リンゴ爆弾でさようなら

91年生まれ。新作を中心に映画の感想を書きます。旧作の感想はよほど面白かったか、気分が向いたら書きます。

『ザ・レイド』を見た。

ハードコア『死亡遊戯

インドネシア産の格闘アクション映画ですね。2012年公開ですが、地方の哀しみ、年明けての公開となりました。



麻薬王が住む住民全員犯罪者の高層ビルに、精鋭軍団であるSWATが強制捜査に入るというストーリー・・・といっても、本作にドラマ的な部分はなくほとんどなく、かなりの部分がアクションで占められています。これを「ドラマが薄い」と言うことも確かに可能ですが、僕はこれを「最低限必要な情報を、最小限の表現で語った」と取りますね。中途半端にドラマ性を持たせるくらいなら、本作のように余計な部分なバッサリ切り捨ててとっととアクションに突入した方がいいと思います。もっとも、前半は素晴らしいですが、後述しますが本作にも後半無駄な部分がでてきますけどね。



さて、肝心のアクションですが、これがまぁ、期待してたのとちょっと違くてですね。格闘アクションが主体なのかと思ったら結構銃撃戦が多くて。ただそれでもカッコよいので全然問題はありません。外からの狙撃や、暗闇から忍び寄るように現れる敵たちなど、緊張感のある展開が盛り込まれています。またあの冷蔵庫の使い方ね!あの場面で本作は、冷蔵庫映画として『レクイエム・フォー・ドリーム』や『インディ・ジョーンズ クリスタルスカルの冒険』等と同じく、記憶に残るものになってのではないでしょうか。
とはいえ、本領発揮はやはりナイフ&トンファー、そして拳のみの殴り合いになってからだと思います。特にシラットという、バリバリ実戦用感に溢れた格闘術が炸裂する場面は凄まじい。
そしてまた「ビル」という空間がいい。孤立無援の中、わらわらとゾンビのよう、に湧いて出てくる敵共や、ゴロゴロと廊下に転がる死体など、まるでホラーのような空間なんですね(スプラッターのように血を吹きだしたり凄惨な描写もたくさん)。そんな状況下、どう生き残るかというサバイバル的要素と、実戦的なシラットが組合せとして良い。この戦闘方法である必然性を感じます。



というわけで、もちろんお勧めの一作なのですが、不満もあります。特にラスト付近は「ちょっとどうなの・・・」と思う場面が多いですよ。まずは決着のつけ方ですよね。オチを書いちゃうと、(反転)→突入を計画した警部補は実は汚職をしていて、この計画により昇進を狙っていた。しかし、実は計画自体、麻薬王とつるむさらなる上層部の罠だった。それで麻薬王を捕まえてもどうせ上層部に消されるとわかった警部補は、麻薬王を殺して自殺・・・という感じ。あのね、主人公と関係ないところで戦いを終わらせたらダメでしょ。一番の大ボスなわけなんだからさ、もっと盛り上がる解決法はなかったのかね。ただベラベラとおっさん二人が真実を喋るのじゃなくて。



そんなわけで、実質クライマックスは麻薬王腹心の部下である通称マッドドッグという男との戦いになるわけですが、ここも惜しい。なにより問題なのは、彼は超絶強い奴なんだ、という描写を入れていないことです。
クライマックスは主人公・ラマ&その兄vsマッドドッグという、2対1の戦いになります。しかし、2対1にするならまず、マッドドッグは1人では倒せないくらい強い奴であるという説明がないとだめなんじゃないですかね。ラマらと戦う前、ラマの上司・ジャカと戦うシーンはありますが、そこでジャカは結構善戦してるんですよね。ジャカにはラマのように鬼神のごとく活躍する場面はないので、それで後のあの2人がかりっていうのは卑怯に見えちゃって・・・。
それに決着のつけ方もちょっと・・・。ラマの側は最終的に得物をマッドドッグの首に突き立てて倒すんですが、これどうよ?さっきまで肉弾戦で戦っていたというのに、負けそうになると道具に頼るって、なんか素直に応援できないよ!そりゃあこんな状況でそんな道理を通す必要なんかあるか、とも思います。しかし、このマッドドッグは銃を持って圧倒的優位に立っても、わざわざ「男の勝負は素手だよな・・・」と言っちゃう男なんですよ!それなのにこいつら・・・!まぁ結果としては2人がかりでも倒せないような野郎なので卑怯感は薄れていきますが、とにかくどうしようもなく強い奴に兄弟2人で立ち向かう・・・とかだったら、もっと燃える展開になったんじゃないか、ということです。



他にも、その兄弟のエピソード自体別に大した話じゃないという感じもします。なのでやっぱり、ラストに近づくにしたがってテンションが落ちていく感じがしちゃいました。これは僕は致命的だと思います。もちろん、だからと言ってこの映画がダメかと言うとそんなことは全然なくて、むしろアクション映画ファンなら絶対見るべきだとは思います。カメラワークなんかも素晴らしいですしね(特に壊した床から下の階へ移動するシーン。これワンカットなんだよな。)。しかし、傑作!と思えるほどではなかった、という感じなのです。個人的にはですけどね。

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ところで、2013年最初の記事です。遅ればせながらみなさん、あけましておめでとうございます。今年も当ブログをよろしくお願いします。