リンゴ爆弾でさようなら

91年生まれ。新作を中心に映画の感想を書きます。旧作の感想はよほど面白かったか、気分が向いたら書きます。

『モールス』を見た。

トワイライト〜殺戮〜


スウェーデンの『モールス』という小説を映画化した物ですが、既に本国で『ぼくのエリ』というタイトルで映画化されているのでハリウッドリメイクという事になった、少々ややこしい映画。スティーブン・キングが絶賛、と各所でいわれてるようですね。



さて、リメイク物である以上オリジナルといろいろ比較される事は避けられないと思います。というわけで比べて言うと、まずハリウッド版は分かりやすい映画になったという事が特徴としてあげられる。
オリジナルではぼかされていた部分、例えば男の子側(オスカー、オーウェン)の親が離婚するしないの部分ですが、そこはリメイク版では離婚理由が宗教である事がはっきりしています。『ぼくのエリ』の感想でも書きましたが、オリジナルでは(原作のことではないよ)理由がほのめかされるだけでありました。
またオーウェンの未来も暗示程度だったオリジナルとは違いはっきりと明示されている。それは少女アビーと共に越してきたオッサンがオーウェンの行く末であるということ。オーウェンの被るマスクがオッサンぽいこと、そして若き日のオッサンとアビーが映ってる写真等からそう思えるのですね。


他にはオーウェンがさらに『タクシードライバー』のトラビス化してたりする(鏡に話しかける)のだけれど、殺人事件の記事を収集したりはしておらず、孤独やいじめという問題をわかりやすく浮上させているように思う。
しかしこのオーウェン君、オリジナルよりも弱弱しさを感じるが、これくらいの方が良いかもしれない。彼からにじみ出てくる悲しさ(オスカーは奇麗すぎたかもしれない)はこの物語の悲劇性を表しているように思う。


それとあの悪名高い「ぼかし」のシーンが本作では丸ごとカットになっている。このせいでアビーの「女の子じゃない」というセリフが単に吸血鬼だから、というふうな意味になっていました。これだとオーウェンの覗き言う行為が性の目覚めという意味になるように思う。
ちなみに覗くと言う行為はどうも外の世界へのあこがれみたいなものかな、と思いました。オーウェンは自分の人生が嫌で抜け出したい、と思っている少年なので自分の世界の外を覗いているのではと思いました。



さて、ここまでのところは僕としては「まあそれでもいいか」と思えるところですよ。全く同じではリメイクの意味がほとんどないように思うので独自にやるのはそれはそれでいいと思う。



本作で僕が最も嫌だと思ったのはアビーのモンスターとしての側面です。分かりやすく化け物してるんですよ・・・。顔が変化したり声が太くなったり動きが人間のそれを超越してたり・・・どうもそこだけ普通のホラーって感じで本作の美しくて悲しい雰囲気に合っていないと思いました。本作はストーリーだけじゃなくモンスター映画っぽさもわかりやすくしてるんですよね。
アビーだけじゃなくショックシーンは全体的に何割か増しです。ラストのプールのシーンは暗く重たく表現していて、それはそれでいいのかもしれないけどオリジナルを知っている人はもうあの静かで美しくて恐ろしい、何とも言えないシーンを見ちゃってますからね。あれを超える衝撃はないでしょう。


それとアビーに襲われる婦人が病室で燃えてしまうところも自分から死に向かうようにしたのではなくなったのも残念。あれは悲しくてよいシーンだったのに。


さて、アビーを演じたクロエ・グレース・モレッツちゃんについても少し。超可愛いし存在感あるんだけどさ、この映画の場合それじゃ困るのよね。とてつもなく長い間生き続ける異質の存在であるのだからね・・・。


あぁ、後モールスという題なのだからもうすこし信号で会話するところあっても良かったかもとも思いましたね。



と、まあ文句も色々ありましたけど先ほども書いたようにただ模倣するだけではどうあってもオリジナルには勝てないものなので、日本でも多くみられるホラー寄りにしてしまうのもそれは一つの手。オリジナルと違うわい!と騒いでも意味がありません。
それにこちらの方は純粋により恋愛色を強調した映画になっているのだ。故にオリジナルとはまた違う味わいがある、いいリメイクだと思いますね。俺もクロエちゃんと旅に出たいよ。

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