リンゴ爆弾でさようなら

91年生まれ。新作を中心に映画の感想を書きます。旧作の感想はよほど面白かったか、気分が向いたら書きます。

『アイアンマン3』を見た。

楽しいものづくり3〜花火大会編〜
2008年に1作目が公開されたアイアンマンシリーズ3作目にして最終章。ただ『アベンジャーズ』を入れると実質4作目であり、『アベンジャーズ2』を入れるとこれで最後と言えるかも微妙な気がします。監督は前2作のジョン・ファブローからシェーン・ブラックへと変更。大ヒットしているということで、マーベル・シネマテック・ユニバース、フェイズ2の華々しい出発となりました。


アベンジャーズの集結から1年。戦いにより精神的に不安定になったトニー・スターク(ロバート・ダウニー・Jr)は、会社を恋人のポッツ(グウィネス・パルトロウ)に任せ、自らはアーマーを作り続ける日々を過ごしていた。ある日、ポッツのもとに「A.I.M」というシンクタンクの創設者アルドリッチ・キリアン(ガイ・ピアース)が訪れる。キリアンはポッツに「エクストリミス」という薬を、共同で研究開発しようという話を持ちかけるが、ポッツはそれを拒否する。会社の警備主任であるハッピー・ホーガン(ジョン・ファヴロー)はキリアンを怪しく思い後をつけるが、その途中で突如巻き起こった爆撃に巻き込まれ、重傷を負う。事件を知ったトニーは、その爆撃がマンダリン(ベン・キングズレー)というテロリストの仕業であると突き詰め、テレビを使い挑発する。するとその直後、トニー邸がマンダリンらの手によって爆撃されてしまい・・・

※以下ネタバレ



終わりよければすべてよし、という言葉があるように、シリーズの完結編がうまくいっていればなんかシリーズ全体も良かった気がしてくるし、逆に出来が微妙だと2作目までで良かったなどと言われるように思います。そういう意味で、本作は非常に難しい作品であったと思います。期待値や課されたハードルも非常に高いでしょうしね。さらにマーベルヒーローの場合、今後続いていくであろう他シリーズにも影響しかねないのが怖いところですしね。



で、この『アイアンマン3』ですが、アイアンマンシリーズの最終作としてキッチリ終わることのできている、良い作品だと思いました。キャラ、メカ、そして作品の魂であるところのDIY精神。これらをキッチリと織り込んだうえで、トニー・スタークという、鋼鉄の鎧をまとわない生身の人間としての成長を描いているのが面白いと思います。本作はアイアンマンではなく、トニー・スタークとしての物語がよく描かれていたなと。『アベンジャーズ』でキャプテン・アメリカに「スーツを脱いだら何が残る?」と言われていたのが思い出されます。
また本作の敵であるマンダリンの見た目がまぁビン・ラディンで、実はそれがアメリカの傀儡であった、というのも1・2とアメリカの軍事的な方面について真面目にふざけてネタにしてきたシリーズらしい、皮肉的な配置で良いと思います。
ラストバトルも素晴らしいですね。景気がいい、という言葉がこれほどぴったりくる場面もそうないでしょうというくらい景気がいい。ドキッ!アーマーだらけの破壊大会ですよ。色々な方法でアーマーを使用するのも楽しいねー。いやー楽しいねー。そうアイアンマンは<楽しい>んですよね。またここはただ派手なだけではなくて、スーツを花火にして破壊させるというのが<スーツからの解放&トニーとポッツへの祝砲>になっているというのも素晴らしいじゃないですか。
最後を「I am Iron Man」というセリフで締める辺りも気が利いていてうまいなーと思いますし、またエンドクレジットが最高で、しかも最後にあるオマケだって笑いましたよ。いやー最後まで楽しませてくれますねー。副大統領が敵に加担する理由を映像的に一発で分からせるシーンとか「巧いなあ」と思う部分もありますし、もう文句なし・・・と言うわけではなくてですね。実はあんまり好きじゃない部分も多いんですよねこの映画。



まず何が好きじゃないって、中盤の展開なんですよね。まぁ、トニーが田舎町に墜落してからの展開ですね(その前の自宅爆破も策無しすぎてアホかとは思ったけど)。生身のトニーが活躍するっていうのはいい。電子レンジを使って敵を撃退というのも楽しい。しかし、あのガキですよ。僕は映画でガキを見るのがあまり好きじゃなく(ガキが主人公とか『オーメン』のように悪役であるとか、もしくはひどい目に遭っている場合はいい)、しかもガキが大人を説得するとかちょっと勘弁してほしいっすわ。トニーはガキの夢を見続けたまま大人になったような人で、僕はそういう人は大好きなのですが、ガキそのものが出てくるのは嫌いなんですよねー。大変心が狭いですねー。それもあってトニーという人のアイデンティティを取り戻すために必要な展開とはいえ、ちょっと生身でいる場面が長く感じました。はよスーツ着んかい!と。
それとラストバトル、これ自体はホントに面白かったのですが(ただ3Dだとちょっとゴチャゴチャしすぎかも)、その決着が嫌で。だってペッパー・ポッツがあんなことになるって、そりゃもうやり過ぎじゃないかと思うんですよ。せっかくその前にマーク42を使った工夫の感じられる撃退を見せてくれたのに、なんかこう、ガッカリですよ。トニー&アーマーのかっこよさが台無しになっている、酷い場面だったと僕は思いますよ。
ちなみに、マンダリンが実は傀儡で、大ボスはガイ・ピアース演じるアルドリッチ・キリアンという展開には拍子抜けしたものの、「贅沢だなぁ」と笑えましたし、<トニー・スタークになれなかった男>はシリーズ共通の敵の姿なので、これはこれでいいと思えました。ガイ・ピアースも輝いていたしね。2重の意味で。
しかし、黒幕だというのはいいんですけど、ちょっとキリアンがかわいそうに見えちゃったというのはありますね。この人はトニーのかつての傲慢さが生んだ悪役で、その恨みの気持ちから頑張りまくってスゲェ薬を作ったんですよね。その後の所業は酷いもんですが、それでも彼に対するフォローが全くないのがちょっと。前作まででかつてのトニーとは違うという事を観客は知っていますが。うーむ。まぁキリアンがビルの屋上で一人新年の花火を見ているシーンが、本作一番のグッとくるポイントだった僕にとっては・・・という事もあるのかもしれませんが、もうちょっとキリアンに同情的であった欲しかったなぁ。



テーマはいいけど話は雑だなぁとも思います。てなわけで、完成度の高さという点では、2よりは上だけど1より下だと思います。ただ、色々と文句を書いてはきましたが、最初に書いたように3部作の最後として綺麗に終わっているし、楽しい映画であることは間違いないので、まあ別にいいんじゃないでしょうか。アイアンマンというシリーズを僕は存分に楽しんだので、それでもう満足ですよ。今後、アイアンマンがどういう形でかかわってくるのかは不明ですが、『アベンジャーズ2』まで気長に待つとしましょう。