リンゴ爆弾でさようなら

91年生まれ。新作を中心に映画の感想を書きます。旧作の感想はよほど面白かったか、気分が向いたら書きます。

『エクスペンダブルズ3 ワールドミッション』を見た。

萌えアクションスター大全

2010年に始動したエクスペンダブルズシリーズ最新作。お馴染みのメンバーに加え今回からウェズリー・スナイプスにアントニオ・バンデアス、ハリソン・フォードが参加し、悪役としてメル・ギブソンも出演している。監督はパトリック・ヒューズ。


バーニー・ヒル(シルベスター・スタローン)率いるエクスペンダブルズの面々は、スワジランドに収監されている初期メンバーのドクターデス(ウェズリー・スナイプス)を救うミッションを成功させ、再びメンバーとして迎え入れた後、ソマリアで武器密売人を暗殺するミッションに取り掛かる。順調に作戦を進めていくエクスペンダブルズだったが、思わぬ事態が発生した。ターゲットである武器商人はコンラッド・ストーンバンクス(メル・ギブソン)という、エクスペンダブルズ初期メンバーで、かつてバーニーとは袂を分かち死んだはずの男であった。ストーンバンクスの反撃により返り討ちに遭ったチームは強制的に解散。バーニーは新メンバーを雇い反撃に出ることを決意するが・・・

これだけのアクションスターが揃っているのだから、そもそも普通の映画と同じようなラインでは語れないんだよ。そんな宣言すら聞こえてくる作品であった『エクスペンダブルズ2』は、例えばヒーロー集結映画である『アベンジャーズ』とは全く別の方向を向いており、完成度という尺度では測れない「何か」を有した最高の作品だった(と思うんだけど・・・)。しかし今回の『3』はそれに比べるとだいぶマトモな作品であり、その分魅力も減ってしまった。



まず残念なのが新入りの登場である。確かに彼らを入れることで、バーニーとオリジナルメンバーの絆(イチャイチャ)が強調されるという効果はあるし、バーニーが若造相手に困惑する姿も魅力がないわけではない。しかし当然彼らに時間を割いた分オリジナルメンバーの出番は減ってしまうのであって、この映画に対して何を期待して劇場へ駆けつけるのかといえば、それは当然お馴染みのアクションスターたちなのであって、現代機器を使いこなす若造ではない。世代交代という要素が出てくるのはこのシリーズにおいて自然な展開かもしれないとはいえ(それを乗り越えた先のシリーズなので2度手間という気もするが)、例えば『アニー・ホール』でウディ・アレンが前の彼女と盛り上がった行動を今の彼女の前で繰り返しても全く反応がなかったように、エクスペンダブルズが醸し出す楽しさはあのメンバーだからこそのものなので、それを楽しみに見に行った僕としては、若造などに興味ないのである。
とはいえ新入りも各々キャラクターが立っていれば、そのことに対してそんなに不満もなかっただろう。だが彼らの中で目立ったのはロンダ・ラウジーの肉低的な説得力と存在感くらいであり、その他のメンバーはバイクスタントを除いて添え物も良いところである。これならばやはり、若手なぞ出さずにウェズリー・スナイプスメル・ギブソンを中心としたエクスペンダブルズ結成秘話とそこからの展開を見せてくれた方が良かった。



次に残念だったのが、メル・ギブソンである。せっかくメル・ギブソンが『エクスペンダブルズ』に出ているというのに、顔はあんなに怖いというのに、もう全然暴れ足りない。『ダークナイト』風のやり口を今更やるかという問題はとりあえず置いておくとしても、例えば、若手メンバーを捕らえておいて何故拷問しないのか。出演作でも監督作でもあんなに拷問したりさせていたというのに。またスミスアンドウェッソンM500という、「世界最強」を目指して作られたらしいリボルバー(『ラストスタンド』でシュワルツェネッガーが使っていたやつ)を撃っているくせに何故あんなにヌルい暴力描写なのか。最後だって、ダンプで一人突撃していく様はいいのだけれど、せっかくなんだから装甲車で暴れまわったっていいじゃないか。改造車・装甲車といえばスタローンも『デス・レース2000年』があるのだから、これこそまさに「夢の競演」というやつではないのか。ウェズリー・スナイプスの見せ場がちょっと少ないんじゃないかということよりも、これらのようなメル・ギブソンの凶暴さが足りないことになにより勿体なさを感じた。脚本が無茶苦茶と言われる前作だが、ヴァンダムのキャラ立ちっぷりは素晴らしかったではないか。メル・ギブソンはそれ以上のキャラクターになれるはずなのに、それを逃してしまった。これは大きな損失だ。



ただしもちろんいい部分もあって、例えば今回ブロマンス度が飛躍的に向上している。過去作までは存在していたステイサムの彼女やスタローンの相手役になりそうな女性も本作では消え、代わりとして、仲間同士での仲睦まじい会話が増えていた。それに付随していい顔した男たちのキャラ萌えもやはり外しておらず、とりあえず今回の最優秀萌えシーン賞はガンナーことドルフ・ラングレンが戦車を乗り回す姿であり、最優秀萌えキャラ賞はアントニオ・バンデラスであろう。アントニオ・バンデラスは恐るべきお喋りマシーンとして登場し、スタローン含めた登場人物及び我々観客をも辟易とさせるが、それが暗い過去と道のない人生を踏まえてのことだと判明し「俺の話聞いてくれてたのか」と言ったときに時に僕は思わず落涙してしまった。まさかバンデラスに泣かされるとは。ちなみに余談だが、スタローンがメル・ギブソンを発見した時の「いやな別れ方をした元カノと偶然鉢合わせる感」には笑った。



またアクションシーンに関していうと、冒頭の列車強奪からの流れ。特にタイトルが出るタイミングの異常なテンポというかタメのなさが面白い。ラストバトルも、個人戦からバイクに戦車にヘリに入り乱れての混乱ぶりを楽しく見ることはできる。しかし前述したように血や肉体が弾ける興奮はなくなり、メル・ギブソンの印象付けが弱いために前作におけるヴァンダムのような決闘の盛り上がりがあるわけでもなく、さらに何故だかCGはやたらと安っぽい箇所が多いため、満足して然るべきアクション部分ですら不満が残ってしまった。おそらくは4も2年後に公開されると思うが、もうそうなるならば次回作は是非とも今回の反動として血と肉が弾け肉体がぶつかり合うハードな作品になっていてほしいと願う。