リンゴ爆弾でさようなら

91年生まれ。新作を中心に映画の感想を書きます。旧作の感想はよほど面白かったか、気分が向いたら書きます。

『アメイジング・スパイダーマン』を見た。

スパイダーマン、再誕
親愛なる隣人、スパイダーマンが新しくなって帰ってきた!ということでサム・ライミ版から5年で再映画化である。早すぎじゃないか?と思いますが監督は『(500)日のサマー』のマーク・ウェブ。ライミ版とはまた違った感じになりそうだったので期待して待ってました。ちなみに主演とヒロインの子は実生活でも付き合っているそうです。チッ。


高校生のピーター・パーカー(アンドリュー・ガーフィールド)は、幼いころに両親が失踪して以降、べンとメイの叔父夫婦のもとで暮らしていた。思いを寄せるグウェン・ステイシー(エマ・ストーン)に気持ちを伝えられない内気な彼はある日、父が残した鞄を発見し父がオズコープ社で働く生物学者のコナーズ博士(リス・エヴァンス)と同僚だったことを知る。父の手がかりであるオズコープ社に忍び込んだピーターは、そこで特殊な蜘蛛に噛まれる。その日から大きな力を手に入れるも、自身の慢心により起こった事件で叔父が命を落としてしまう。それから彼はその力を正義のため使うと決意。一方、コナーズ博士は自分を実験台に特殊な血清を打つのだが、その結果トカゲの化け物に変化してしまう・・・というストーリー。

今回の再映画化で一番良かったなと思うのは3Dアクションの部分。スパイダーマンは他のヒーローに比べ重量感がなく、縦横無尽に動き回るのが魅力だと思うのだけれど、その魅力を引き出すのに3Dは最適なんだなあと思いました。ビルとビルの間を飛びまわる臨場感はかなり見応えがあり、アクロバティックな快感を存分に味わわせてくれると思う。特に後半一番燃えるシーンで一番3Dが映えていたのは、確かにアメイジングと言える。


一方、今回悪役となるコナーズ博士=リザードですが、これは変わったキャラクターですね。世の中から弱者をなくすため血清を開発。さっそく自分に打つと、失った右腕が見る見るうちに再生するも、同時にトカゲの化け物になってしまう。ここで彼は自分の不幸を嘆いたりせず、「これぞ完璧な肉体」と言い、善意から市民もトカゲ人間化させようとするんですね。ありがた迷惑とはこのこと。あんまりこういうタイプはいないかなと。
そんなリザードは一言でいえば二足歩行するでかいトカゲで、見た目に派手さはない。ただアクションシーンに文句は全く無く、クモ男対トカゲ男という異種格闘技戦はかなり見応えのあるファイトだったと思います。



というわけでアクションに不満はないんです。それだけのために追加料金を払っても3Dで見に行く価値はあると思いますが、ストーリーの部分。ここに不満がいくつかあります。ここから先はネタバレ含むのでご注意。



本作はなにより、色々と話がまとまってないという印象を受けましたね。例えばベンおじさんを殺害した犯人が、結局捕まりも制裁もされてないのはどうかなと思う。これに関してはピーターが私怨による行動から、より大きなヒーローへと目覚めていく過程で一応問題じゃなくなると言えばそうなのだけど・・・。
他にもリザードになったコナーズが、最初に襲った上司の行方、これが不明だ。ほったらかしにしておいていい役ではなかったので、続編で、ということになるのかもしれないが、もやもやする。
続編を思わせるのはそれだけではない。ピーターの親がどういう人であったのかは結局ほとんど謎のままであるし、劇中にノーマン・オズボーン(『スパイダーマン』のグリーン・ゴブリンと同名)という名前を出し、最後にその人を思わせる謎の人物を登場させるなど、明らかに2作目を狙ったつくりが本作には多い。続編を作る予定なのはいいが、そういうのはちょっとしたオマケ程度にしておいてほしく、色々なことを投げっぱなしにしておくのは正直どうかと思う。



また、先ほど書いたピーターがヒーローへと目覚めていく過程にも少し違和感を感じる。ベンおじさんが死んだ後、ピーターは犯人と似ている奴を片っ端から追い、それを正義だと言うが、警察であるグウェンの父はその行動を個人的恨みからの復讐であり、正義ではないと言う。それでピーターは本当の正義に目覚めるわけだ。

この2人はともにピーターにあることを教える。それは『スパイダーマン』でも語られた「大いなる力には大いなる責任が伴う」ということだけど、これ同じ役割のふちが二人いるってことだよなあ。しかも二人とも死ぬし。それなら一人にしぼった方がすっきりしたんじゃないかな、と思うのだ。だいたいベンおじさんが死んだあと力を無責任に使いまくるというのもどうかと思う。このせいかヒーローになるまでのテンポも悪いように感じる。


ところで、サム・ライミ版でもそうだったようにスパイダーマンの悪役は乗り越えられる存在としての父親的な役割があるように思う。過去シリーズでの悪役は尊敬され父のような存在だったのに途中で悪に染まり、それを乗り越えるという感じだった。今回も一応そうなんだけど、ちょっとコナーズ博士との関係性が弱いかなとも思った。



それとですね、僕はこの映画の青春映画的側面に全くピンと来なかったんですよ。今回のピ−ターはまあイケメンだし、最初からヒロインとは割といい仲だし、いじめに立ち向かう勇気まで持ち合わせている。オタクなキモメンだった過去シリーズと比べるとどうしても感情移入度が違うし、キスシーンでも前シリーズと今作の違いは顕著だと思う。学校の廊下でデートする?しない?のやりとりとかはもう思わず血まみれになるくらい拳を握ったもんです。
つまり本作には童貞のはしゃぎっぷりやボンクラ臭さがなく、所謂リア充の青春とヒーロー的活躍が描かれていたのだ。それに対して僕は「クソがッ」と卑小な心から思ってしまった。そのせいか感動的だったりアツいと思うシーンはあるんだけど、どうも心からは乗り切れない。これを言ったらおしまいという感じだが、この点に関しては「別に君、スパイダーマンにならなくてもグウェンとは何とかなったよ」と思っちゃうのだ。ただ、グウェンを演じたエマ・ストーンはマジ天使。



というわけでアクションは良かったけどストーリーの面では個人的に不満が残りました。ただ『スパイダーマン』も『バットマン』も2作目こそ傑作であったように、これもそうなるかもしれないので、それに期待したいですね。