リンゴ爆弾でさようなら

91年生まれ。新作を中心に映画の感想を書きます。旧作の感想はよほど面白かったか、気分が向いたら書きます。

『ダイ・ハード/ラスト・デイ』を見た。

マクレーン海外遠征
誰もが知っている大人気シリーズの第5作目。1作目の公開が1988年なので、それからはもう25年もたっているのですね。主演はもちろんブルース・ウィリス。監督は『エネミー・ライン』『フライト・オブ・フェニックス』などのジョン・ムーア


ジョン・マクレーン(ブルース・ウィリス)は、息子のジャック(ジェイ・コートニー)がロシアで身柄を拘束されたという知らせを受け、モスクワへと降り立つ。しかし、到着早々親子共々テロ事件に巻き込まれてしまい・・・

つまんなかったです。これが困ったことに、期待してたわけでもないのに、予想を下回るつまらなさだったんですね。しかも「面白い部分もあるけど、悪い所が勝ってるな」という感じでもなくて、面白いと思えた部分が全然ないという困った映画なんですよ。



先ず残念に思ったのはアクションがダメダメだという事ですね。例えば映画初めのアクションシーンである、モスクワでのカーチェイス。これがもうチャカチャカカメラを動かしているのだけど、まぁ下手。緊迫感につながっていなくて、ただただ見づらい。やっていることは派手っぽいのに、キメの画というか、カッコいいと思える瞬間が全然ないので、映画として派手に見えないんですよ。カットや撮影の工夫でなんとかなりそうなものがすべてどうにもなっていない。ただドカンとやっているだけ。そういう印象を受ける。なので、見せ場として消化不良なんですね。
それと、基本的にこの映画はアクション→話→アクション→話と言う感じになっていて、ストーリーを進めるシーンとアクションシーンが完全に分離しているんですよ。これは見せ方として良くない。アクションを展開させながらストーリーを進めることは可能ですし、そうでなくてもサスペンスで緊張感を持たせるとか、そういう工夫もありません。ただアクションを見せるために話が進むのです。しかし、そういう映画もナシではないです。しかしそれなら肝心のアクションは面白く撮れよと。そう思いましたね。
それとここで問題なのは、マクレーンこそが一番の悪人に見えてしまうという点です。悪役を追いかけ、ロシアの道路をがむしゃらに車で進んでいくマクレーンですが、おそらくこの場面で一番人を殺してるのは、ほかならぬジョン・マクレーン刑事ですよ。あまりに滅茶苦茶に暴れまわりすぎ。しかもその上、民間人の車を奪ってまでチェイスを続けるんですね。その車の持ち主にはパンチをお見舞い。やってることだけ見たら悪役ですね。これはひどいでしょう。



そんなロシア人への態度からも思いましたが、他にも本作ではマクレーンってこんな奴だっけ?と思わせてくれること多々です。いつの間にか不死身、最強の男になっているのはまだいいとしても、今回はホントにキチガイにしか見えません。これはホントに勘弁してほしかった。
また問題なのは他のキャラクターがどいつもこいつも全然キャラが立ってないということです。息子のジャック・マクレーンにしても敵役にしても、何もかも「その設定100回くらい見たわ!」というような、没個性なキャラなんですよ。息子とか、これなら『4』に出てきたハイテク機器を駆使する若い男のほうが、まだマクレーンと対比にもなっていたしよかったのでは?と思わせる感じ。今回は似たようなマッチョ二人という事であまり面白味もなかったし、バディムービー的な楽しみ方が出来るような展開も用意されていなかったので残念。
とはいえドラマがしっかり描けていれば、それでもまぁ構いません。しかし、そんなものこの映画には存在しない。ないとも言えないこともないのですが、適当な、どうでもいい感じでしたよ。なんにせよしっかり描く気は毛頭なさそうな感じでした。ハゲとかけているわけじゃないですよ。



敵役の存在感の薄さというのも大きなマイナス。例えば『1』のアラン・リックマン演じるハンスなんかは印象に残る悪役で、彼がまた映画の魅力をグッと引き上げていると思います。しかし、今回は台詞などではやたら巨悪っぽいのに、実際の存在としては地味という、一番ダサく見えてしまう敵役なのですね。
ところで、今回はモスクワの町中を何もかも色々ぶち壊したりヘリも飛ばしたりして凄い派手なことをやっているのに、いつまでたってもマクレーン親子は孤立無援の戦いを強いられるんですよ。おかしいですよね、コレ。普通警察とか特殊部隊の出番でしょう。
舞台問題でいうと、本作では最後、チェルノブイリに行くんですが、これは今の日本ではさすがに受け入れられないでしょう。というか日本じゃなくてもいい加減核というもののついては真面目に取り扱うようにしません?防護服なしで突っ込んでいくマクレーン親子、放射能を一瞬で除去する謎の装置、空気がクリアになったか深呼吸して確かめる女(『プロメテウス』でもそんなシーンあったね)・・・。もうね、ハリウッドで脚本家向けに講習会とか開いた方がいいんじゃないでしょうか。映画における核の取り扱いについて、というテーマで。まぁ、マクレーンや主要キャラが防護服をつけないのは顔をちゃんと見せるためだと思いますが、そんな映画の事情を分からせるつくりにはするなよ。



というわけで、主人公の子供を出して微妙な出来に+放射能の認識の甘さというところで、僕は『インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国』を思い出しました。ただあちらは放射能を皮肉的なギャグとしてやってるわけだし、確かにシリーズの中では出来は微妙だけど、それでもいいところはたくさんあったし、シリーズならではの魅力が確かにあった。『ダイ・ハード/ラスト・デイ』はそこにも達していない。これはやはり、評価できないですね。ゴミクソ!とかそういうレベルではないですが、決して面白くはない、割と不快な、出来の悪い作品だと思います。ハリウッド大作でも、やっぱやらかす時はあるんだなあ。あ、ちなみに僕はインディ・ジョーンズでは『魔宮の伝説』が一番好きです。