リンゴ爆弾でさようなら

91年生まれ。新作を中心に映画の感想を書きます。旧作の感想はよほど面白かったか、気分が向いたら書きます。

割と最近見た映画。

メリダとおそろしの森

ピクサー最新作です。相変わらずクオリティの高い映像、スコットランド感は面白いと思うのだけれど、これはどうもよくない映画でした。
何よりお話が良くないですよね。メリダは望まない結婚を押し付けようとする母親に反発し逃げ出すが(この辺、ドレスなど服に意味を込めるのはいいと思う)、その先で出会った魔女の力を借りてうっかり母親を熊に変えてしまう。これも面白いと思いますよ。びっくりした。ただですね、このメリダが自分の行いを反省する描写が適当すぎやしませんか?だってクマと化した母親と川で魚捕ってるだけですからね。これだけで母と子の確執が解消するというのはさすがにきついでしょう。
キャラクターの扱いが雑であることや、設定をちゃんと活かしていないところももったいないと思う。メリダと母親の話に焦点を絞るのはいいけど、男たちに関してはもう背景もいいとこ。単に筋肉バカみたいな感じでしか出てこないんですよね。そりゃどうなのと。それにメリダの父親と彼の足を奪ったクマの物語、弓使いとしてのメリダなどの点も活きてこない。


それと個人的には大きな舞台を用意しておきながら展開が小さいところも不満なんですよ。その辺似たテーマの『塔の上のラプンツェル』はうまくやってたなあと。あちらのように恋愛要素をまったく入れなかったのはそれはそれでいいですけど、なんにせよ話がこじんまりとしすぎだし、母と娘の物語と言う点でも『ラプンツェル』と比べると本作は緩い着地で終わってるように思いました。主にメリダが改心するだけって、そりゃないでしょう今作る映画としては。


というわけで、つまらなくはないけど面白くもないなあと言うのが僕の本作の感想です。ただ同時上映の短編『にせものバズがやってきた』でのグループセラピーシーンは爆笑だし、『月と少年』も文句なしに面白いのでそちらはお勧め。あと本編ラストにある熊vs熊の格闘戦は凄くいい感じだったのでいつかピクサーにはモンスター映画を撮ってほしいですね。



『私が、生きる肌』

ペドロ・アルモドバル監督で主演はアントニオ・バンデラスのスペイン映画。亡くなった自分の妻そっくりに整形した女性、ベラを監禁観察する整形外科医ロベルのお話ですが、これは大変なことになっていましたね。
えー、一言でいうととっても変態、もしくは倒錯した映画でした。整形するだけならまだしも事実が明かされたときはもうね。ドン引きです。
ただ、単に「この人変態!」と捨て去ることもできない話ではあるんです。ロベルは妻を亡くし娘も精神を病んで自殺。深い悲しみと混乱の中で生み出されたものに倒錯的な恋心を抱いてしまうのは単に異常者と切り捨てられるだろうか?手術された側も同様に、異常世界に放り込まれてどう思ったのか。


この映画を見てて思い出したのは『顔のない眼』と『めまい』でして、実際監督も意識していたそうです。それでこの映画はその二つにトンデモビックリな展開をプラスした映画と言う感じで、つまり変態だの倒錯だのドン引きだの言ってますが、面白いんですね。序盤はなんかおしゃれな感じが気に食わなかったんですけど、とんでもなくなってくる中盤からはぐいぐい引き込まれましたよ。ベラ監禁のずさんさやヨガ万能説など気になる点もありますが、見て損はない映画でしょう。

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