リンゴ爆弾でさようなら

91年生まれ。新作を中心に映画の感想を書きます。旧作の感想はよほど面白かったか、気分が向いたら書きます。

『プロメテウス』を見た。

2093年殺戮の旅

ブレードランナー』『グラディエーター』など知れる巨匠リドリー・スコット監督の最新作です。同監督作『エイリアン』の前日譚になるような内容だということなので、『エイリアン』の大ファンである僕は「こりゃあ見に行かねば」とIMAXへ駆け付けたのであります。


2093年、巨大企業ウェイランド社が莫大な資金を投じて完成させた宇宙船プロメテウス号が未知の惑星LV223へと航路を進めていた。この惑星は考古学者エリザベス・ショウ(ノオミ・ラパス)らが古代の遺跡から発見した壁画に描かれていた星で、壁画にはその星を指し示す謎の巨人も描かれていた。エリザベスはこの巨人を人類の創造主=‘エンジニア’ではないかと考え、世界各地で似たような壁画が発見されていることから壁画を人類への招待状であると推測。そこでウェイランド社の協力を得て人類の起源を探る旅へと乗り出したのであった・・・。

いやあこれはすごいですよ。「やっぱりSFは絵だなあ」と、本作はそんなこと思わずにはいられない、超絶ビジュアルのセンス・オブ・ワンダーな映画でしたね。もうオープニングからして凄いですよ。地球と思われる惑星が出てくるのですが、その映像がでかいスクリーンで見る意義ということを存分活かした、圧倒的なシーンになっている。とにかく風景の荘厳さやられてしまうのだ。
そしてそんな映像の中に、突然宇宙船らしきものと、黒目の大きな色白マッチョメンがででんと現れる。なんだこれ?と思っていると、そのマッチョは容器を取出し中に入っていた黒い液体を飲む。すると体が崩れ川の中でバラバラになり、再びDNAが結合し生き物が生まれる・・・。


えー宣伝でさんざん勿体つけて言っている「人類の起源」ですが、開始数分で明かされちゃいます。これがそれです。よくわからんマッチョ宇宙人こそ僕らの父であり母でした。このように冒頭で人類の起源と言う謎は解決します。
ではこれから何が起こるのか?それは「よくわからんがすげぇ!」である。もうとにかくビジュアルがキマりまくってるんですね。宇宙船からしても「なるほど感」というか、機能美ビンビンで細かいところにもこだわりを感じる。‘エンジニア’のいる惑星のスケール感、遺跡内部の美しくも不吉さを感じる恐怖感から‘エンジニア’達のプラネタリウムまで全編すんごい映像祭で、画の魅力にひきこまれる。そういうのをIMAXの大迫力画面で見ているだけで幸せってもんですよ。



しかもそんな圧倒的ビジュアルの中で何をしているかと言うとゲロゲログチョグチョの残酷絵巻なのがまた面白い。首ちょんぱに顔面溶解に殴り殺し大会、口から異生物侵入、丸焼き、キモイ化け物同士のファイト、生首爆破、そして何と言っても帝王切開!これがすごいですね。しかも中から出てくるのは・・・。
とまあこのように本作ではキモい殺戮が非常に生々しく描いているんですね。ビジュアルは素晴らしく美しいのにやっていることはド下品というこのギャップが素晴らしい。巨匠とか言われてなんか偉そうな感じがしますが、こんなことをやってくれるリドリー・スコットはさすがです。



風景の中で埋もれがちではありますが、役者も良かったなあと思います。ノオミ・ラパスはほぼ全裸で汗をだらだら流し悶えながら手術するという、歴史に残りそうなシーンを熱演。しかし役とはいえ、子供が生めない体にあんなもの孕ませるってどういう神経なんでしょう。最高です。シャーリーズ・セロンもサービスしてくれちゃって嬉しい限りです。終盤で急に今までのトーンとは全然違うアツい展開を見せてくれる船長も良かったですね。
そしてエイリアンシリーズではおなじみアンドロイドですが、今回それを演じるのはミヒャエル・ファスベンダー。役者陣の中では何と言ってもこの人が良い味。登場した時からちょっと人間離れした歩き方で、最後まで何を考えているのかイマイチわからない感じが最高だ。‘エンジニア’に何と言ったのかも曖昧な感じで謎が残っていたり、『アラビアのロレンス』を真似してみたり、カバンにINするところもかわいかったですね。ファスベンダー萌えです。



難があるとすれば話がよくわからないというか、投げっぱなし置きっぱなしの部分が多いということですね。難しそうなテーマなんかがありそうな感じは出しているんですが、正直よくわからない。
ただ本作は【子殺し親殺し】の話だったんじゃなかろうか。例えばエンジニアに対する人間、人間に対するアンドロイドの関係はそのようなことを思わせるし、エリザベスが身籠ったりすることや、エンジニアとエイリアンにもこれは見られる。セックスやレイプ、妊娠への恐怖を描いた『エイリアン』の先にあるのが、生まれてくるもの、生まれたものそして生ませたものへの恐怖と憎悪である『プロメテウス』なんじゃないかなあと、僕はそう思いました。今回アンドロイドは『ブレードランナー』のレプリカントをモデルにしたとインタビューでファスベンダーは答えていましたが、それはなるほど、『ブレードランナー』にも父殺しというのはありましたね。



とまあこんなことを考えちゃったりもしますが、ぶっちゃけそんなことは別にどうでもいいですね。とにかく本作は高尚そうな話を隠れ蓑にしてやりたい放題グチャグチャやったという映画だということですよ。キャラの行動に納得できないとかありますけど、まあいいんです。希望を求めていった先に待っていたのは破壊と殺戮だったという、もうそれがすべてです。この映像の楽しさを味わうのはやはりでかいスクリーンじゃないとだめだったと思うので、こりゃあ見てよかったなと。タイトルの出方はじめ、『エイリアン』への目配せもあったし、楽しかったなあとね、僕は思うんですよ。