リンゴ爆弾でさようなら

91年生まれ。新作を中心に映画の感想を書きます。旧作の感想はよほど面白かったか、気分が向いたら書きます。

『戦火の馬』を見た。

破壊と殺戮とお馬さん。

みんな大好きスティーブン・スピルバーグ監督の最新作です。原作は1982年にイギリスで出版された同名の児童文学で、スピルバーグはその舞台版を見て映画化を決意したらしいですね。



イギリスの丘陵地帯で農家を営むナラコット一家は、父テッドが足を悪くしたこともあり貧しい暮らしをしていた。ある日、テッドは農耕馬を買いに馬市へ出かけ、そこで出会った美しい馬を競り落とす。ジョーイと名付けられたその馬は農耕には向かなかったが、息子のアルバートによる懸命な世話により一家の農地は豊かになっていった。しかし、その農地も嵐により全滅。そんなさなか、第1次世界大戦が勃発。ナラコット一家が餓えをしのぐためにはジョーイを軍馬として売るしかなかった・・・というストーリー。



物語は王道と言った感じで、真っ正面から感動を作り上げた、という印象を受けます。数奇な運命をたどる馬を通して、奇跡と友情の物語を描き、戦争の時代に生きる人々の様々な状況や思いを見せ、そこにメッセージを込めるというね。うん、良い映画でしたよ。ベタとはいえポイントを押さえているので安心感がある。敵対する兵士同士が少しばかりの交流をするシーンとかホント良かったと思います。



けれどね、それももちろんいいんですがこっちが求めてるのはそういう事じゃなくてですね。じゃあ何が見たいんだって、そりゃ『プライベート・ライアン』みたいな阿鼻叫喚の地獄絵図ですよ。
今回もそういうシーンはあります。イギリスの騎兵隊とドイツ軍の近代兵器が衝突するシーンはさすがの迫力と言う感じで興奮しますし、終わってみると馬の死体がゴロゴロしてる画なども強烈です。
そしてなんといっても激戦だったと言われるソンムの戦いは圧巻。キューブリックの『突撃』のようにカメラが狭い塹壕の中を進んでいき、そしてホイッスルとともに画面が開け砲撃や銃弾の飛び交う中を兵士が進んでいく様はホントにすさまじい。さすがに血や内臓は飛び出さないものの、人の死体が大量に散乱しているのは正に地獄という感じでしたね。ちょっと物足りないけど、音響も含め映画館で見れて良かった。



兵器描写もさすが面白いですね。僕は全然詳しくないんですが、映画の後半唐突に戦車が出てくるんです。これは世界初の近代戦車のマークⅠというものらしく、大した意味も感じないのにやたら大げさに登場するんですよ。キュルキュルキュル・・・って。「コレ見せたかったんだろうなぁ・・・」と思いましたね。
それと第1次世界大戦で初めて使われたものと言えば毒ガスがあります。こちらもしっかり登場。他にもドイツ軍が騎馬兵をせん滅させるMG08機関銃や、馬さんが引く大砲など兵器的な見所もあったのではないでしょうか。



また僕が良いなと思ったのは、この映画が雄馬同士の友情物語であるという点です。騎兵隊の訓練に出たジョーイは黒くて美しいトップソーンという馬と速さを競い合うんですよね。そうしてお互いの事を男として認め合うんですよ。
「なんだ、お前もなかなか速いじゃないか」「おまえこそやるな・・・」みたいなね。いいですね。男の友情ですね。
それからジョーイとトップソーンは運命を共にするのですが、2匹はどんな状況でも助け合う・・・というかジョーイは自分の身を呈してトップソーンを守るんです。足が悪くなったトップソーンを守るためにジョーイが進んで大砲をけん引する役目を買ったりするんですよ。何このイケメン。表情と言えるかどうか分かりませんが、馬が演技してるように思えるんですね。凄いです。



悪い、とまでは言わないけど気になったところはどこの国の人も英語を喋ってると言う事ですかね。ジョーイが全く別の環境にいる人を巻き込んでいくという話ならできればちゃんとフランス語やドイツ語を喋ってほしかった。
それと物語がちょっと偶然に頼り過ぎというか、若干ファンタジー過ぎる部分もあるんじゃないかと思います。感動的ではあるんですけどね。なんだろう奇麗にまとまりすぎな感じも「まあいいけど・・・」と言う感じですしね。



というわけで、スピルバーグ作品の中でもこれは!と言うほどではない映画だと僕は思いましたが、どうせ見るなら劇場で見た方が良い映画だと思います。ヤヌス・カミンスキーの映像もオープニングの雄大な自然からムチャムチャ美しいもんですし、ジョーイが戦場を駆け抜けるシーンも最高に盛り上がります。なので、やっぱりオススメはオススメですね。一定以上の面白さは保証できると思います。

戦火の馬

戦火の馬

  • 作者: マイケルモーパーゴ,Michael Morpurgo,佐藤見果夢
  • 出版社/メーカー: 評論社
  • 発売日: 2011/12/01
  • メディア: ハードカバー
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