リンゴ爆弾でさようなら

91年生まれ。新作を中心に映画の感想を書きます。旧作の感想はよほど面白かったか、気分が向いたら書きます。

『ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション』を見た。

黄色いドレスの女
トム・クルーズ主演大人気シリーズの5作目。共演には1作目から共演しているヴィング・レイムス、『3』からのサイモン・ペグ、『ゴースト・プロトコル』からのジェレミー・レナーの他、新キャストとしてレベッカ・ファーガソンアレック・ボールドウィンショーン・ハリスらが参戦。監督・脚本にはクリストファー・マッカリー


IMFのベテランエージェントであるイーサン・ハント(トム・クルーズ)は正体不明の犯罪組織「シンジケート」を突き止めるため調査を行っていた。ある日指令を受けるためロンドンを訪れたイーサンだったが、そこで犯罪組織の罠にかかり、捕らえられてしまう。拷問にかけられる危機からイーサンを救いだしたのはイルサ(レベッカ・ファーガソン)という謎の女性であった。「シンジケート」は実在しないと信じるCIAらはイーサン・ハントを過去の騒動からテロリストとして指名手配され、IMFはCIAの傘下に置かれることとなってしまう。イーサンは仲間に頼らず、自分1人で犯罪組織に立ち向かおうとするが・・・

シリーズ5本目になるというのに面白さに磨きがかかっており、その原動力は一体どこにあるのかと考えてみるとそれはやはり、トム・クルーズという稀代のスターがよりアグレッシブにアクションをこなしていることが大きいと思う。もちろん本作であれば冒頭の、あまりの出来事で最早感心とか興奮よりも呆気にとられ引きつりながらも笑ってしまう、航空機ぶらさがりアクションにそれは代表されるだろう。このシーンはストーリ上ほとんど意味がないというのに、面白さのためなら命すら顧みない姿勢によって観客に畏怖の念を抱かせる。ここまで来てしまうとさすがに楽しいというより、心配になってきてしまうのだ。しかしそれでも最後は爽やかに締めくくれるのは、ひとえにトム・クルーズのスター性と実行力故であり、前作を超えるための挑戦を主演でありプロデューサーでもあるトム・クルーズ自らが持ち込んでくるために、本シリーズはマンネリ化や減速することなく続けていくことが出来るのだと思う。



またトム・クルーズは単に前作を超えるためのびっくり人間的挑戦をするだけではなく、新しい風を作品内に吹かせようともする。例えば監督選びにそれは表れていて、本作は『アウトロー』でトム・クルーズと組んだ、クリストファー・マッカリーが監督に抜擢されている。そして『アウトロー』が硬派で70年代のような雰囲気を持ち合わせていた作品だったように、この『ローグ・ネイション』は、シリーズ前作の『ゴースト・プロトコル』とは対極的に、おそらくシリーズ中最も派手さのない作品になっている。だがそれは見せ場に乏しいとことは全く違い、むしろ危険なアクションにスリリングな展開、チェイスなど見せ場は止まらず、物語は過去作以上にサスペンスフルで緊迫した状況を迎え、しかしそこにスパイらしいガジェットも満載で楽しませてくれるのだ。トム・クルーズ主演『ミッション:インポッシブル』という土台があるとはいえ、シリーズの中で一気に色を変えていくことには驚かされる。



そしてそれらの要素を支えるのが、撮影のカッコよさである。例えばオペラハウスの静かな緊張感と舞台裏の照明の具合、高いところから低いところへのいくつもの移動、そして黄色いドレスを着たレベッカ・ファーガソンが銃を構えるその瞬間の、まぁなんと素晴らしいことよ。しかしここで特筆すべきなのはそんな美しさよりもまず、人物や劇場の構造等、諸々の位置関係を把握させるのがうまいということである。オペラハウスという特殊な構造を持つ空間について前半で把握させサスペンスを盛り上げつつ、後半でどうアクションを展開させるのか。この流れが非常にうまいのだ。もちろんこれはカットバック、編集の力も素晴らしいのであって、手際よくかつ美しさを失わない映像に魅了される。
中盤のチェイスシーンも見事だ。『アウトロー』のそれも十分素晴らしかったのだが、本作においても車、そしてバイクのエンジン音の設計や時折挿入されるシフトレバー操作等の細かいアクション、カメラ位置が素晴らしく、またバイクや人が車にぶつかるその勢いも躊躇がない。当然、こういったアクションシーンにおいても人物や空間の位置関係を把握させる力というのは非常に効果的に作用している。
また撮影の力が最も発揮されたのは、最後の舞台となる夜のロンドンであろう。霧と影によって満たされたロンドンの場面は、時折白黒映画のような美しさを身にまといながら濡れた街道を映し出す。もちろんその雰囲気だけではなく、家に入るアクションと家から出る(窓から飛び出す)というアクションを同じフレームの中で捉えたショットやナイフアクションも良い。撮影監督は『ゴースト・プロトコル』の他、ポール・トーマス・アンダーソン作品などを手掛けているロバート・エルスウィットだが、序盤、中盤、終盤とそれぞれに毛色の違う舞台とアクションでありながら、そのどれもを的確に処理した撮影が、僕は素晴らしいと思う。



こういった画面の雰囲気やイーサン・ハントらの過去に対して自己言及することからして本作はどことなく『スカイフォール』を思わせるような部分もあるが、それでも本作が『ミッション:インポッシブル』であるのはやはり基本的にはトム・クルーズというスターが作品を支えているからであり、また同時にイーサン・ハントとその仲間たちの、チームによる荒唐無稽なスパイ・エンターテイメントであるからだ。

シリーズ5本目になるというのに面白さに磨きがかかっており、その原動力は一体どこにあるのかと考えてみるとそれはやはり、トム・クルーズという稀代のスターがよりアグレッシブにアクションをこなしていることが大きいと思う。もちろん本作であれば冒頭の、あまりの出来事で最早感心とか興奮よりも呆気にとられ引きつりながらも笑ってしまう、航空機ぶらさがりアクションにそれは代表されるだろう。このシーンはストーリ上ほとんど意味がないというのに、面白さのためなら命すら顧みない姿勢によって観客に畏怖の念を抱かせる。ここまで来てしまうとさすがに楽しいというより、心配になってきてしまうのだ。しかしそれでも最後は爽やかに締めくくれるのは、ひとえにトム・クルーズのスター性と実行力故であり、前作を超えるための挑戦を主演でありプロデューサーでもあるトム・クルーズ自らが持ち込んでくるために、本シリーズはマンネリ化や減速することなく続けていくことが出来るのだと思う。



またトム・クルーズは単に前作を超えるためのびっくり人間的挑戦をするだけではなく、新しい風を作品内に吹かせようともする。例えば監督選びにそれは表れていて、本作は『アウトロー』でトム・クルーズと組んだ、クリストファー・マッカリーが監督に抜擢されている。そして『アウトロー』が硬派で70年代のような雰囲気を持ち合わせていた作品だったように、この『ローグ・ネイション』は、シリーズ前作の『ゴースト・プロトコル』とは対極的に、おそらくシリーズ中最も派手さのない作品になっている。だがそれは見せ場に乏しいとことは全く違い、むしろ危険なアクションにスリリングな展開、チェイスなど見せ場は止まらず、物語は過去作以上にサスペンスフルで緊迫した状況を迎え、しかしそこにスパイらしいガジェットも満載で楽しませてくれるのだ。トム・クルーズ主演『ミッション:インポッシブル』という土台があるとはいえ、シリーズの中で一気に色を変えていくことには驚かされる。



そしてそれらの要素を支えるのが、撮影のカッコよさである。例えばオペラハウスの静かな緊張感と舞台裏の照明の具合、高いところから低いところへのいくつもの移動、そして黄色いドレスを着たレベッカ・ファーガソンが銃を構えるその瞬間の、まぁなんと素晴らしいことよ。しかしここで特筆すべきなのはそんな美しさよりもまず、人物や劇場の構造等、諸々の位置関係を把握させるのがうまいということである。オペラハウスという特殊な構造を持つ空間について前半で把握させサスペンスを盛り上げつつ、後半でどうアクションを展開させるのか。この流れが非常にうまいのだ。もちろんこれはカットバック、編集の力も素晴らしいのであって、手際よくかつ美しさを失わない映像に魅了される。
中盤のチェイスシーンも見事だ。『アウトロー』のそれも十分素晴らしかったのだが、本作においても車、そしてバイクのエンジン音の設計や時折挿入されるシフトレバー操作等の細かいアクション、カメラ位置が素晴らしく、またバイクや人が車にぶつかるその勢いも躊躇がない。当然、こういったアクションシーンにおいても人物や空間の位置関係を把握させる力というのは非常に効果的に作用している。
また撮影の力が最も発揮されたのは最後の舞台となる、夜のロンドンであろう。霧と影によって満たされたロンドンの場面は、時折白黒映画のような美しさを身にまといながら濡れた街道を映し出す。もちろんその雰囲気だけではなく、家に入るアクションと家から出る(窓から飛び出す)というアクションを同じフレームの中で捉えたショットやナイフアクションも良い。撮影監督は『ゴースト・プロトコル』の他、ポール・トーマス・アンダーソン作品などを手掛けているロバート・エルスウィットだが、序盤、中盤、終盤とそれぞれに毛色の違う舞台とアクションでありながら、そのどれもを的確に処理した撮影が、僕は素晴らしいと思う。



こういった画面の雰囲気やイーサン・ハントらの過去に対して自己言及することからして、本作はどことなく『スカイフォール』を思わせるような部分もある。しかそそれでも本作が『ミッション:インポッシブル』であるのはやはり基本的にはトム・クルーズというスターが作品を支えているからであり、また同時にイーサン・ハントとその仲間たちのチーム戦による荒唐無稽なスパイ・エンターテイメントであるということだ。ヒッチコックから渋いアクションまで手を広げつつも、トム・クルーズという軽やかなスターの魅力、お姫様=サイモン・ペグ、パートナーであるレベッカ・ファーガソンの動く魅力を存分に生かしたこの作品はやはり『ミッション:インポッシブル』でしかありえないものであろう。そして実はこの作品がラブロマンスだったのだと告げる最後の台詞のキレも素晴らしく、これらのことから本作はシリーズ最高傑作なのではないかと僕は思うのでありました。オススメ。