リンゴ爆弾でさようなら

91年生まれ。新作を中心に映画の感想を書きます。旧作の感想はよほど面白かったか、気分が向いたら書きます。

『スター・トレック イントゥ・ダークネス』を見た。

星間飛行2〜ハリソン急降下〜
2009年に公開されたJ・J・エイブラムスによる新『スター・トレック』の続編であり、映画『スター・トレック』としては12作目に当たる作品。キャストは前作から続投。物語の鍵を握る悪役には旬の俳優、ベネディクト・カンバーバッチを起用。さらに宇宙艦隊の高官としてピーター・ウェラーが出演。

ジェームズ・T・カーク(クリス・パイン)がエンタープライズ号の船長となってから1年後。彼らは未開の惑星を救う任務に就いていたが、その際、ピンチに陥ったスポック(ザカリ−・クイント)を救うため禁止行為を行ってしい、そのためカークは船長から降格させられてしまう。時を同じくして、ロンドンにある宇宙艦隊資料保管庫で爆破テロ事件が起こる。犯人はジョン・ハリソン(ベネディクト・カンバーバッチ)という元艦隊士官で、上層部はただちに作戦会議を開くが、実はその会議場の襲撃こそハリソンの真の狙いであり、そこでカークは父親代わりでもあったパイク提督を殺されてしまう。仇討のため、カークはハリソンの追跡をマーカス提督(ピーター・ウェラー)に直訴。再びエンタープライズの船長となるカークだが、謎の魚雷の搭載、敵対するクリンゴンの母星への侵入、乗員名簿に載っていない乗組員の乗船など、不可解な点の多いまま船は出航する・・・

スター・トレック』はJ・J・エイブラムスによる映画版で初めて見て、その後、劇場版を『カーンの逆襲』まで見た。まぁつまり、ほとんど見ていないという事である。また、前作もなんとなく面白かったのは覚えているが、本編より『SPACE BATTLESHIP ヤマト』でオマージュされていた事の方が記憶に残っているくらいで、僕はあまりスター・トレックというシリーズにはノレていない人間だ。



それで本題の『イントゥ・ダークネス』であるが。うん。面白かった。だが、やはりどうもノリきれなかった。これはおそらく、スター・トレックどうこうではなく、どうもJ・J・エイブラムスという人との相性の問題な気がする。
この映画はひたすら動く。冒頭からして未知の惑星を舞台に走り回るというシーンであり、その後も全編通し登場人物は惑星であろうが宇宙船内であろうが、常にせわしなく動き回り、ピンチに次ぐピンチで映画は動いていく。そのため退屈することはないし、緊張感もある。単にド派手にするだけでなく、スポックやハリソンが知力を巡らせるという展開が良い。
そしてハリソンを演じたベネディクト・カンバーバッチ。この人の魅力こそこの映画最大の魅力である。イケメンというわけではないが(主観です)、映画においては、その特徴的な顔や身体が非常に映える人なんだなと思う。特にラスト、彼が市街地を駆け抜けるシーンはかっこよかったなぁ。トム・クルーズもそうだが、走り姿が魅力的な人はいい。



そんな魅力的な部分もある映画でありながら、しかし最初に書いたように僕はどうもこの映画にノリきれなかった。その理由は2つある。以下ネタバレ。
1つ目はキャラクターの詰めの甘さだと思う。ストーリーは悪いわけじゃない。ハリソンとマーカス提督の、<自ら育てた「敵」の暗殺>という関係性はもちろん9.11が下敷きになっているのだろう。そういう部分はうまいし、そこにカークの成長やカークとスポックとハリソンの共感と対比を絡め、全体にソツがなくまとめているのは凄いとは思う。家族や大切な人を守るためならなんでもする。しかし、だからといって法や倫理を無視した行動をしても良いのだろうか。しかし、法や倫理で大切なものを守れるだろうか。復讐の是非とは。
そんなテーマは面白いが、どうしても個人のドラマに関しては掘り下げ不足に思えた。どのキャラクーも角がなくてあまり面白味がなく、またそれぞれの置かれた現状を描きこんでいるわけでもないので、特別感情移入できるキャラもいなかった。決して出来が悪いわけではないのだが、僕としてはアクションは少し押さえてスポックとウフーラの痴話喧嘩や、カークとの間に入る女に嫉妬するスポックとか(これがクーデレか)、飲み屋で飲んだくれるサイモ・・・スコッティとか、そういう個性を際立たせる描写をもっと見たかった。
特にハリソンはとても面白いキャラクターなのにどうも活かしきれてないように思う。例えば部下への思いなど、もうちょっとハリソン=カーンというキャラクターについて描写出来なかったものか。それに、初めは知性的且つ圧倒的能力を持つ冷徹な悪役として登場するが、だんだん「あれ?実はコイツ行き当たりばったりなんじゃね?」と思わせるような感じになっていくのも残念。映画が進むに従い、インパクトが下方修正されていく役だったと思う。
あと展開でガッカリしたのはラスト。『カーンの逆襲』を逆転させるというのはいい。でもそのあとあっさり復活って、なんか納得できないんだよなぁ。僕はもう、感動を返せと思いましたよ。



「こんな映像見たことない!」という驚きもなかった。確かに大迫力アクションの連続は楽しいが、センス・オブ・ワンダーやら卓越した演出と言えるほどのものは見られなかったように思う。まぁこれに関しては僕が悪いというのもあって、というのもこの『イントゥ・ダークネス』公開2週目だというのに僕の行ったシネコンではなんと一番小さいスクリーンでの上映だったのだ。これがIMAX(ちゃんとIMAXカメラ使ってるらしいしね)3Dとかだったら印象も変わってていたかもしれない。



「J・J・エイブラムスという人との相性の問題」と僕は書いた。ツイストに次ぐツイストを重視するのがJ・J・エイブラムスのやり方であり、たしかにそれは見ている間は面白いけど、終ってから考えると「あれ?」となってしまうことも多く、結果、個人的にあまり心に残らないやり方なのかなと思う。『SUPER8』もそうだったしね。つまり僕は、エイブラムス手法を面白いと思いつつも、全面的にはノレないという事なのだろう。というわけで、おおむね満足だけど、特別面白いと思う映画ではありませんでした。

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