リンゴ爆弾でさようなら

91年生まれ。新作を中心に映画の感想を書きます。旧作の感想はよほど面白かったか、気分が向いたら書きます。

『ダークナイト ライジング』を見た。

伝説の終り


クリストファー・ノーラン監督によるバットマンシリーズの最終章です。『バットマン ビギンズ』が2005年なので7年と言う結構長い時間をかけての完結編となったわけですね。



※少しネタバレしてます。


とりあえず本作の感想を一言でいうならバットマン3部作の完結編としては文句なし」と言う感じです。『ビギンズ』から始まったバットマンブルース・ウェインの物語の終わらせ方としては大満足です。



ところで、このシリーズはポスターの色使いが非常に印象的です。それぞれ夕暮れ、夜、夜明けと言う風になっていて、物語を象徴しているのかなと。

『ビギンズ』は物語の始まり、ブルース・ウェインの苦悩とバットマンの誕生から最初の活躍を描いていた。バットマンとしての活躍、しかしそれはブルース・ウェインにとってはどういうことなんだろうか。レイチェルとの関係は?夕暮れ、夜はすぐそこである。

バットマン ビギンズ [Blu-ray]

バットマン ビギンズ [Blu-ray]

ダークナイト』では試練の時を迎える。ジョーカーと言う狂気を前に、バットマンは自身のあり方を、善や悪を問う。混沌の世界で登場人物はもがき、悲劇を迎え、最後にバットマンは汚名を被ることによって正義は守られる。そして彼は闇の騎士として夜の暗黒の中に姿を消した。
ダークナイト [DVD]

ダークナイト [DVD]

「夜明け前が最も暗い」というセリフが『ダークナイト』にはあったが、『ダークナイト』から『ライジング』の中盤がそれにあたるように思う。バットマンとしてもブルース・ウェインとしてもすべてを失ったとき、自ら弱さを認めたとき、バットマンとブルースは一体となってどん底から這い上がる。夜明けは来た。
ポスター バットマン ダークナイトライジング FP-2721

ポスター バットマン ダークナイトライジング FP-2721


やっぱり最終章にあたる『ライジング』は3作で一番燃える映画だと思う。それはヒーロー映画としてベタで、いわゆる3幕構成というやつが分かりやすいということ。後あたりまえだけど3部作の最期ということで決着の意味合いが強いからだろう。ヒーローになるということ、立ち上がるということ、そして希望が継承されていくということを泥臭くベタに描いたからこそなんだと思う。ただ正直もっと熱くなるためあとちょっと描いてほしいなと思う部分はいくつかありますけどね。ただゴッサムに再び戻って炎を掲げる(fire riseで最初と対比している?)シーンはカッコいいし、ゴードンがバットマンの正体を知る所も泣けますけど。

ただでですね、僕が本当にグッと来たのはバットマンと言うヒーローの結末よりもブルースの物語の方です。両親、そしてレイチェルという過去に囚われ「外の世界」に生きることができない男として登場する彼が(『メメント』『インセプション』然り、ノーランの映画ではモチーフなんだろう。そういえばセリーナ・カイルとかある人の娘もそうといえるか)ラストに見せるものにホントもうやられました。アルフレッドとの関係性が好きと言うのもありますけどね。



というわけでノーランによるバットマンシリーズはホントにきれいな終わり方を迎えたと思います。相変わらず兵器と言うかアイテムはかっこいいし(ザ・バットもいいけどやっぱりバットポッドのタイヤが横回転するのとか)、よくこんなの撮ったなという迫力のある画面やハンス・ジマーの音楽、と言うか音全般など、とにかく圧倒される映画です。
役者の魅力も忘れ難いものがあり、新キャラではトム・ハーディ演じるベインの肉体的説得力(初めてバットマンがベインと対峙するシーンは本作屈指の名シーンだと思う。あんなに苦しそうにうなりながら戦うバットマンは初めて)は素晴らしいし、そして何と言ってもアン・ハサウェイ脚とかお尻とか腰とかの肉体もそうなんだけど、表情がセクシーなんだよなあ。



このように、ホントに面白いし、160分を超える長丁場でありながら飽きさせない(情報の整理できた2回目の方がさらに)映画だと思うんですけど、ただですよ。この『ライジング』一本の映画として見たらどうなの?という感じはします。そのお話ってどうよとか、その展開なんだよとか、いろいろ無視できない問題があるよなあといろいろ思うんですね。
で、この映画を見ていて思ったのは、やっぱり自分はジョーカーが好きなんだよなあと言うことです。ヒーロー映画として燃えるのは確かにそう思うんですが、個人的な趣味からするとそこじゃねえんだよと。やっぱり世界が燃えるのが楽しいんじゃねえかと。ジョーカーにこそ憧れたんだろ?と。だから悪役の動機と行動がおかしいとか、そこはちょっとどうなのと思うんですよ。街をあの状態にするということで、いったいどうなるんだろうと思ったら結局それかい、と言う感じで。そんなのんびりしてないでとっととやれば?と思います。革命が目的じゃないとしても、ちょっとどうかなあと思いました。ウォール街を占拠せよ運動という現実的話を入れてきた分、あの解決はちょっと期待はずれというか肩透かしを食らった気分。
まあ今回の狙いはそこではないのは分かっているし、こういうことを言うのがおかしいというのは十分承知ですよ。でもさ、期待しているところが違うとはいえ、やっぱり僕は自分を引っ張ってくれるようなカリスマが出てくる映画が好きなんですよ。ジョーカーとかタイラー・ダーデンとかトラヴィスとか。好みの問題ではありますが、そういうところで個人的に一本の映画としては『ダークナイト』の方が好きです。
あと個人的にはアルフレッドの扱いが弱いのも残念である。前半はあれほど描いていたのに!先ほども書いたように僕はブルースとアルフレッドの関係が好きなんですよ。『ビギンズ』なんてそこだけで十分満足なんですが、今回は薄いんだよなあ。『ダークナイト』で元傭兵だって言ってるんだから今回終盤に出てくりゃいいのに。『ビギンズ』の「まだ僕を見捨てないのか?」「決して」みたいな感じで登場したらもう最高だったのに。



とまあ他にもいろいろ言いたいことはあります。例えば奈落から這い上がるとこ、もうちょっと盛り上がんねえかなあとかね。ただ、あまりリアルじゃないと突っ込むのもどうかと思いますし、何度も言うように三部作のまとめという点では文句なしなんです。もうちょっと突き詰めればダークナイトを超えてまた人生ベスト級の傑作になっていたかもしれないのに・・・とも思いますが、やっぱり気持ち的には圧倒的に賛ですから色々汲み取っちゃう。とにかく、このシリーズをしっかり劇場で追えてよかったと思います。

Dark Knight Rises

Dark Knight Rises