リンゴ爆弾でさようなら

91年生まれ。新作を中心に映画の感想を書きます。旧作の感想はよほど面白かったか、気分が向いたら書きます。

『イップマン 誕生』を見た。

伝説の始まり。
あのイップ・マンのルーツに迫る最新作。『序章』『葉門』のヒットを受けて作られたもので主演からスタッフまで諸々変更されています。とはいえ、キャストのいくつかは同じ人が出ているし、イップ・マンの実子が出ているとなるとまあこの映画もそれなりに期待してしまいますよね。



1905年、6歳のイップ・マンと義兄のイップ・ティンチーは親元を離れ、中国にある詠春拳武館で修業を始めることとなった。師匠であるツォンソウ(ユン・ピョウ)の下で、同じく武館にいる少女、メイワイらと厳しい訓練を積むうちに彼らの間には固い絆が芽生えていた。青年になったイップ・マン(デニス・トー)はティンチー(ルイス・ファン)やメイワイ(ローズ・チャン)と別れ、大学留学を決意し単身香港へ。そこで彼は自分の習ったスタイルとは違う詠春拳に出会う。その改良された詠春拳を学んで中国へ帰ってきたイップ・マンだが、そこでは日本の貿易商による魔の手が迫っていた・・・というストーリー。



アクションシーンはドニー・イェンと比べると物足りなさは多少感じますけど、やっぱり動きが流麗で面白い。主演のデニス・トーは実際に詠春拳の達人だそうな。彼の棒術や、ルイス・ファンとの対決はもちろん、サモハンとユン・ピョウとの目隠し対決などいろいろ見応えはありましたよ。
また、注目ポイントであったイップ・マンの実の息子である、イップ・チュンと手合わせする場面など、年を感じさせない滑らかな動きですごい。相手への攻撃の最中にスッと椅子を引いたりする動作はホントに流れるようで見事。とりあえずこれだけでそれなりには満足、という感じではありますね。



でもね、映画全体としては残念ながら面白くなかったですよ。まずは脚本。これはね、まずいです。一番思ったのは前2作と比べドラマとアクションが乖離して映画内に存在しているなあということ。アクションのために無理なドラマが挿入されてる部分があるなあと思ってしまったんですね。それのせいでか、なんか映画全体のテンションが区切られてしまう感じがしました。
それと悪役となる貿易商の北野、この人のキャラが良くない。具体的に何をしているのかよくわからないんだけど、悪い人っぽいという感じで、悪役として存在感が薄い。そんな怖い人としても描写しないし、武術に長けてるわけでもない。こんな人との戦いを最後に持ってきても、そりゃあ盛り上がりませんって。さらに今時護衛としてニンジャ集団みたいなものを引き連れているんですよね。ちょっとこれは勘弁してほしいですね。



それと恋愛の部分ですね。少女マンガ的なあれこれがなんか古臭くて。まあそれはまだいいです。ですが、メイワイの役の扱いがちょっと・・・。この人が不憫すぎて、しかも上の画像を見てわかるかと思いますが、デニス・トーが無表情というか、ちょっと冷たい感じ顔なんですよ。だからよけい彼女の不憫さが強調されてる気がするんです。演技が悪いとかではないんですけど、正直ちょっとあわないんじゃないかなあという感じがします。せめて最後にちょっと救いを持たせてあげるような話にすればいいのに。



また今回見て思ったのは川井憲次ってすごいな、ということ。音楽の使い方が微妙だなと感じました。とくにポップスがかかるところはホントにどうなんだろうと。そういう部分が『序章』『葉門』にあった風格をなくしているんだなと感じますね。



と、文句は多々ありますがアクション自体は全然悪くないですし、過剰な期待ををしなければ楽しめる映画なのではないでしょうか。しかし、前2作と比べると落ちるのは明らかではあると思います。

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