リンゴ爆弾でさようなら

91年生まれ。新作を中心に映画の感想を書きます。旧作の感想はよほど面白かったか、気分が向いたら書きます。

『ツリー・オブ・ライフ』を見た。

2001年、親子の旅。

テレンス・マリック監督最新作、ブラットピット主演。カンヌ国際映画祭で最高賞のパルムドールを受賞した作品なのですが・・・。



なのですが、まあ正直眠かった。つまらん。ただ、そういって終わらせるのもあれなんで一応それなりに感想を残しておきます。


オープニングからヨブ記の引用と、なんだかボヤーンとした光のイメージが出てきます(恐れくそれは命の灯とでもいうようなものなのでしょうが)。そこからアメリカのどこかの夫婦の元へ2番目の息子が死んだと言う手紙が届くところからストーリーは始まる。

そのことをきっかけに母親は神へ問いかけをするのですが、ここから怒涛のメタファーというかイメージ映像の連続。その映像というのが、まずビックバンとか地球・生命の誕生なんですよね。原始生命が誕生した後は恐竜まで出てきて無駄に壮大なんですよね。
しかもそこに母親が囁くような声で神の事だとかについて言っていて、なんとなくありがたいお言葉のような気がしてきます。この映像が長々と続くのですね。映像自体は凄いんですよ。ただやっぱりあまりに突然のこと且つぶっ飛びすぎているので理解に苦しみました。ちなみに神とはいうものの、恐竜が出てくるという事で天地創造なるものとは違うようではあります。


そして宇宙の誕生が終わると例の夫婦の元に子供が生まれます。そして予告編でも見られるように子と親と子供の確執というような話になるんですね。ここからはちゃんと物語が見えてくるのですが、やはりどこか現実離れしたような美しい映像と共に語られていきます。宇宙の誕生と同じく、生命の誕生や活動それ自体もまた神秘的なものだと言う事でしょうか。


さて、映画冒頭で「世俗に生きるか、神にゆだねて生きるか」という話が出てきますが、この2つはそのまま父親と母親の事をあらわしている。父親は成功することを良しとし、「力がすべてだ」と言い厳しく育てますが、それに息子は反発します。そして反抗期へ。しかしいくならんでもカエルにあんなことするのは酷いよ・・・。
母親に対しても反発することはありますが基本的にその愛に包まれている感じ。ただ、たまにどことなく性的なものを感じさせるカットもありました。本作はエディプス・コンプレックスの話のようでもありますが、そんな単純なものでもない様子。どうやら母親と父親の価値観が大人になっても自分の中で対立しているという事みたいです。世俗と神、そういう問題提起なのだろうか。


そしてまあ少年時代になんだかんだあるんですが、そこはとりあえずすっとばし、現代になるとショーン・ペンが岩場でふらふらしたりエレベーターに乗ったら天国、等と心象風景だらけです。ここでショーン・ペンは家族と再会します。少年の頃とでもいうのか、皆で仲良く天国を歩いている映像になるんですね。


このように本作は父親と息子の話でありながら地球誕生まで話を拡大させて生命の尊さ、神秘、素晴らしさを語ったり天国までいってみたりと大変変わった映画であり、ぼくとしてはトンデモ映画という気もしますが、テーマ自体は普遍的なように思えます。


思春期や反抗期と言うもの、それに限らず思春期の風景、思いなどは大人になっても簡単にぬぐえるものではない。それは現在の自分を基礎づけているものであり、厳しい父親も、母親の愛も、弟との記憶も、近所の人間たちも全てが自分自身である。
ショーン・ペンはそういった過去の全てをひっくるめて思い出し(おそらくは弟の命日だったのだろう)束の間にその中へ浸っていく。その中で神の存在に触れたりするわけなんです。僕はこの部分に乗れなかったので、どうも苦手でした。


とはいえやはり映像はすごくきれいで、それを眺めてるだけでマジックにかかるような美しさがあります。僕としては微妙でしたが、人によって何かしら感じることがある映画でしょうから是非見てほしい映画です。


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