リンゴ爆弾でさようなら

91年生まれ。新作を中心に映画の感想を書きます。旧作の感想はよほど面白かったか、気分が向いたら書きます。

『フライトナイト/恐怖の夜』を見た

童貞vs兄貴ィ

1985年の『フライトナイト』という映画のリメイクだそうです。今更なぜ?と思いますが昨今のバンパイア映画が流行っているという背景があって復活したのでしょうか。



高校生のチャーリーはかつてのオタク生活と縁を切り、今では可愛い彼女と学生生活をエンジョイしていた。そんな中、世間では連続して失踪事件が起こり始める。その調査を独自にしていた元オタク仲間・エドは新しくこの街に越してきた隣人・ジェリーがヴァンパイアである、と主張する。しかし、チャーリーは絵空事のようなこの話を信じられず「自分は大人になったから」と言いエドを拒絶する。そうして翌日エドもまた失踪してしまった。不審に思ったチャーリーはエドの家を訪ね部屋を捜索する。するとジェリーがヴァンパイアであるという証拠が挙がり・・・というストーリー。

このストーリーだけ聞くとどうも恐怖映画のようであるがそうではない。実際はある少年の成長を描いた青春物語となっているのだ。ストーリーももっと分かりやすくすれば「童貞が隣に越してきた肉食系の兄ちゃんに彼女を寝取られないかおろおろする」というものですからね。

チャーリーは良い年になっても友人のエドとともにコスプレヒーローごっこをするような男だった。しかし憧れの彼女をゲットするため背伸びして昔からの友人に冷たい態度をとってしまう。物語の最初の時点でチャーリーはオタクから脱却し、大人になったおかげで可愛い彼女をゲットしたと思っている。しかし、それは勘違いであるし、彼はまだ子供のままだった。
ここで笑えたのが、ジェリー=ヴァンパイアだと気づいたチャーリーが、彼女とベットインの際にもそっちのけでヴァンパイアの動向を気にしてしまうというシーン。この場面でのチャーリーは女より趣味を優先してしまうオタクにしか見えなくて面白かった。そもそも脱オタクをしてもやはり肌に合わないのか色々とストレスがたまってるみたいだし。



ヴァンパイアであるジェリーの造形もまた面白い。オタクのひ弱さとは対照的に初登場時からタンクトップで筋肉を見せつけフェロモンむんむん男らしさ全開。野生的で強力な存在として描かれている。うひょー。
そんなヴァンパイアを退治することを通して真の意味での大人の男に成長していくというわけだ。オタクであるかどうかは問題ではない。ありのままでいいが、ただ自分にとって本当に大切なものを命をかけてまで守れるか、それが問題なのだ。



そんな本作で若干納得いかないのは、最初からチャーリーがそれなりに吸血鬼に対抗しようとしている点である。若干ネタバレだが、最初は身を呈してまで愛する人を守るという勇気が出せなかったせいで彼女が犠牲になってしまう、とした方が良かったのでは?この映画だとわりと頑張って守ろうと立ち向かっているからね。あの段階ではもう。



それと話の展開が都合よすぎやしないか?とも思ったけど細かいこといちいち気にして見る映画でもないか、と開き直ったら笑えるところは多いし役者は適材適所でいい味出してるしおおむね満足な映画だったなと思います。とくにヒロインを演じたイモージェン・プーツさんはホント素晴らしかった。噛みつきたい。といわけで興味があるなら見てみるのがオススメ。