫感のあるものにしてほしいのに、あんまりそこも感じられなかったですね。っていうか国の危機だってのに皆呑気すぎるんですよ。そういう話がメインじゃないと言われれば、その通りではあるんですけど。
和葉の扱いも非常に不満です。探偵団の中で灰原(と博士)だけイージス艦から離れた場所にいるのですが、彼女は途中から平次&和葉と一緒に行動するんですね。そこで灰原も博士も平次も普通にコナンのことを「工藤」と呼んだり灰原がスーパー小学生であることを隠したりします。和葉ってそういうこと知らないんじゃなかったっけ?とちょっと混乱しました。少なくともあんな密着した状態で電話越しにコナンに向かって「工藤」と平次が話しかけるのはないと思います。
そしてラスト、一番の盛り上げポイントになる、ある“捜索”ですが、これがちょっと、僕は良くないなと思いました。
ネタバレしますが、終盤、スパイとの戦いで蘭が海に放り出されます。広い海の中で、蘭を見つけるのはまず無理な状況になるわけですね。ただ、見ている側は100パーセント助かるとわかっているじゃないですか。だからここをサスペンスとして見せるには、そのための仕掛けが必要です。ただ、本作はそこが弱い。わかりやすく撒かれた伏線があるので、登場人物より先に「いや、○○すれば?」と思ってしまう。ここは観客に「どう助けるんだろう」と思わせなければいけないと思います。あとまぁ、正直『沈黙の15分』と人物配置変えたような話ってだけな気もしますしね。あちらよりは全然マシだけど。
またコナン側に全くアクションさせないというのも僕は好きじゃなかったなあ。せっかく映画なんだから派手に見せてほしいもんです。ただじっと座り込んで泣きながら叫ぶだけっていうのは、ちょっと地味すぎないでしょうか。コナンは泣かない、という掟を破るような挑戦をするなら、その辺もっとうまく見せないと。例えば『天国へのカウントダウン』や『ベイカー街の亡霊』では伏線をしっかり貼り、絶望的な状況に落とした後、頭脳を使い、派手なアクションを見せることでピンチを解決していましたよね。僕はそういうのが映画では見たいかなと。



と、文句もありますがコナン映画の中では異色作と言える作品なので感じですし、これはこれでいいのかもしれません。これからもシリーズは作られていくものですし(来年はスカイツリーがでるのかな)、こういうのが一つや二つあってもね。あ、柴崎コウの演技は良かったと思います。多少発音が微妙な部分もありましたが、クレジット見て気づいたくらいなのでね。

では、来年にも期待ということで。

ワンモアタイム

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