『アウトロー』を見た。

トムプレゼンツ、愛され小品
トム・クルーズ主演最新作です。最近当ブログの更新は滞り気味なため、２か月以も前に見た作品の感想を今更書いています。原作はリー・チャイルドによる「ジャック・リーチャーシリーズ」の９作目にあたる「アウトロー」(原題One Shot)。映画はこれが１作目となります。

ピッツバーグでライフルによる無差別殺人が行われた。警察の捜査によりこの事件の犯人は元アメリカ陸軍のジェームズ・バー(ジョセフ・シコラ)という男であると判明する。逮捕されたバーは黙秘を続けたが、「ジャック・リーチャーを呼べ」というメモを書く。元米軍憲兵隊捜査官で、現在は流れ者となっていたジャック・リーチャー(トム・クルーズ)。警察は彼の行方をつかめないでいたが、不意にジャックは現れた。ニュースを見てバーのもとへ訪ねてきたのだ。バーは他の受刑者から暴行され昏睡状態に陥っていたが、ジャックはそこで彼の弁護士であるヘレン(ロザムンド・パイク)と出会う。

トム・クルーズ主演作で僕たちが期待するものは一体何だろう。もちろん答えは一つ。それはトム・クルーズ独特の走り、つまりトム走りである。しかし、本作は予告を見る限りではなんとトムが走ってないじゃないか！おいおい何やってるんだ！
というのは半分冗談ですが、正直予告編を見た段階では全然惹かれなかったんです。トム・クルーズは好きですが、熱心なファンというわけでもないですし、物語もまた地味で、どうにも魅力的には見えなかったのでね。
ところが、公開されてみると以外にも好評価・・・というか、何か変な愛され方をしているので、だんだん気になって見に行きたのですが・・・

ロザムンド・パイクの胸元！

失礼、今のは忘れていただくとして、非常に硬派な映画でした。印象通り派手さはありません。見せ場に次ぐ見せ場というわけでもありません。しかし、それがイコールで地味でつまらないという事にはならないという、いい見本になっていたと思います。非常に渋くカッコいい映画なんですね。『ダーティ・ハリー』を思わせるオープニングから期待させ、なかなかに痛そうなアクションで「おお」と思わせてくれます。
そして一番の見どころは何と言ってもカーチェイス。これがものすごくいい。余計なＢＧＭは無し。エンジンの低音がうなるだけ。チャカチャカした編集もなし。これがいい。そんな小細工はしなくても十分に興奮するアクションシーンは取れるという事ですね。また夜の道路を滑走する真っ赤な車にはどこか色気みたいなものもある。これぞカーチェイスと思わせるシーンだったかなと思います。
ラストの対決も採掘場という、これまた地味な舞台ですが、狙撃対決や(相棒にはロバート・ドュバル！)泥だらけ肉弾戦などなど、しっかり魅せてくれますよ。
ドラマの部分もなかなかうまくいってると思います。西部劇に倣ったシンプルかつトム無双な映画ではありますが、無駄なくしっかり紡がれていく人物個々のドラマがいい味を出している。だんだん謎が明かされていくサスペンスの部分も僕は楽しめましたね。２時間越えの作品ですが、退屈せずじっくり見れる映画になっていたと思います。

とまあ、これだけならアクションもサスペンスもうまくいってる、小品ながらなかなかに良い映画だったね、というところなのですが、本作一番の注目ポイントはそこではなくてですね。たま〜に現れる変な演出。これこそ映画『アウトロー』の謎の魅力につながっていると思います。
例えば、トム演じる主人公ジャック・リーチャーが暗殺者に襲われるシーンが中盤あるのですが、ここは非常に真面目な、緊張感のあるシーンのはずのに、なぜか急にドタバタ劇になるんですよ。しかもちょっとドタバタというわけではなく、今時珍しいくらいのガッツリしたドタバタで、もうホントにスラップスティックなコメディになっている。なんで？
そして何と言っても電話のシーンですね。協力者の女性を人質に取られたジャック・リーチャーは公衆電話から何度も敵に電話します。いちいち番号を押すしぐさも笑えますが、「今から殺しに行くから住所教えろ」、この破壊力。見てない人にはわからないかもしれませんが、これは一体何のつもりで・・・と思わざるを得ない謎のやり取りが楽しめます。

というわけで、硬質なドラマとアクションに加え、変な演出が楽しめる変わった映画でした。今時こんな往年のアクション映画風味な作品が、という点では『探偵はＢＡＲにいる』と感覚は似ているかもしれませんね。今後シリーズ化されていくみたいなので、次回作にもこの何とも言えん感じを期待しましょう。

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