リンゴ爆弾でさようなら

91年生まれ。新作を中心に映画の感想を書きます。旧作の感想はよほど面白かったか、気分が向いたら書きます。

最近見た旧作の感想その4

冒険者カミカゼ(1981)
男2人と女1人、夢破れたこの3人がやくざの金を狙ってロマンと冒険の旅の出る・・・ってこれロベール・アンリコの『冒険者たち』(1967)だよな?と見る前には思っていましたが、見終わって思いました。「やっぱりか」
どうやらウィキペディアを見てみると千葉真一東映から「好きなものを作っていい」と言われたので、自分の好きな『冒険者たち』『明日に向かって撃て!』『スケアクロウ』をオマージュした映画を作ったのだそうです。俳優が好きなことをやれる映画ってのは凄いですね。『スケアクロウ』の感じはあまりなかったけど。
ただ映画は『冒険者たち』に比べるといささか雑というか、ドタバタしすぎではある。まず前半、千葉ちゃんが現金輸送車を襲撃する場面だが、千葉ちゃんの作戦がおかしい。その作戦とは、車が止まった隙にマンホールから輸送車の下に潜り込み、底に穴をあけ、中に大量に蜂を放ち、耐え切れず運転手が飛び出した隙に防護服をつけた千葉ちゃんが金を奪うというもの。いや、え?
もちろんこの蜂をどうやって手に入れたとかそういう説明はないし、どうやって車の底に穴をあける技術を会得したのかも謎だ。あるとすれば、千葉ちゃんが複葉機乗りで、それに関する諸々の技術があるっぽいということくらいか。他にもにもアクションはふんだんに盛り込まれているが、スケールがでかいと言えば聞こえがいいものの、なんとも大味だ。それに、そこまでド派手というわけでもない。どうせならもっとメチャクチャに暴れまわってほしかった。更にセリフ回しもキャラクターも大げさでなんかおかしいし、3人の関係性を描くドラマの展開も急だ。つまらない映画と言うわけではないのだが、全体に中途半端に『冒険者たち』だなぁ、という感じになってしまっていて、それなら日本版で完コピか、設定だけ借りて突き抜けてほしかった。
ただこの映画、見方を変えると非常に興味深いものである。それは千葉真一真田広之の関係性からの見方である。この映画で千葉真一は元体操オリンピツク選手役であり、真田広之は現体操選手で千葉を尊敬しているという役だが、これは現実の二人に置き換えることも十分可能だ。既に空手映画の主役を引退していた千葉真一。そしてJACの新しいスターとして当時空手映画の主役として活躍し始めていた真田広之。この二人が親子のようであり親友のようでありながら、はしゃぐ姿がこの映画では見れる。それだけでこの映画にはオリジナルの価値があるのかもしれない。




『吼えろ鉄拳』(1981)
というわけで真田広之の主演2作目である。監督は『トラック野郎』などの鈴木則文。ストーリーは相当馬鹿馬鹿しいものがあり、ホントにくだらないギャグのオンパレード、そして無駄にぶち込まれてるエロシーンなど、良く言えば単純に楽しめる仕様になっている。まぁ、とにかく真面目に考えてはいけないということだ。
ただアクションに関しては、これは相当すごいのではないか?と思わざるを得ない。けっこうな断崖から飛び降りたり、ビルとビルの間の壁をsasukeのスパイダーウォークのように手と足だけで登らせたり、大爆発が起こる中を真田広之が馬に乗って駆けたり、香港では2階建てバスの屋上で看板を使ったアクションを披露したり、薙刀使いとして福本清三が登場してものすごい剣術アクションを見せたりと、他にもとにかくビックリするくらい無茶な見せ場だらけだ。よく生きてたな。
こういった無茶なアクションは、おそらくはアクション監督(出演もしている)である千葉真一と、鈴木則文が現場で面白がって注文したものであろう。それに対し全力で向き合い応える真田広之。これはまさにアイドル的発想ではないか。この映画における真田広之は、顔はもちろんカッコいいし、アクションはバリバリできる。そしてちょっとお茶目な面まで見せるわで本人の魅力が抜群である。
さらに周りを固める役者も豪華である。千葉真一は置いといて、志穂美悦子は盲目の令嬢として登場。もちろんアクションシーンもある。そして悪役には成田三樹夫!これがもう、ナチスに傾倒しハーケンクロイツを掲げていたりと非常にわかりやすい悪役である。また僕は知らなかったが、ブッチャーという有名なプロレスラーがボブ・サップ的な使われ方をされており、こういった華のある方々が映画を彩っている。このようにアクションシーンから俳優まで、真田広之が輝くための数々の御膳立てが成されている本作はアクション映画としてだけでなく、やはりアイドル映画としての輝きも放っていたように思う。
僕が映画やら芸能にたいして興味を持ち始めたとき、すでに真田広之は『たそがれ清兵衛』など、演技派として知られていた。しかし、こういう映画を探っていくとまさに人に歴史あり。アクションスターとして、アイドルとして一級品の真田広之を見ることができる。そしてかつては日本のアクションもここまでやっていたのかと思うと胸が熱くなるが、同時に寂しくもなるのであった。

吼えろ鉄拳 [DVD]

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