リンゴ爆弾でさようなら

91年生まれ。新作を中心に映画の感想を書きます。旧作の感想はよほど面白かったか、気分が向いたら書きます。

最近見た新作の感想その14

『スガラムルディの魔女』
キリストにスポンジ・ボブ、ミッキーマウスが強盗と殺人を犯すという公序良俗を吹き飛ばして暴れまわるオープニングの楽しさはもちろんのこと、一つの指輪が元となって引き起こされる血と生贄のお祭り騒ぎは想像以上に派手且つとんでもないのが最高で、その上でしっかり魔女を題材にフェミニズムについての意見をバランスよく混ぜる手腕は見事で、また『指輪物語』『ゾンビ』を経て『アダムス・ファミリー』に到着するという思いもよらなさも、十分に堪能させてもらった。

スガラムルディの魔女 Blu-ray

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ベイマックス医療ロボットであるベイマックスの可愛いさにしてやられてしまったのは間違いないし、飛行機能を絶対必要と宣言したヒロが鏡越しにヒーローとなった自分の姿を見る場面の感動、「ものづくり」というより「科学技術を学ぶ楽しさ」を描いた前半は確かに素晴らしいと思う。しかしこの映画を僕は今一つ好きになれない。それはこの作品の、堂々たる王道ぶり故である。完成度が高く洗練された後半の展開は別角度から見れば刺激に欠けるものがあり、バランスを逸脱することなく全体を高い技術と知恵によって包んだまま終わっている点を素晴らしいと言うこともできるけれど、僕はな極端なパワーを持ってバランスを逸脱したりぶち破ってくる瞬間が好きなのでした。あとこれはホントどうしようもないけど、得意げな少年の顔ってのが、僕は凄く苦手なんですよね。



メビウス
母親役と愛人役を同時に演じたイ・ウヌに関しては「女優ってすごいな」とアホみたいなことを今更に呟いてしまうほど素晴らしいとしか言いようがないし、また本作が物語を聞いて想像したようなものと違って非常に笑える映画だという事にも驚いた。痛い描写も確かにあるが、転がるペニスの争奪戦は本人たちの必死さに対しその顛末が馬鹿馬鹿しすぎて笑うしかないし、世にも珍しいオナニー、3Pといった描写は深刻になるより単にゲスな笑いとして僕は見れた。そんなわけで欲望と家族についての思考を巡らせるようなこともなく、むしろどこかすっきりした気分で劇場を出ることができたのでした。

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スペシャルID 特種身分』ドニー・イェンが空気銃を使ってヒロインとじゃれ合う姿の可愛さは犬と形容すれば伝わるだろうか。犬というのは飼い主に遊びを提案してみたり、悲しんでいるとスッと傍によって慰めたり、嬉しいことがあれば全身で喜びを表現するものだが、本作のドニー・イェンは、全体を通してまさにそんな感じである。アクションに関しては、好みで言えば手数が多かったりスピード感がもっとあるといいと思うけれどこれはこれでやはり凄いと思わせてくれるし、カーアクションも見応えがあって全体を飽きることなく見れる。ヒロインを演じたジン・ティエンはスタントをどのくらい使っているかわからないけど、素晴らしい脚の開きを見せるシーンがあって、あれは凄いなと、思いましたよ。

ドニー・イェン アクション・ブック

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