リンゴ爆弾でさようなら

91年生まれ。新作を中心に映画の感想を書きます。旧作の感想はよほど面白かったか、気分が向いたら書きます。

最近見た新作の感想その7

オール・ユー・ニード・イズ・キル爆発する輸送機から目が回るような落下の後、突如として戦場に放りだされる緊張感と恐怖に、あまりにも馬鹿馬鹿しすぎる数々の死に様、エミリー・ブラントの目や肉体から出る説得力、そして逃げる男=トム・クルーズの情けない姿などが存分に楽しめる前半から中盤はいい。特にハッとさせられるのが、車に乗ってボロ屋に到着するシークエンスだ。トム・クルーズ曰く「まだ試していない車が2つあって、そのうち白い方は君が乗れ。くっついているトレーラーは切り離すように」とのことだが、その後その車に乗って走り出すシーンでもトレーラーはくっついたままだ。しかも、トム・クルーズはそのことについて何も言わない。このショットの繋がらなさに違和感を抱いていると、なるほどそういうことかと思わされる。ループというルールに、黒い笑いとゲーム感覚を持ち込んだ部分は文句なしに楽しい。
だが、謎が解け始めるとどんどん面白さは減少していく。ループもブラックジョークも、それまで面白いと思われた部分はすっかり消え、あとは特別なアイデアもなく、普通の異星人侵略アクションになってしまうのである。いざ真に死が迫ってもそれに対する切迫感はなく、急に仲間たちを登場させてもそこにドラマはない。ループは自分たちが日々どう生きているのかを改めて考えさせる機能もあると思うが、その部分も甘い。最終決戦なのにどんどん下へ下って行って、暗いところで終わるというのも個人的には好きではない。『パシフィック・リム』でもそうだったが、大ボスだから姿をそう簡単に現すことができず、結果地下に隠れるというのは分かる。だがどうしても、その前の興奮に負ける画面にしかなっていないように感じられてしまうのだ(『パシフィック・リム』ではドラマが熱かったからいいけど)。
前半と画が似てしまうことへの危惧かもしれないが、パワードスーツが使われなくなるのも不満だ。もう後半は、2人でスーツ着て敵地へ乗り込んでいくので良かったじゃないか。最終的には、攻撃を受けすぎてスーツは機能を停止させるのがいいだろうが、そうやってボロボロになりながらも背中合わせで戦うような姿が見てみたかった。もう死んでもやり直しは効かないのだから、一撃一撃に重みが出るはずだ。また二人だけで必死の抗戦を見せることにより、今まで何度も死なせてきたが今回だけは絶対に死なせないという心情が強調され、ドラマチックになる気がするのだが。
というわけで、個人的に、ダグ・リーマン作品には諸手を挙げて「最高!」と呼べるような映画がなく今回もやはり惜しい作品であった。しかし役者陣はすこぶる魅力的で、エミリー・ブラントももちろんだが、やはりトム・クルーズという人のスターっぷりは凄い。彼は女優と抱擁するとかキスするかとか、そういうことではなくスターだ。どうも展開に満足がいかなくても、叫んで走って逃げて戦って、最後にニカッと彼が笑えば、いくらおかしいと思えるラストであろうとも、何となく良かったような気がしてしまう。与えられた役だとか物語の中に埋もれない存在感を示すのがトム・クルーズなのだなぁなどと、改めて思ったのでした。

All You Need Is Kill (スーパーダッシュ文庫)

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呪怨 終りの始まり』傘を筆頭として、オレンジがとにかく印象的な作品だ。カーテン。階段手前の壁にかかる線。それが何を意味しているかは結局わからないままだが、普段明るい、温かみのある色だと認識しているオレンジが何か不穏な色のようにすら見えてしまうのが面白い。ましてや、それがカーテンならば不意に揺れたりすることでより不穏なものとなっている。この色使いが面白いと僕は思った。
他にも、色は違うがステージの奥にある垂れ幕の使い方であるとか、ふと後ろに幽霊が立っているシーンはなかなか恐ろしかった。主演の佐々木希もいい。目が異様に大きくて不安感を煽る。好きな顔立ちではないが、本作では魅力的に見えた。
呪怨』シリーズは清水崇監督によるオリジナルビデオからの4本しか見ていないため、あまり詳しくはない。しかし、それでもシリーズで前にも見た恐怖描写があったのには少し落胆した。具体的には「いつの間にか布団の中」だとか「そこから手が?」となどである。はじめ見たときは驚いたものだが、今やもう、新鮮さはない。ただ、階段下りに一ひねりあったのは良かった。
時系列を弄繰り回すのも特徴で、今回も行われているが正直その効果は微妙。「そうなんだ」ぐらいには思うものの、それが恐ろしさや面白さに繋がるわけではない。オリジナルでは、シャッフルされた断片的な物語は混乱を引き起こし、しかし確かに呪いでつながっているという事に恐ろしさを感じたように思う。だが本作での時系列シャッフルは、ある地点でちょっとした驚きをもたらす程度のものだ。
主人公たちの住む部屋の小奇麗さもあまり好きではない。パキッとした画面が悪いわけではないし、学校はなかなかいい雰囲気に見えてた気がするが、あの部屋はちょっと違和感がある。しかもその違和感を、例えば『リアル 完全なる首長竜の日』のように異質なるものとしてうまく利用したとも、僕には思えなかった。
どうも文句が多くなってしまったが、決して悪い作品ではないと、ちゃんと言っておきたい。最初に書いたようなシーンは印象的だし、怖さも適度であるため、夏のちょっとしたアトラクションとしてはいい作品だったのでは、と僕は思っている。実際、映画館では要所要所で声が上がっていたし、上映終了後も「怖かった」という感想が漏れていた。映画館で映画を見ると、こういう生の反応を楽しめるのがいいよなぁと、こちらもまた、改めて思ったのでした。

呪怨 [DVD]

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