リンゴ爆弾でさようなら

91年生まれ。新作を中心に映画の感想を書きます。旧作の感想はよほど面白かったか、気分が向いたら書きます。

最近見た旧作の感想その6 〜上半期ベスト編〜

上半期に見た旧作のベストです。ただベストと言っても特に順位などはなく、今年初めから6月の終りまでに見た映画の中で印象深かった作品をあいうえお順に羅列し、ちょこっと感想を書いていくだけです。



アフター・アワーズ(1985)

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スコセッシ作品の特徴の一つとして、妄想や狂気の淵にとらわれた「ビョーキ」な人々が出てくる、というのがあると思います。パラノイア作家とでも言いましょうか。本作もまさにそんな作品で、悪夢のような一夜にただただ混乱する男を描いています。過去作の中で1番近いのは『救命士』でしょうかね。あちらのハイテンションに比べれば、こっちはだいぶオフビートな感じがしますが。スコセッシといえば、初期の短編「The Big Shave」という、ただただ血まみれになりながら髭を剃るという映画も見ましたが、こちらも印象深いものでした。



『殺人狂時代』(1967)

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岡本喜八監督作品です。殺人を笑いにしたブラックコメディか、ハードボイルドか、シュールか、何ともカテゴライズの難しい作品です。個性豊かすぎる殺し屋の皆さんや、マッドサイエンティスト天本英世もいいけど、やっぱり仲代達矢のとぼけたような、しかしラストには超かっこいい姿が最高。冒頭の殺人アニメーションも楽しく、精神病院の美術や映像は遊びまくりな感じ。「顔が広い」グワーッ!



『実録・私設銀座警察』(1973)

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佐藤純彌監督作。恋人が黒人との間に作った子供を汚水に放り投げる冒頭からして容赦なく、基本暴力かセックスを推進力に進んでいく。なにせ少しストーリーを語ったと思ったらすぐ暴力・セックス・ヒロポンですからね。しかもどれもこれも描写がとんでもない。どうかしています。渡瀬恒彦ヒロポンを求め墓から蘇るゾンビと化します。敗戦直後の鬱憤を陰惨さと欲望をごった煮にしたような映画でした。



『シャブ極道』(1996)

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ブログにて長文感想を書きました→最近見た旧作の感想その5 - リンゴ爆弾でさようなら こんな感じでたまに旧作も個別記事も書いたりしますが、書くか書かないかは気分によるところなんですね。しかしこれは、「書かねば!」と思わされた作品でした。そして祝DVD再販!



酔拳2』(1994)

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ジャッキー作品では『ポリス・ストーリー/香港国際警察』に次いで好きです。食堂での2人対大勢のバトルも最高ですが、やはりラスト、工場での死闘は素晴らしすぎるでしょう。こんな楽しくていいのか?継母のアニタ・ムイとのやり取りにも爆笑。ところで、工業用アルコールを飲んで鬼神のごとき強さを見せるのは『ヤング・マスター/師弟出馬』を踏襲したのかな。



ときめきに死す(1984)

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森田芳光監督作。なんとも不思議な映画です。例えば、主演の3人が窓際で食事をしていると、なぜか窓の外に見えるビルの屋上で喧嘩している男たちがおり、さらにカットが変わると、食事をしている3人の位置関係が唐突に変わっている、というシーンがあるんですね。そういった構図、そして音楽、空気感・・・どれをとってもとにかく変で、その雰囲気に浸る映画、という感じがしました。台詞にもある「涼しい」という言葉がぴったりな雰囲気ですね。ラストは驚きますよ。



『独立愚連隊西へ』(1960)

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またまた岡本喜八監督です。「イーリャンサンスー イーリャンサンスー イーリャン イーリャン やいやいやいやいやい・・・」この独立愚連隊マーチからして良い。戦場が舞台で、戦争に対する皮肉もしっかり入ってはいますが、メッセージ性が強いというよりは、からっと明るく非常に楽しい映画です。全体に、ガキの遊びに興じる大人たち、という雰囲気があり、そこがいいんですね。フランキー堺がおいしい役。



ピアニストを撃て(1960)

フランソワ・トリュフォー監督作です。どうにもゴダールが肌に合わなかったことからヌーベルヴァーグと呼ばれるような作品は敬遠していましたが、これは面白かった。2人組ギャングとのやり取りが面白く、全体に笑える場面の多い映画でもありますが、同時に孤独な男の、虚無的で悲劇的な恋愛話でもありました。



『復讐 消えない傷痕』(1997)

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黒沢清監督作。『復讐 運命の訪問者』の続編にあたる作品です。前作がまだ一応わかりやすくジャンル映画的であったのですが、こちらはもう相当に変。復讐もののはずが、だらだらとした日常シーンが続くんですね。で、続いたと思ったらぞっとするような暴力があり、この辺は「らしい」感じ。そんな風に日常が続くのは「復讐に囚われどこにも辿りつけない」(車移動のシーンが印象的)という事なのかな。この2作が後の『蛇の道』&『蜘蛛の瞳』につながっていったように思います。



ブルジョワジーの秘かな愉しみ(1972)

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ルイス・ブニュエル監督作。食事をとろうと集まるも、必ず何らかの邪魔が入っていつまでたっても食事にありつくことのできない上流階級の男女を、夢と現実の入り乱れたシュールな映像で描いたコメディ。「気取ってるけど、どうせお前らの頭の中なんて食事とセックスの事だけだろ!で、それの何が楽しいの?」という言葉が聞こえくるような作品でした。だらだらと舗装されていない道路を歩くシーンを繰り返すのが印象的(たどり着けないことの暗示でしょうかね)。あと、度々幽霊が登場したりするのも面白いなぁと。



『やさぐれ姐御伝 総括リンチ』(1973)

やさぐれ姐御伝 総括リンチ [VHS]

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冒頭、着物姿で大立ち回りをする池玲子がカッコいいのですが、なぜかだんだん着物は脱げ、最後には素っ裸でおっぱいをブルンブルン揺らしながら男どもをばっさばっさと切り捨てます。僕はそれを見て思うのです。「これが映画だ・・・」と。正直話はあんまり覚えていませんが、冒頭や、ラストの全裸女集団による総括リンチシーンも壮絶の一言です。それだけで十分なんです。監督はエログロ大将石井輝男大先生。精神病院の描写や、ヤクの隠し場所など、見所の尽きない映画でしたよ。



というわけで以上11本が2013年上半期に見た旧作ベストでした。今年は邦画を多く見ており、このベストも邦画多めですね。他にも面白い作品は沢山見たのですが、やはりベストとなると厳選されますねー。
さて、本記事は上半期ベストであり、もう下半期は始まっています。そして、すでに下半期ベストの際は必ず入れるであろうという作品も見ていますが、それはまた年末に。というかもうちょっと旧作の個別感想記事も書かないとなと思っております。ええ。下半期はがんばれればがんばります。それでは今日はこの辺で。