『未来を生きる君たちへ』を見た。
アカデミー賞外国語映画賞を受賞したデンマークの映画。日本タイトルはこんな長いですが、原題は『HEVNEN』日本語訳で『復讐』だそうです。
原題の通り本作は復讐の物語。その行為はデンマークの身近な地域から遠い異国の武装集団におまで及ぶ。何もかも全く違う環境だが、そこで暴力が行われているという事は同じだ。そしてその暴力に対し、暴力を返すという事、その連鎖は一体どこまで続くのかという事を描いている。
暴力をふるわれた時、私たちは暴力で返すことを良しとはしない。しかしそれは頭でわかっている事であり、理想だ。実際ははらわた煮えくり返って復讐してしまうこともある。
いじめられっ子のエリアスは、母親を亡くし転校してきたクリスチャンと仲良くなり行動を共にするようになる。ある日クリスチャンはエリアスをいじめている奴を殴りナイフで脅す。「やらなければやられる」と、言い。
エリアスの父アントンはそれに反対する。子供の目の前で乱暴者から理不尽に殴られても子供たちには「暴力で対抗する事は愚かだ。あいつは弱いから暴力をふるうんだ」と言う。アントンは医師としてアフリカで活動しているが、そこで暴力の連続を見てきたために暴力では何も解決しないことを知っている。
しかし、子供たちはそれで納得しない。クリスチャンはエリアスとともに父を殴った男に爆弾で報復しようとする。一方、アフリカに戻ったアントンの元に妊婦の腹を切り裂くという事件を起こしている武装集団のボス、ビッグマンが大けがをして運ばれてくる。この男は極悪非道な人殺しだ。普段アントンが接している人々皆の敵だ。このまま見捨てることもできる。一体彼はどうすべきなのか。
この映画は単純に復讐はいけません、と言ってしまうものではない。暴力で対抗したクリスチャンは結果としていじめを止めたわけだし、その後いじめっ子と仲良くなり学校でなめられることもない。対照的にエリアスにはやはり友達が出来ていないようなのだ。
アントンに訪れる試練、ビッグマンを巡るエピソードも見ている側を揺さぶる。単純なきれいごとに終わらせず、暴力・復讐の無力感、勝てない人間の挫折感、そして暴力による安堵感までも表現し、この連鎖する問題が簡単に解決することのないものだということを見せる。
ただ、復讐を扱った映画ではもっとどうしようもなくなってしまう状況で呆然とするしかなくなるみたいな映画はあって、そっちの方が僕の心には響いたけどね・・・パク・チャヌクの三部作とか。まあ伝えたいことが邦題で言っているような子供の未来とかいう部分だったりもしてちょっと違うんですがね。
というわけで、倫理的に難しい問題を扱う重い映画であるが、最後には希望の光も見える映画でした。このタイトルはちょっと語りすぎで嫌だけど、映画を見た後ではなるほど本作に合ったものであると思う。いやだけどね。
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