リンゴ爆弾でさようなら

91年生まれ。新作を中心に映画の感想を書きます。旧作の感想はよほど面白かったか、気分が向いたら書きます。

『カイジ2 人生奪回ゲーム』を見た。

パチンコとにらめっこ。

人気漫画の実写映画化第2弾。借金をチャラにしたものの1年もたたないうちにまた借金地獄に陥り地下労働を強いられたカイジが、わずかな希望をかけ「沼」と呼ばれるパチンコに挑むと言うストーリー。新キャラである「沼」のある裏カジノの支配人・一条に伊勢谷友介カイジとともに「沼」を攻略する坂崎に生瀬勝久。前作でカイジとともにゲームに参加した石田の娘に吉高由里子。そして前作から引き続きカイジ役は藤原竜也利根川役には香川照之と役者は豪華な布陣です。



まず結論から言うと面白くなかったです。それでちょっと今回は色々思った事を突っ込んでいこうと思います。ネタバレ気味。



相変わらずといいますか、前作もそうでしたが映画が始まってすぐ脱力させてくれます。夕日の差し込む部屋に電気もつけず帝愛グループが集会を開いてるんですね。電気くらいつければいいのに。節電?
それと気になったのは声の演出ですね。周囲のつぶやき?っていうんですかね。なんか後ろでざわざわと喋ってるんですよ。
例えばこんな感じ。帝愛の幹部が一条に向かい「カイジという男が・・・」というと(「カイジ・・・」「あの男か・・・」)みたいな感じで周りにいる人間がざわつくんですよね。ダサい。しかもこの後もこういう場面が何度もある。



そして次のシーンはカイジが地下でチンチロをやっている場面なのですが、何ですかねこのどうしようもなさ。見てもらえばわかるのだけど、学芸会かっ!と思わず言ってしまいそうなシーンなんです。
あとここで問題なのはカイジがいかさまを見破ったことで地下労働者達の元に今までむしり取られた金が戻って来るのですが、その金をカイジに全部預けて外の世界に出させるんですね。残った金で何とか自分たちも救ってくれと。ただ、観客からすればカイジが地下でどうやって彼らの信頼を得たのかという説明が全くないのでなんでこいつに金を託すのかよくわからない。そこのドラマを全くこちらは共有してないので最後までカイジが地下の仲間のためと言ってもピンときませんでした。



そうして外の世界に出たカイジは坂崎という男に出会い「沼」に挑むことになるのだが、まぁストーリーが駆け足。出会ったあとすぐに「沼」挑戦というのはどうかなぁ。大金がかかっているというのに簡単に仲間になるというのは理解しがたいところである。人間の描写にもう少し時間をかけないとある人物の裏切りもそこまで効果的ではないし。
それとになるのは会話がおかしいという事。僕が言いたいのは原作から独特のあの言葉遣いの部分ではない。物事の説明のため不自然な会話になっているのが問題なのだ。全編「そんな会話地球上のどこで交わされてるんだよ!」と思う事必須である。



で、一度「沼」に敗れたカイジと坂崎は映画オリジナルの「姫と奴隷」というゲームに参加することになるが、このゲーム自体はギャンブルの要素がないため非常につまらない。たださすがにそれは製作者も分かっていたようで仕掛けをいくつかしているため、退屈はしないで済んだ。
ただこの場面は非常に大変な問題があって、それは前作でも出てきた<悪趣味な金持ち>描写である。こういった安っぽいイメージだけの存在が出てくると映画自体も安っぽくなってしまうのでやめてほしい。画面からして超安っぽいから会ってるんちゃあってるけどね。



さて、そんなこんなでもう1度沼攻略である。ここも大分おかしいところがあって、例えば前回「沼」に挑戦した時は積立金が11億溜っていると言っていたが、たった2週間足らずで13億溜っている事になっているという事になってる。いや、ちょっとおかしくないか?ここ2週でどんだけ稼働したんだ。
それと、最初カイジたちが撃ち始めたときはまったく客がいなかったのに、あるシーンが終わった途端客が集まり始めると言うのもおかしい。都合いいなぁ。
ついでに言うとその客層もおかしくなかったかな?裏カジノだっていうのにその辺にいそうな若い兄ちゃんばっかりでさ。

それと、これはそもそもって問題なのだけど、やっぱり「沼」とか大げさに言っても要はパチンコじゃないですか。だからどれだけ盛り上がると言っても結局椅子に座ってガチャガチャまわしながら「うぉぉぉ来いぃぃぃぃ!!!!」って言ってるだけなんですよね。地味です。
攻略部分に関しても裏カジノセキュリティ甘すぎだろと。カジノの設定変更に必要な器具をあんな簡単なところに置いておくかよとかね。あとセキュリティルームには監視カメラくらいつけとけ。
あと、やっぱりビルを傾けるって・・・原作でも思ったけどこれってほぼ反則技じゃないですか。良くわからないけど、そんな簡単に傾くものなのかなぁ?

まだ気になる部分はあって、それは<資金が尽きる→大金を意外な奴が援助する>という絶体絶命のピンチからの復活が2回あるんです。これって同じ事を2回やってるってことですよ。クドいんですけど・・・。



それにですね、ココ1番という場面で仲間とか絆の大切さを持ちだしたって今までそういった部分の描写ほとんどしてこなかったじゃないですか。観客の知らないところで勝手に当然のこととして決めておいたって「まぁ、そうなんでしょうね」としか思えませんよ。共感できるようにちゃんと描いてほしいもんです。



といったようにここまで文句ばかり言ってきましたが、正直前作よりは楽しめたんですよ。まだマシ、って程度ですがね。おそらくは役者、とくに伊勢谷友介演じる一条が良かったのだと。今回一番キレていたのではないかと思います。そもそもカイジと対立するキャラとして面白いし、壊れてしまった時の表情も原作のテイストを表現できていた気がする。非情な人間だというエピソードがないのは残念ではあるものの、本作で見ていて一番楽しかったのは一条でしたね。
香川照之はまあ面白いですし。相変わらずの舞台演技をする藤原達也、情けなさと調子の良さが似合う生瀬勝久の演技も『カイジ』にはぴったりで、そういう部分は見ていて良かったと今回は思えた。こんな濃い3人による負け犬のワンスアゲインっていうのも面白いかな。吉高由里子も演技は良いんだけどさ、彼女のキャラ自体そんな必要と思えなかったんですよ・・・メイドコスプレしてる時間も超短いし。



というわけで全体的にけなしたし、細かい突っ込みどころはまだあるでしょう。それに「沼」攻略後の利根川とのエピソードも本当に蛇足としか言いようがなくてバカバカしかったですが、そんな酷い映画でもなかったと思いますよ。カイジテンションの演技を楽しむにはいい映画でしょう。

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