リンゴ爆弾でさようなら

91年生まれ。新作を中心に映画の感想を書きます。旧作の感想はよほど面白かったか、気分が向いたら書きます。

旧作感想『リング』

明日から『貞子3D』が公開になるということでかなり久々に見返しました。小学生の時に初めて見てからもう10年ぶりくらいですかね。そのころ、貞子さんが日本を代表するスターになるなんて、誰が思ったでしょう。

呼んだ〜?


さて、ホラー映画の金字塔といわれる本作ですが、原作から削ってはいるらしいとはいえ実際ミステリーとかサスペンスの側面がかなりあります。特にビデオを見てから死ぬまで1週間という明確なタイムリミット、これがサスペンスとして映画を盛り上げている。映画のテンポと緊張感を落とさせないという点でかなり機能している。これがリングでは重要な点だったのではと思います。


とはいえ、やはりマスターオブJホラー映画。ちゃんと全編怖いと思わせてくれる。何が怖いって、1日ごとに何かおぞましいものが這いよって来る感じを、じわじわと味わわせてくる。このじわじわが怖い。98年ともうかなり前の映画ですが、いやー、今見ても怖かったですね。
『リング』って大げさなショック描写はそんなにないんだけど、電話やポラロイド写真、それになんかいやな感じのする画面構成、そして絶妙に不快な音ですね。こういった諸々が怖さを引き立ててくれるんですよ。あと海と村という要素もじっとりした恐怖を醸し出すのに一役買っているかなあと。これらが先ほどあげたサスペンスとうまく合わさっているんですねえ。



で、僕はこの映画で一番嫌なのは、なんといってもあのビデオ。やはりあの映像の異様さは相当です。とにかく言葉に表しづらい不吉感満載の映像で、よくあんなもん作りやがったなと。殺す気か!
しかしですね、なぜビデオを見ただけで死ななきゃならんのだ、呪い?納得いかんぞ、と。そう考える人もいるでしょう。ちょっと僕も考えてみました。


本作の脚本を書いた高橋洋さんは、2010年に監督した『恐怖』で<この世ならざる何か>と接触した人が何やら大変なことになっていく様を描いていました。それを考慮するとこうも考えられる。
つまりこのビデオもそういうことで、あのビデオは貞子によって念写されたもの、この世のものではない異質のものです。これはもう見ちゃったら死ぬしかないんですよ。その恐るべき、何か見てはいけないであろうものを見てしまったら、それに触れてしまったら、これはそういう恐怖なんでですね。
ラストに関してもそうで、あれは原作にはなかったものらしいですが、貞子という理解不能の呪いそのもの、この世ならざる何かとでもいうべき存在が、この現実にあらわたとき、もうそれを見てしまった人もこの世にはいられない存在となってしまうんだと。だから死ぬんですね。貞子は『恐怖』で最後に襲ってくるアレみたいなものだと。そうも考えられます。


また、貞子によって呪い殺された人は顔が歪んでいました。真田博之演じた男も貞子の呪いにより死んでしまった。その後、松島奈々子の下に一瞬だけ顔を隠した姿で現れる。そのような姿なのはこの世ならざるもの(幽霊とかそういうことだけではなく)となってしまったからではないか?そう思いました。ま、だからと言ってそれで殺されることに納得かといえば、納得はしませんし、単に全部貞子の呪いの力と考える方が、まぁ自然です。なんかそっちの方が怨念って感じで怖いしね。ただ、後の作品と併せて考えると、こういう考えも浮かびましたというだけです。



そういう発見もあった今回の再見ですが、どうかなと思う点もいくつか発見しました。まずは真田博之が霊能力者だという設定です。ビデオの謎を解というプロセスが<霊能力者だからわかっちゃった>っていうのはどうなのよ?と。確かにそこに時間を費やせばホラーよりミステリの側面が強くなるのは分かるけどさあ。それと終盤の展開はいろいろいすっ飛ばしすぎでちょっと乗れない。
あと「そのセリフ言う必要ある?」というのもいくつかあった。いくつか説明過多という感じで、雰囲気を壊してる部分はあったと思う。脚本は全体よくできてるなと思うだけに、そういうところが惜しいなと。



まあそういう微妙な部分を含めて今見ても十分怖いと思える映画でした。あの貞子登場!に関してもあの場面だけ見ると別にですが、文脈で見るとやはりかなり恐ろしい場面でした。頑張ったけど結局何の意味もなかったじゃねえかというストーリーも酷くて最高だし(そう思うと中盤が飛んでるのもまあいいかと思え無くもない)、全編通してエゴ丸出しな松島奈々子も酷すぎて最高だった。しかしこれは薄型テレビだとなぜか怖くないよなあ。

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