リンゴ爆弾でさようなら

91年生まれ。新作を中心に映画の感想を書きます。旧作の感想はよほど面白かったか、気分が向いたら書きます。

最近見た旧作の感想その7

『アルゴ』(2012)

第85回アカデミー賞において作品賞、脚色賞、編集賞を受賞した作品。ベン・アフレック監督作といえば、当ブログでは『ザ・タウン』を2011年のベスト10位に選んでいましたね。本作も非常に評価が高かったため、期待して見ましたが、無難にしっかり面白い映画だったな、という感じです。大作ばっかじゃなくて、こういう映画もちゃんと地方で公開してよね・・・。



冒頭で一気にイランという国の置かれた状況を説明。その後も無駄は省略しポンポン話を進めていくので見ていて気持ちがいい。大使館占拠シーンはとても緊迫感があるし、そこからハリウッド内幕ものとなっていく展開も面白いが、何と言っても後半、空港に入ってからが素晴らしい。結末は分かり切っているのに非常にスリリング。ピンチに次ぐピンチの連続でサスペンスを盛り上げる描写なんかはもう、笑っちゃうほど(バスの下りとか)でもある。ここまで盛り上げられるのは、一番には編集の力なんだろうな。全体的に無駄を絞った骨太で渋い作風は、確かに狙い通り70年代っぽいのかも。ワーナーの旧ロゴもカッコいい。



ただ、「こんなありえない話なのに実話なんですよ」というのが面白い本作であるのに、こんな過剰にスリリングにしては、実話を超えちゃってるのでは?と見ている間思った。実際、この辺はやはりフィクションも多いらしいのだが、そのような展開にした理由は最後に判明する。
ベン・アフレック演じる主人公の息子の部屋、スターウォーズスタートレックのグッズとともに並べられていたのは、偽映画『アルゴ』の絵コンテ。ここでこの映画は映画賛歌であったことに気づく。CIAの功績を讃えるものではなく、映画というフィクションの勝利を讃える映画だったのか。そして同時に、結末のわかり切った「物語」に手に汗握る私たちすら、この映画は映し出して見せているのか。このオチは凄く良いと思いましたね。また、同じくフィクションの持つ力についての映画であった『ライフ・オブ・パイ』が監督賞を受賞するというのも面白い結果だったんじゃないかと。



さて、サスペンスフルな場面はもちろん素晴らしいのだが、個人的に一番グッときたのは、もともと「こんな作戦は馬鹿げている」と言っていた男が、終盤の空港最後の難関で、役になり切りイラン兵に絵コンテを見せ、シーンについて熱弁する場面である。中盤はずっと文句ばっか言っていてめんどくさい野郎だけど、最後にカッコいいところを見せてくれた。その後、その絵コンテを楽しげに見つめるイラン兵の姿も良かった。ところで、ジョン・グッドマンが出ている映画はそれだけで面白さが何割か増している気がするのだけど、この現象は一体なんだろう。



ちなみに、僕がこの映画を見ていて一番思い出したのはゲームの「メタルギアソリッド」だ。明確にどこがというわけではなのだけれど、ついに作戦決行の日、カナダ大使公邸に到着したベン・アフレックはもう完全に「待たせたな」(大塚明夫ボイス)って言ってたね。

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