リンゴ爆弾でさようなら

91年生まれ。新作を中心に映画の感想を書きます。旧作の感想はよほど面白かったか、気分が向いたら書きます。

『けいおん!』を見た。

Blowin' in the ふわふわWind

人気深夜アニメである『けいおん!』がまさかの映画化。いやホント「まさかの」でしたよ。僕はアニメをすべて見ていた位にはファンなのですが、やはり映画化、と2期最終回で知らされた時には不安になりました。だってこれ1本の映画としてのストーリーというものを作りづらいじゃないですか。全然起伏がないし。そう思いながらも先日見てまいりました。



まず本感想に入る前にアニメの感想です。先程も書いたように全話見てはいますが、熱心じゃないというか、なんというんですかね。えー寝る前に見てちょっとニヤニヤするくらいの感じでした僕は。これはアニメとしてのクオリティが高いからこその心地よさなのかもしれませんね。そう、心地いいんですよ、曲にもありますがふわふわと言う感じで。ただ、僕がこのアニメで一番好きなのはそういう部分ではありません。
例えば2期13話「残暑見舞い!」という回。この回全体としてはどうでもいい話の連続なのですが、最後の方で夏祭りの場面になるんですね。そこで花火大会が始まると唯が梓の手を引いていく、というシーンがあります。梓から見た風景はスローでどこか幻想的な雰囲気になる・・・打ち上げられる花火、楽しそうに走る軽音部の先輩たち・・・。
しかし、途中で2人の手は離れてしまう。見上げると花火は終わり、煙だけが残る。そこへ自分を呼ぶ同級生の声・・・。
もちろんこれは先輩たちが卒業してしまう、この楽しい時間が五日は終わりを迎える・・・ということの象徴ですが、センチメンタルというか、切なくて好きなんです。その後のエピソードでも何度か別れというものをほのめかしたり、もしくは直接描いていますが、『けいおん!』ではそうした切なさが決してウェットになりすぎないんですよ。そこがいいんですよね。僕が『けいおん!』で一番好きなのはこういう部分です。なので1期は割とどうでもよくて、2期が好きです。




で、映画です。うん、微妙です。
物語に起伏がなさ過ぎて途中で若干退屈に思えてくるのでは?という不安はやはり的中しました。ロンドンに行く、という映画一番のある意味見せ場というか、新しい部分までが長すぎます。放課後ティータイムがふわふわ(だらだら)と過ごしている日常を愛せるのなら苦痛ではないのかもしれませんが、自分は途中で「早く話進まないかなぁ」と思ってしまいました。



ただ飛行機に乗り込みロンドンパートへと移行するとなかなか楽しめました。やはりアニメのクオリティは高いと思います。動作の細かいところまで配慮した絵ではあるのでしょう。キャラの特性まで良く書き込んであるなぁと思いました。それにギャグも冴えてるし見ていて楽しかったですね。笑えたよ。

しかし、ライブシーンにはどうも違和感を感じました。スシバーで演奏をする場面ではインド人をギャグとして使うのですが、なんか若干の配慮のなさが気になりました。うーん。なんでしょうね。気にしすぎかなぁ。
それと、野外フェスに出演するシーンも2曲分くらい省略しないでしっかり描いてほしいですね。何か中途半端。折角映画館のいい音で聴けるんだからそこはちゃんとやってほしかった。



ところで、今回のOP曲はいつもと違うテイストでしたね。いつものあの騒がしいタイプの曲はロンドンで劇中歌としてかかりましたが、なんで?OPにもってくればいいのに。(今回のOP曲である「いちばんいっぱい」が嫌いと言うわけではない。むしろかなり好き)



そんなこんなでロンドンから帰ってきた唯たちは卒業式の朝に教室でライブをやることになるのですが、このシーンがホントに要らない。演奏をしっかり映すわけでもないのはさっきもそうですが、この部分ってホントに今までの話ともこれからの話とも全然つながらないんですよ。だから映画の中で凄く浮いてると僕は思いました。
そう思ってしまったからか、若干不快にまでなってしまいまして・・・。だって朝登校してこんなことクラスメイトがやっていたら最悪ですよ。個人的にクラスに馴染んでなかったという思い出があってそう感じることもありますが、周りはすごく団結して楽しそうなのに自分は全くという、<蚊帳の外感>が最後の最後にしてさらに加速しそうで。しかもそれが<普通許されない事>だからさらに嫌な感じがするんですよね。先生もあれは許しちゃいけません。



それと映画は写真で始まるわけですから最後も写真で終わってほしかったかなと思ったりもしました。ま、これは個人的な趣味ですけどね。



というわけで文句もいろいろありますし、こうやって映画にしたり大学編を書いたりすればするほど僕が最初に書いたような<センチメンタルさ>とは離れていくような気がします。うーん。
しかし、細かい描き込みやいろんな場面にちりばめられた笑いなど好きな部分もたくさんあります。先程も書いたようにキャラクターの魅力も十二分に発揮されているので、それだけで満足と言えば満足かもしれません。続きが出るならきっと見ると思います。ファンは見に行くべきでしょう。